オリンピック招致費流用住民訴訟


 オリンピック招致費流用住民訴訟の第1回後半が本日24日(月)11時に開かれます。訴状の朗読と原告の意見陳述が行われます。私が原告として以下の陳述を行います。

違法なオリンピック費用流用事件住民裁判意見陳述

荒木龍昇

 そもそも今回のオリンピック招致の経過を振り返りますと、市長の独善で進められ、市民や議会に対しての説明はなかったといえます。昨年4月にJOCとのパートナー都市協定を結んだときに、「日本で五輪が開催されるなら名乗りを上げたい」と発言したことから端を発しています。当初から福岡市の財政状況が問題視され、招致の実現性が危ぶまれていました。その後事務局で検討が始まったと伝えられていますが、18年度予算に盛り込まれていなかったように、誰もが想定していなかった事態であり、進捗状況はもちろんのこと事業内容等についてもいっさい市民にも議会にも説明がないままでした。
 そして9月議会において市長は突如オリンピック招致を表明しましたが、そこでも市長は「招致だけなら金はかからない」などと無責任な発言をしています。また議会においても突然のことから、9月議会が始まって急遽自民党市議団、公明党市議団を中心にを決議案が作成され提案されることになり、議会において議論をするというような状況ではありませんでした。またこの時点でもオリンピック招致についての事業計画は示されず、ともかくオリンピック招致に賛成か反対かというきわめていい加減な決議案の検討でした。
 山崎市長はオリンピック招致についての正当性を議会のオリンピック招致決議を得たことを根拠としていますが、このような状況を鑑みれば議会制民主主義および、市民を冒涜するものです。とても議会で議論を尽くしたとは言い難いものだけでなく、全会一致でなかったばかりか、賛成した与党会派からも財政問題に懸念を表明する条件付き賛成会派も複数ありました。つまり、議会の議決を根拠とするにはあまりにもお粗末な状況といわざるを得ません。その後も九州全域開催のオリンピックを提唱し、後に福岡中心に訂正する、メイン会場を博多の森の競技場を使う、人工島に選手村を建設するなどの事業計画が浮上しますが、これも後に訂正、最終的に年を越して建築家の磯崎氏のグループによる須崎埠頭を中心とした今日の案に落ち着くという迷走を繰り返しました。
山崎市長は「招致だけならお金はかからない」と発言を繰り返していますが、その背景には事業計画が立てられず、招致活動に多大な費用がかかるという事実の認識がなかったことによるものと思われます。そのため、補正予算は組まれず、費用の流用は議会でも報告されず、市民にも説明もなく支出されました。その後も山崎市長は同じような過ちを繰り返しています。18年度予算においてもオリンピック招致費を事務局が3億円としたものをただ「オリンピック招致だけならお金はかからない」という自らの言葉に縛られ、理由もなく1億5千万円に減額さています。その結果、招致費が不足となり、市民局以外の局の予算をオリンピック招致に流用させるという異常な事態を生み出しています。17年度予算におけるオリンピック招致費の流用は支出そのものが違法であり、手続きとしても違法です。そして、この違法性の認識がないために、福岡市の財政運用をゆがめる状況を生み出しており、重大な問題といえます。
 市民の反応も、9月に市長がオリンピック招致を表明した時点から反対が表明され、翌3月議会には7千3百名余筆のオリンピック招致反対の署名請願が出され、その後5月議会には3月議会に請願を提出した団体とは異なる2団体から1万3千余筆、および11万余筆のオリンピック招致反対の署名請願が議会に出されました。3月に東京の調査期間が行った調査では66%の市民がオリンピック招致に反対、その後地元テレビ局のTNCの調背でも67%の市民が反対、7月に行った毎日新聞社の調査でも100人のうち62人市民が反対、賛成派30人という結果が出ており、反対の理由はやはり福岡市の財政です。 5月に行った福岡市の5千人の市民のアンケート調査でも回収率26%、オリンピックの賛否を問うものではないにもかかわらず回答者は福岡市の提案した計画に対して賛否が拮抗しています。また回答者の48%が福岡市の財政問題を危惧している結果が出ていることをみても、大多数の市民がオリンピック招致に反対していることがわかります。
 今年総務省が公表した新たな財政指標では実質交際費比率は22.8%となっており、全国の政令市および都道府県でもっとも財政状況が悪いことを示しています。平成16年度決算では市の起債残高は2兆7千億円、市民一人あたり200万円となっています。様々な調査が示すように、多くの市民は福岡市の財政状況がきわめて悪い状況を知っており、これ以上無駄な公共事業はやめてほしいと考えています。市民に賛同が得られないまま強引にオリンピック招致を決め、経費を支出することは市政に責任をもつもなすべきことではありません。このような支出は明かに違法な行為です。
