新潟市のBRT

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2017年8月17日(木)13:00~17:00

説明者 新潟市都市政策部新交通推進課課長補佐、主査

 

  • BRT導入の背景

1)合併による広域の交通体系の構築:バス路線の存続

新潟市では自家用車の利用が約7割を占め、バス利用が平成2年から平成22年で65%減、平成13年から平成24年までで20%減と急激に減り続けており、市郊外部でのバス路線の削減が進んでいた。他方、都心部への直通バスが中心部では団子状態の運行が発生し、交通渋滞の要因となっていた。また、13市町村合併により政令市となったが、各区役所および都心部へのアクセス確保の必要性からも交通体系の構築が必要であった。公設民営方式でBRT導入し、郊外部からの利用者に都心部でBRTに乗り換えをしてもらうことで都心部でのバス運行数を減らし、事業者には現行のバスの年間総走行距離957万kmを5年間の協定期間中は維持することで路線の維持および郊外部での増便をすることとした。

 

2)まちづくりの交通政策

交通体系として、①幹線交通としてのバス路線の運行便数の増便とバス停やJR駅の整備、➁都心部ではBRTへの乗り継ぎによる中心部へのアクセスの強化と交通混雑の緩和、③郊外部においては主要拠点施設や主要なバス停、主要JR駅へ接続する交通の確保をすすめた。郊外部における拠点施設や主要なバス停、主要なJR駅への交通は民間事業者が撤退しているため、区の事情に応じて区の委託によりバスを運行、また住民の要望によっては住民の自主的運行による住民バスが運行されている。区バス早く年間1億円の委託費、住民バスは運営費の約60~70%年間約1億円程度補助がなされている。

3)運行までの取り組み

運行までに市民説明会を全市で行った。平成25年度は全8区で各区2回計16回の市長出席による説明会、副市長、担当者、事業者出席による説明会を各区3回計24回、沿線コミュニティ協議会10協議会に各3回計30回の説明会、その他希望する市民への説明ななど併せて119回の説明会が実施され、延べ参加者5,048人参加した。平成26年度は全区で市長が出席して計37回の説明会を実施し、延べ1,188人が参加。平成27年度は8区で市長が出席して11回の説明会、市担当者と交通事業者の出席で障害者への説明が5日間、計30回の説会を実施、延べ1,197人参加した。

説明会の外、ミニパンフレットの配布、平成26年11月、平成27年1月、6月に市民意識調査がなされた。「市報にいがた」でBRT特集を組む、運行開始長句善には乗り換えに関するチラシを各バス停で配布、バス車内にポスター掲示をした。

市民の意見として費用の問題、乗り換えの問題、運賃の問題、新潟交通救済ではないかという意見があった。議会では賛否両論あり、市民意見同様の反対の声はあった。

  • BRT事業計画

平成27年9月5日から運行開始。第一次計画としては新潟駅から中心街および市役所を経由し青山のイオン前までとしている。新潟駅は現在改装中であり、改装後にはJR駅は2階になり1階部は通り抜けができるようになる。駅が通り抜けできるようになればBRTは中心部を回遊することが可能となる。将来的にはBRTを中心部で回遊させることとしている。状況によってはLRTもあり得るとしている。

  • 事業費

BRT事業は公設民営としている。車両は新潟市が購入し無償で新潟鉄道に貸与する。新潟鉄道は整備等ランニングコストを負担する。事業の条件として、5年の協定期間中は現在のバスの年間総走行距離795km維持するとしており、BRTへの乗り換えによるバス総走行距離減については郊外部のバス路線の便数を増便するとし、当初は450便が増便された。

事業費は第1次計画として連結バス4台の購入費3.5億円、走行空間・駅の整備費0.9億円、情報案内システム1.2億円、交通結節点整備5.1億円、デザイン等その他経費1.0億円計11.7億円。連結バス購入費は国から社会資本整備交付金として約50%程度の補助がある。その他の施設整備も補助率が異なるが同様の補助がある。将来連結バスは8台運行させる計画となっている。

  • 事業の効果

事業の効果として、平成28年度は前年度比0.8&増、平成29年度も同月前年比では1~6%の増となっており、若干の利用者像があり、利用減に歯止めがかかっていると思われる。直近のパーソントリップ調査は公表されていないが速報値を見るとバス利用者は中心部、郊外部ともに若干増えているが、自動斜里湯も若干増えており、歩行者自転車が減っているようである。高齢化の進捗によるのではないかと思われる。また新潟市が65歳以上の高齢者のおでかけ促進策としてICカード「りゅーと」の利用について市が半額補助する制度を実施している。現在3.2万人が登録しており、今後増えると見込まれ、2.5億円を予算化している。この「りゅーと」利用者増もバス利用増に貢献していると思われる。

中心部での交通渋滞緩和については、万代橋通過のバス台数は開業全お役2,000台から1,300台に減少している。バス走行数減より渋滞緩和とバス運行の定時制確保ができている。

郊外部から都心部へのバス利用者が青山での乗り換えることにより郊外バス走行距離が削減されたことで、郊外路線の増便と空白地の解消ができ利便性が上がっている。また、不足気味の運転手の解消にもなっている。一部中心部への乗り換えによる商業施設等の利用が不便になったというこえがあり、平成28年から直通便を126本増やしたため、当初452増便は現在309増便になっている。

 

  • 課題

当初問題となっていた乗り継ぎの問題と運賃の問題は、乗り継ぎ料金を直通利用の料金と同じにしたことやダイヤ改正である程度解消されているようである。しかし、予定されている4台の連結バス購入時にBRTによる公共交通維持について市民の理解が得られる成果がなければ議論は再燃するかの制がある。超高齢社会が進捗する中で、人口密度が低い郊外住民の移動の手段の確保と中心部へのアクセスの連携が実感できることが重要と思われる。

 

  • 所見

今回の新潟市の取り組みを見て、連結バスによるBRTの明示性が高いことが乗り換えを認識させていると考えられる。連結バスによるBRTが大量輸送だけでなく、明示性が高いことを生かして幹線交通とフィダー交通との区別をすることで交通システムを作る可能性を感じた。13市町村が合併したことおよび人口が広く拡散しているという新潟市特有の事情で、BRTとして連結バス導入による交通体系の再編により公共交通を存続させる政策の是非が問われている。住民に対して移動の権利をどう保障するかの問題。移動手段は市直営でするのか、民間委託するのか、民間を活用するのか、いずれにしても税金の適正な使い方が問題となる。市直営であれば市民が負担を納得する必要がある。