税金漬けの人工島・決算特別委員会

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税金漬けの島、人工島
 港湾整備事業は一般会計の港湾整備と埋め立て事業や埠頭整備事業は港湾整備事業特別会計として特別会計で行われる。国民健康保険や介護保険などは一般皆生からの繰入があるが、港湾整備事業特別会計(港湾特会)は独立採算事業として一般会計からの繰入はないことが建前となっている。しかし、港湾特会が赤字になれば港湾整備事業基金から補填されるが足りなければ一般会計からの繰入が行われる。また、住宅市街地整備総合支援事業など住宅開発への補助金が交付されたり、企業誘致に交付金が支出されている。本来開発者負担のはずの道路や下水道の整備は公共事業として行われるなど、様々な税金の投入が行われる。因みに、人工島の住宅開発には一戸あたり200万円~300万円の補助金が交付され、開発事業者の販売促進を助けている。人工島は税金漬けの島である。

1、人工島は計画通り土地処分は進んでいない
 福岡市は今年(2012年)2月に港湾事業の見直しを行った。そこでは平均160億円の赤字、最大421億円の赤字じが生じるとした。しかし、赤字は基金で処理でき、港湾特会は健全といっているが、この5年間の港湾整備事業特別会計を見ると計画通り土地売却が進んでいないことがわかる。

年度      2007   2008   2009   2010   2011
不動産売却額 85億    38億     7億    64億     85億
起債額     37億    72億   101億 60億     61億
基金取崩額    0      5億    63億     0      0
基金積立額   27億   0.7億  0.8億   0.3億  14億
基金残高   110億   106億    43億   44億 58億

 港湾特会は土地処分が計画的に進まなければ起債し、更に不足すると基金を取り崩す。5年間の実績を見ると土地処分が進まず、不足分を起債するか基金のと取崩で対応している。その結果、起債残高が増え、基金残高は減少し続けている。2012年度も計画通り売れる見込みはない。

2、市5工区(旧博多港開発第2工区)は48億円の赤字
 市2001年に山崎市長は「銀行には決して損はさせない」という念書を書き、その後銀行団に損失補償をしてきた。市5工区は2004年に博多港開発の破綻が明らかになり、銀行団の圧力により福岡市が購入したエリアである。まだ埋め立てが始まったばかりの博多港開発第2工区を福岡市が買い取り決め、翌2005年に399億円で福岡市が買い取った。その時の起債399億円の返済が迫っており、福岡市は2014年、2015年にに15年償還で借り換えるとしている。最終的に元利合計485億円となり、市5工区の収支は48億円の赤字となる見込みを示した。
 
3、役割が終わった市住宅供給公社を悪用する福岡市
 市5工区は48億円の赤字になる見通し。これでも甘いと思われる。その背景には、市民体育館の移転計画など市が「有償所管替え」により買い取ることや、市住宅供給公社を使って一時的に購入させ、見かけ上土地処分するものである。そのため、役割が終わった市住宅供給公社を存続させる姑息なことを考えている。
 市住宅供給公社はスマートコミュティ地区とされるA地区を2010年に、B地区を2011年港湾局及び博多港開発から購入し、A地区は2010年に、B地区は2011年に積水ハウスに売却した。なぜこの様なことをしたのかその理由を市当局に問うと、驚くことに市住宅供給公社は住宅開発に有能なノウハウをもっているので介在させたと答えた。市住宅供給公社は南区レークサイドヒルズの住宅開発に失敗し6億円の欠損を出した。開発した住宅が売れないため2割引して販売し、一部は積水ハウスに買ってもらっている。先に住宅購入していた住民とトラブルを生じる事態も起こしていた前歴がある。
 市住宅供給公社に有能な住宅販売能力があれば自ら開発しているはずである。市住宅供給公社は2003年に山崎市長が銀行に損失補償を約束し、売れない人工島の土地を市から買わされた。2004年に一旦購入した土地を積水ハウスへ一括して破格の7万円/㎡で売った。市住宅供給公社は博多港開発救済に使われた。今回もまた同じことを繰り返した。市住宅供給公社はレークサイドヒルズ開発失敗以降、事業は管理業務しかしておらず、住宅供給公社の役は既に終わっている。全国の自治体では住宅供給公社や土地開発公社の生産を始めており、福岡市も住宅供給公社や土地開発公社は精算すべきだ。
 因みに、「売れない土地は積水ハウス頼み」が続いている。積水ハウスも福岡市の弱みをしっかり使い条件を引き出しているように見える。

4、香椎パークポートは16年経っても1/3が売れ残り
 香椎パークポートは1992年に竣工し、1996年に土地処分が始まった。2012年で16年を経るが、33.1ヘクタールの土地の内、売却済みは19.2ヘクタール余、借地3.3ヘクタール,処分が出来ていない土地は10.6ヘクタールである。16年経っても1/3の土地が売れ残っている。構造的に土地需要はないことがよく分かる。

5、頼みの綱は企業立地交付金
 この様な状況であるにもかかわらず市は土地処分は出来ると強気である。その根拠として、今年度から企業立地交付金の上限額をこれまで10億円(その前は5億円であった)であったものを30億円まで引き上げたことを挙げている。なんと4年間で人工島へ企業誘致するために260億円を予算化している。しかも、交付金は一般会計から支出されるため、姑息な手段を弄している。
 福岡市の財政は厳しく、2013年度から4年間において従来通りの施策を行うには851億円不足するという見通しを示している。財政健全化を進めるとともに、政策的経費を捻出するために、事業の選択と集中をするとし、借金を増やさないために起債を減らし支出の削減としている。そこで起債しなくて良いように、港湾局は港湾整備事業基金から一般会計に貸し付けて交付させるというのである。これも土地処分が進まなければ破綻する。

 以上、破綻が明館人工島事業の捨て銭をする余裕はもう無いはずである。いま福岡市では有識者会議で行財政改革議論されている。いまの経済構造を冷静に見れば、企業立地交付金の増額では土地処分は進まないにことは分かるはずである。経済構造の問題である。