他都市調査報告

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他都市調査報告
市議会議員 荒木龍昇
市議会議員 小串龍治

日程 2003年7月22日(火)武蔵野市
          23日(水)立川市、駒沢公園
          24日(木)川崎市

1、武蔵野市
1)コミュニティバス「ムーブ」
 高齢者から公共交通機関から遠いため外出がしにくいという市長への手紙を受け、平成3年から検討を始め、平成7年から運行を始めた。市内4ルートで運行しており、200mに1箇所のバス停がつくられている。交通の空白地帯をなくし、交通弱者が気軽に安全に街に出れることを目的としている。
 コースは駅を起点に公共交通機関のバス停から離れている場所を循環させている。運行距離が短いため、定時で運行できること、バス停が近いこと、料金は100円均一でやすいと言うことで好評である。
 バスは長さ6.99m、幅2.02m、定員28名(座席15,立ち席13)、高さ15cmの電動ステップ付き、1台600万円、12台保有している。安全施設や車両、強制保険は市が負担、運行は民間会社に委託し、運行にともなう保険等は民間会社の負担としている。運転手は当初正規の職員であったが、経費削減のため途中から退職者を嘱託で雇っており、4年目から黒字となっている。黒字は半額市への寄付となっている。場所によっては幅6mほどの通りを巡回しているが、20km/時ほどで運行しているので事故はほとんど起きていないということである。実際に乗ってみったが、通勤時とも重なり、バスは超満員であった。
 高齢化が進む中で、気軽に安心して街へ出られるためのコミュニティバスは必要と考えられるが、運行エリア、コースの設定、利用密度などの事前調査が重要と考えられる。

2)テンミリオンハウス
 テンミリオンハウスは、市が施設を確保し、施設の運営を公募、運営主体には1000万円を限度に助成するという武蔵野市の制度である。現在、高齢者テンミリオンハウス5カ所、子どもテンミリオンハウス1カ所があり、障害者テンミリオンハウス、混合型テンミリオンハウスが考えられている。
 武蔵野ではボランティア活動が活発であり、地域の人的な資源を生かし、住民に身近なところでニーズに応じた地域共助の福祉として地位づけている。介護保険が導入され、在宅介護が重視されるようになり、介護保険ではできないサービスを考えている。高齢者施設を当初市内30カ所にバランスよく配置する計画であったが、現在5カ所となっている。どの施設も小規模で、介護保険の対象となっていない。利用料金は施設によって異なるが、介護保険の利用料以下である。
 私たちは関三倶楽部というミニディサービスと緊急ショートスティをしている施設を訪問した。広さは、8畳に畳の部屋と20畳ばかりの居間とダイニングキッチン、それに風呂とトイレである。ここはデイケアサービスは2から3人、ショートスティは2人の利用者がいる。ショートスティは本来緊急者に対応するとして始めたが、需要が多く数ヶ月の予約でいつも満杯という。運営はNPO法人パーソナルケア吉祥寺が運営している。常勤は一人、あとはその日の状況に応じて必要な人数が時間ごとに派遣される。パーソナルケア吉祥寺には約120人ほどが登録しており、そのうち20人は関三倶楽部に配置されている。ショートスティには専門的な資格を持った方が配置され、医者とも常時連絡できる体制になっている。ここは専門性が高いにもかかわらず、1000万円の限度額で運営されている。料金はショートスティ1日6000円、ミニディサービス500円、食事代500円、おやつ代100円、入浴代(立てる方だけ)200円。利用者は介護度が重い人が多いと言うことであった。家庭的な雰囲気で人気が高いという。また、地域との交流を図ると言うことで、年に4回ほど地域の方に声をかけて、食事会なども行っている。好評で、20人ほど参加。休みは年末年始の5、6日だけ。
 基本的には送迎はなく、家族が連れてくる。家族が送迎できない場合には、「レモンキャブ」に送迎を頼むことができる。「レモンキャブ」は市内の商店主が武蔵野市福祉公社に登録して運行している。現在6名が登録しており、みんな介護の資格を持っている。利用者は福祉公社に年会費1000円を納めて会員となり、利用時には予約して利用する。利用先は市内および近隣の地域であれば何にでも利用できる。運行する自動車は車いすのまま乗れる福祉型の小型車が使われている。利用時間帯は月~土曜の午前8時~午後6時までとなっている。利用料金は30分ごとに800円。「レモンキャブ」のほかにもリフト・タクシー「つながり」もある。
 地域の資源を生かすということはどこの自治体でも言われているが、具体的な施策として検討に値すると思われる。