 財政問題についての福岡市がつくったパンフレットでは、一般会計において過去5年間で毎年60億円から90億円の黒字が出ているので30億円の積み立てはできるとしています。しかしこの説明はまさに市民を騙すものでしかありません。国の三位一体の改革による地方交付税・補助金の削減、市税収は頭打ちの状況が続いており、平成16年につくった財政再建プランでも、今後とも厳しい財政状況が続くとしています。財政再建プランでは歳入の確保としてごみ処理料の有料化や留守家庭子ども会の有料化、福岡市の施設使用料の値上げなど使用料・手数料の値上げ、歳出削減として市立保育園の民営化など指定管理者の活用など経費削減を挙げています。平成4年度には942億円あった財政調整基金は平成18年度には30億円程度しかなく、事実上ゼロの状況です。平成17年度予算作成時には財政調整基金以外の福祉関係の基金を取り崩した上に、外郭団体の基金を取り崩して15億5千万円を福岡市に寄付させることまでしなければいけない状況でした。
 また、パンフレットでは一般会計に置いて毎年元金償還額よりも借入額を100億円削減できるとしています。歳入は頭打ちの状況で人件費や扶助費等の義務的経費は増え続ける状況で、毎年各局予算は10%程度の歳出抑制をしている状況で今後毎年100億円の借り入れを減らすことは、今以上に市民への負担を増やすことになります。また、量的緩和政策、ゼロ金利政策により金利負担が軽減され、市債発行残高を抑制できていましたが、量的完成作、ゼロ金利政策を開所したいま、長期金利が上昇することが予想されます。福岡市は3会計で毎年2500億円程度の借り換えをしており、金利が仮に1%あがると10年間で約1300億円強の新たな負担を生じることになります。福岡市に置いてwかこの借金があまりにも大きいために、金利の変動によって何もしなくてもたちまち財政は逼迫します。しかし、市民にはこのような説明はありません。
 福岡市民は長年児童館を建設して欲しい、図書館を増やして欲しい、学校司書を増やして欲しい、子育て支援の充実をして欲しい、障害者支援や高齢者支援を充実させて欲しいという署名請願が議会に出されてきましたが、市民の願いとは反し、高齢者医療補助の打ち切りや障害者支援の削減や留守家庭子ども会の有料化など、市民負担を増やしてきました。このように、福岡市の一般会計における黒字は財政調整基金等の取り崩し都市民負担を増やすことでつくられたものであり、オリンピック招致のために積み立てを行う余裕はありません。多くの市民は福岡市の財政状況でとてもオリンピック招致ができる、すべきとは考えられないのです。
 手続き的にも違法性は明らかです。地方自治法220条には款、項を超えての流用を禁止していますが、節目であれば認めるという趣旨ではないことは明らかです。あくまでも予算執行は当初予算に基づき厳格に行われることを前提として、予算執行に柔軟性を持たせるためにやむ得ない軽微の流用を認めているものであり、安易に流用を容認しているものと介すべきではありません。福岡市の歳入歳出規則第13条でも予算の執行は節目および説明に沿って執行することが謳われており、流用するときの手続きを定めていることをみても安易な流用を禁じていると介すべきです。
 今回のオリンピック招致費用の流用は、オリンピック招致という一つの独立した事業であることを鑑みると、流用にて処理すべき事案でないことは明らかです。オリンピック招致は開催都市は施設整備や招致活動のために多き財政負担が必要であり、福岡市の財政に大きな影響を与える事業であり、十分な準備と議論を尽くして17年度予算として計上されるべきものです。山崎市長は「招致するだけなら金はかからない」という安易な認識しか持たず、厳しい財政状況にある福岡市に多大な負担を強いることは、市政の最高責任者として無責任な行為です。やむえず年度途中の新たな事業であれば補正予算を組むべきであり、今回市長がオリンピック招致に名乗りを上げてからでも補正予算を組むだけの十分な時間があったことを考えれば、今回のオリンピック招致費用の流用は明らかに法の趣旨を逸脱した違法な行為であるといえます。このような流用を容認すれば、財政運営の規律を否定することにつながります。また、現にそのような事態が起こっています。手続き上からも、また実酒的な手続きからも、市民の意思からも今回のオリンピック招致費の流用は違法です。地方分権が進み、地方自治体の責任はいっそう重くなる中で、地方自治体の自律した運営を促すためにもこのような予算流用を認めず、責任の所在を明確にしていただくことを裁判所に強く求めます。