福祉有償運送についての行政調査

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日時 2017年7月31日 10:00~11:00

場所 北九州市市議会会議室

説明員 地域福祉推進課中川恵介課長、野田久敏地域福祉推進係長

目的

超高齢社会を迎え、国では地域包括ケアシステムの構築を求め、各自治体でも取り組んでいる。他方、医療改革により在宅医療・在宅福祉が進められており、在宅医療・在宅福祉においては医療との連携が必要であり、訪問医療とともに通院の支援が必要である。福祉有償運送は通院や通所の支援、買い物支援など障害者や高齢者の移動支援としての役割が大きいと考えている。北九州市での取り組みについて調査し、福岡市における福祉有償運送の支援の参考とするために調査をした。

1、福祉有償運送とは

福祉有償運送とは、非営利活動法人(NPO)や社会福祉法人等が心身の状態により一人で公共交通機関を利用することが難しい方(介護保険における要介護ないし要支援認定者、障害者手帳(身体・知的・精神)を所持者)を対象として、タクシー等による輸送サービスを補完する事業。実施団体は地域の福祉有償運営協議会での協議の後、国土交通大臣により登録される。北九州市では現在9団体が登録されている。

利用に当たっては、実施団体に登録し、予約して利用。基本的にはボランティアで運営されているので営利に当たらない実費程度の負担を求められる。会費は実施団体により異なる。運賃が原則タクシー料金の半額以下とされており、実施団体によって距離制、時間制がとられ、回送料や待機料、その他介助料やストレッチャー使用料など取られることがある。実施団体の車両運転者はボランティアで、ボランティアの運転者にはガソリン代等程度の支払いがなされる。運行車両はボランティアの自家用車も使用されている。

因みに福岡市では平成19年10月5日から実施され、現在9団体が登録されている。

2、事業の概要

北九州市では平成17年12月20日に道路運送法第80条に基づき、附属機関としての北九州市福祉有償運送協議会を設置した。6月、11月、3月に協議会を開催、実施団体9団体の運営状況を把握するとともに。事業団体と実施団体による協議の場としている。市は実施団体に対して年1回の実地調査を実施している。

 

3,平成29年の9団体の実施状況

利用会員数(登録会員数) 1,390人

運転協力者数        573人

運送車両台数        107台

延べ輸送人数     29,940人

延べ走行距離数   158,952km

延べ輸送時間数    11,371時間

利用状況はこの間頭打ちと言うことである

 

4、北九州市社会福祉協議会が実施している「シルバーひまわりサービス事業」について

平成5年に実施された在宅高齢者のニーズ調査から、虚弱高齢者の在宅福祉の充実を図るため、民間福祉活動してきた連合福岡・北九州地区協議会と、北九州市および北九州市社会福祉協議会の三者が共同で平成6年1月から事業を始めた。対象者は65歳以上の要支援1,2,要介護1,2の認定者および身体障害者手帳保持者で月3回の利用制限がある。基本的には虚弱高齢者の移動確保が目的で、北九州市が平成17年に福祉有償運送の事業認定を始めたことで福祉有償運送実施団体となった。1回500円、15kn以上1000円と低価格の料金となっている。

シルバーひまわりサービスの実施状況(延べ利用人数)

H26 4,401人 H27 4,056人 H28 4,108人

北九州市では高齢者等の買い物支援として、地域課題解決のコーディネーター派遣制度を実施している。バスによる買い物ツアー、朝市、送迎の企画の支援をしており、現在10自治会が利用している。これらの取り組みを他自治会にも共有してもらうために年1回の推進会議を開催している。福岡市の「共創自治協議会サミット」に該当するような企画と思われる。

 

5、各団体への助成

平成22年度から各団体に対して、北九州市地域福祉振興基金(ひまわり基金)の助成を開始。各実施団体に前年度の延べ利用人数に対して一人当たり55円を助成。北九州市社会福祉協議会は北九州市からひまわり基金からの助成ではなく、北九州市から補助金を支出している。平成28年度の助成額は全9団体で5,958,290円である。

 

6、成果と課題

高齢者が増える中で福祉有償サービスは移動制約者の輸送確保のために、今後さらに重要性が高まっていくと考えている。しかし、車両の運行はボランティアで行うという性格上、各実施団体は資金不足、運転ボランティアの確保が課題となっているとしている。

北九州市では運転ボランティアの確保を支援するために、市政だよりで年1回福祉有償運送の紹介と運転ボランティアの募集を行なっている。また、社会福祉協議会でも主催する「市民ふれあいフェスタ」の会場で福祉有償運送の紹介をしている。

 

所見

超高齢化社会を迎え移動困難者が増えることが予想される。そのための多様な移動手段の確保が必要である。福祉有償運送はその一つであり、国が進める医療改革による在宅医療・在宅介護や地域包括ケアシステム構築において通院手段の確保として福祉有償運送がある。しかし、北九州市においてはまだ積極的に福祉有償運送を在宅医療・在宅介護のシステムに明確には位置づけられていない。福岡市においても同様であり、検討をすべきである。

福祉有償運送の課題は非営利事業でありかつボランティアであることから様々な制約を受けている。特に公的資金援助が受けられないこともあり財政的に厳しいこと、車両運転者がボランティアであり、事故のリスクや自己の車両を使用する負担などから協力者が少ないことなど共通した課題がある。北九州市のように福岡市においてもボランティア基金からの助成や市政だより等による福祉有償運送の紹介や運転ボランティア募集など積極的支援が必要と感じた。特にタクシー業界との共存が課題であり、棲み分けができる仕組みが必要である。