大都市税財政制度確立推進協議会他都市調査報告

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調査日時 2016年5月9日、10日

日時 5月9日(月)13:30~16:00

場所 川崎市

1、財政運営、財政健全化に向けた取り組み

川崎市は今年度3月に新たな総合計画の裏付けとして「今後の財政運営の基本的な考え方」を作成。川崎市の財政状況は財政力指数が1.00(基準財政需要÷基準財政収入)で極めて健全である。人口増で税収も増え続けており、財政上の当面の課題は、2016年度、2017年度において児童数増による小学校2校新設の財源不足が一時的に生じる恐れがあり、不足分を減債基金(償還のための積立金)から借りることだけである。2018年度以降はプライマリバランスは黒字を維持し、市債発行残高を抑制できる見通しとなっている。2018年度以降は地方交付税不交付団体となる見込みであるため、厘財政対策債の起算の必要もなくなる。

 

2、税務組織の見直し

市民税事務所を2011年12月に、区役所の部門から財政局直轄にした。責任主体も区長委任から市長が行う事務とし、指揮命令系統を一体化した。区役所における人事配置から市全体の業務バランススを配慮した人事体制にすることで、税務事務に精通した人材育成をすることとした。職員の専門的な研修を経験に応じて行い、業務知識の共有と継承を図ることとした。職員の専門性を高めることで、市民に帯する説明責任が果たせるようにした。また、各区役所に分散していた軽自動車税、法人市民税、事業所税及び市が分納事務整理等を1箇所に集約することで、組織としての対応力の向上と効率的に人材育成による専門性の向上を図った。専門的知識を持つ職員を長期に配置し、後輩職員の指導に当たっている。研修は外部講師を招くなどのスキルアップの研修および各税毎の研修を行い、専門性を高めている。

事務所も7区役所および本庁に設置していた部署を3事務所と1分室に集約し、事務処理の標準化・効率化を図るとともに人員も16名削減した。市民サーブスの低下を招かないよう、市税証明書の発行コーナーを各区役所に起き、個人市民税の申告時期には各区役所に臨時窓口を設置している。滞納者に帯する納付対策として、「納税お知らせセンター」を設置し、民間事業者に委託している。

 

3、ミューザ川崎シンフォニホール見学

川崎シンフォニホールは音楽による街づくりを目指すとして2004年7月に開所した。駅前の再開発ビル(地下2階地上27階、土地は共有)の一画に建設(ホール部分は地上8階)した。保留床(延べ床面積17,243.96㎡)取得費212億円(一時金払い148億円、公団分割制度64億円)、パイプオルガン2億7千万円、初度調弁(備品等03年04年分)2億7千万円。運営は指定管理者制度で行い、指定管理者には年間約7億2千万円程度支払っている。事業全体としては公演企画、貸館などの事業収入および委託料の他、地元企業のスポンサーの寄附による。2011年3月11日の東に阪大震災の時に天井の一部が落下し、原因調査と修復のために2年休館した。施行不良として施工業者に対する訴訟を行っている。震災時には姉妹都市のザルツブルク市からの支援があり、施設にザルツブルク市のコーナーを設けている。

音楽ホールは1997席(車いす席10席を含む)、ステージを360度取り囲むヴィンヤード(段々畑)形式を取っている。ホールには観客の休息のための喫茶コーナーがあり、岡本太郎の壁画も展示されている。ホールの他に音楽工房として、市民交流室1、練習室3、会議室3、研修室4、企画展示室1が設置されている。ホールの公演は昨年度202回、主催・共催106公演、貸館96公演、入場者は20万人余である。。

市は東京交響楽団とフランチャイズ契約を結んでいる。市は東京交響楽団に公演の機会を多く作ることとし、補助金は出していない。東京交響楽団は川崎シンフォニホールを拠点に公演活動および練習を行い、講演料で収入を得、施設の使用料を支払っている。

川崎市には4つの市民交響楽団があり、100の市民合唱団がある。これらの団体には2割程度の減免措置を行って使用してされている。指定管理者主催で市民交響楽団まつり、市民合唱団まつりが企画されており、無料の公演となっている。ホールの使用料は使用状況によるが1日50万円~100万円程度。

 

5月10日 9:30~11:00

場所 千葉市

1,千葉市の財政状況

千葉市は財政力指数は0.95前後で推移しており、福岡市の0.86に比べ税収基盤はそれなりによい。東京都心の周辺にあり、ベッドタウンとして人口増が続いている。しかし、実質公債費率は18%を終えており、起債制限を受けている。その原因は平成4年に12番目の政令指定都市となったときに、将来も税収は増え続けると見込み、インフラ整備に多額の投資したことにある。とりわけ、これまでの公共施設建設は千葉市設備建設公社に委託し、債務負担行為として10年後に一括返済する仕組みを採ってきた。公社への返済は積立ではなく10年後に起債をして償還するということで市債発行残高が減らない構造になっている。起債を減らすために減債基金(市債返済積立基金)からの借入をしているが、償還が毎年5億程度しかできておらず、減債基金借入抑制も課題となっている。

2,千葉市の財政改革

財政健全化に向けて「千葉市財政健全化プラン」を策定し、第1期を平成22年度から25年度,第2期を平成26年度から29年度として財政健全化を進めている。第2期は4年の期間に①建設事業債残高(一般会計)、②減債基金借入金残高、③債務負担行為支出予定額(普通会計、建設事業分)、④国民健康保険事業累積赤字の合計を1000億円減らすとしている。具体的には債務負担行為のうちこれまでの公社委託による10年一括償還方式の事業は平成23年度からやめている。

歳入の確保として企業誘致と地場ベンチャー企業の育成、市税等納付率の向上のための債権管理の見直しを進めている。資産の有効活用として減債基金を運用しているが、超低金利でうまくいっているとは言えない状況にある。市税収増を図るため、子育て支援策の充実による子育て世代の誘致を進める。また「公平な負担」を求めるとして受益者負担を進めている。

歳出抑制では従来の債務負担行為はやめる、新たな事業は厳選し事業量そのものを抑制することで起債の減額と減債基金の償還額を20億円にして減債基金借入残高を減らしてく。予算にシーリング方式導入するとともに人件費削減で歳出を削減する。

3、税務体制の改革

千葉市は週の売りが政令市では低かったが、組織改革をすることで徴収率を向上させている。平成22年10月に6区にあった市税賦課徴収業務を2区に事務所を設置して集約化した。特別徴収や高額滞納整理してきた本庁は指導・調整にし、4区については出張所を設置して税務証明の発行などの窓口業務に特化した。

集約した事務所においては、初動班―現年度対応、整理班―滞納者対策、軌道班-高額滞納者対応、に編成して対応。市税だけではなく国保や保育料などの滞納管理については一本化することで、滞納者の個別の滞納状況を共有化し、個別事情に応じた丁寧な対応することで不能欠損を減らす取り組みをしている。また、職員の研修を強化し専門知識を高めている。また9都政令市会議など近隣市町村と共同で市県民税の特別徴収(企業が一括して徴収―天引き)に取り組んでいる。