3)「0,1,2,3ひろば」
 子育て支援センター「0123ひろば」を見学した。館長が出張のため、簡単な施設見学しかできず、事業費や事業の仕組みなどキチンとした説明は受けられなかったので残念であった。
 0歳児から3歳児までの乳幼児を持つ親が、いつでも好きな時間に、好きな時間だけ子どもとともに過ごせる施設で、「0123吉祥寺」に次ぐ2つ目の子育て支援センターある。小児科医や教育関係者など専門家による育児相談も2ヶ月に1回行われている。また、子育ての講演会やまつりなどの企画もある。プレイルームでは、絵の具で自由に落書きができコーナーも設置されていた。ただし、準備や片づけが大変なため、期間を区切っている。遊ぶ道具はすべて館に設置、遊んだあとは親子で片づけて帰る。公園で遊ばせることとは異なる親と子どもがくつろげる場になっている。
 開館日は日曜から木曜、開館時間は午前9時から午後4時までとなっている。1日自由に遊ばせ、親同士の交流もある。利用者は市域内とは限っていておらず、1日110から120組が利用し、半数近くは市街からの利用者。冬と夏が利用者が多いという。利用料金は無料、利用時に名簿に記入するだけである。スタッフは、正規の職員4名、嘱託の事務職員2名、施設の企画時、託児、業務の補助としてアルバイトの方(登録制)20名ほどである。見学時には、子どもは元気よく遊んでいた。

2、立川市(児童館)
 立川市には子ども施策、特に児童館について調査した。
立川市は都心部のベットタウンとして発展してきた。いま米軍基地の跡地の再開発が進んでおり、立川市庁舎も近く米軍基地跡地に移転するとのことであった。交通の結節点で1日50万人の乗降客があり、また駅前を中心に商業施設や教育関係施設が集積が進んでおり、商業の町としても発展している。
 いま立川市では18歳以下の子どもから委員を公募し、「夢育て・たちかわ 子どもプラン21」を策定の準備をしている。対象は20歳以下を対象としている。また、子ども総合相談窓口として子ども家庭支援センターを設置し、児童相談所や学校、保健所などとねとワークつくり対応している。これは東京都が平成6年から始めた事業で、立川市は平成12年から設置している。
 児童館は7館、学童保育23カ所あり、市内を7ブロックにまとめて各ブロックごとに児童館係をおき対応している。ただし、学童保育の2カ所は民営で、別途対応している。児童館には学童保育が併設されており、また、児童館では子育て広場も開設している。各児童館係には係長と児童館に職員3名、学童保育(学童数30~60名)には3名ないし4名の嘱託職員、子育て広場には2名の嘱託職員が配置されている。嘱託職員は保育士や教員などの有資格者である。学童保育は希望者は多く、待機者が出ている。定員に空きが出たときは、保護者の状況を点数で評価して入所を決めている。
 私たちは錦・羽衣児童館を視察した。児童館の1階は学童保育、2階が児童館となっている。児童館に遊びにの子どもは学童保育の部屋には入ってはいけないことになっており、学童保育の子どもはカリキュラムに沿って行動しており、区別はついているとのこと。学童保育は平日は午後下校時から6時まで、土曜日および休日(日祝日、夏休み、冬休みなど)は午前8時30分から午後5時までとなっている。夏休みには会館前から待っている子もいるという。
 2階の児童館は遊戯室(この日は卓球をしていた)、工作室(この日は午後から竹細工が予定されていた。)、集会室(ゲームをしていることが多い)、図書館(漫画たくさんおいてあった)となっている。工作室にはパソコンもおいてあり、決められた日(火、水、木曜日の午後3時から5時まで)に20分交替で予約して使っている。児童館は18歳未満は誰でも利用できるようになっており、利用者が多いときには年齢や遊びについてルールを作っている。児童館では子どもの企画による夏休みのキャンプを始め人形劇や映写会なども行われている。また保護者による親子サークルが行われており、児童館が後援し、親が主体的に活をすることになっている。企画などの活動はウィークディの昼に開催されており、勤めていない親しか参加できない問題もある。
 児童館では子育て広場も開催されている。月・木は0歳、1歳の乳児を対象、火・金は2歳以上の幼児を対象、水は合同で広場が開催されている。開催時間は10時から12時の2時間となっている。平日は学童保育の部屋を使っているが、長期の休み期間は遊戯室を半分に仕切って開催している。2時間内であれば好きな時間、誰でも参加でき、自由に遊ばせている。子育て広場が終わる前には親子で道具を片づけ、その後指導員が紙芝居、手遊び、体操を指導し親子で手遊び、体操をして終わる。親の教育がまず大切と館長は語っていた。
 子育てなどの相談は指導員が相談を受けることになっているが、必要があれば子ども相談センターとも連携して専門家の相談を受けれるようにしている。しかし、親同士の交流で解決することが多いという。この児童館では、児童館に来る子どもや学童保育の子どもたちから1日保育士を募り、子育て広場で子どもの世話をさせている。終わると写真付きの修了書を渡すことにしており、人気が高いという。この日も2人の女の子が1日保育士になっていた。
 武蔵野市の「0123」事業の良さもあるが、児童館で子育て広場が開催されることで、子どもたちと乳幼児が接する機会ができることも意味が大きいと思われる。なお、事業費等の資料は後日送ってもらうことにしている。

3、駒沢公園(ドッグラン)
 駒沢公園では「ドッグラン」の視察をした。「ドッグラン」は愛犬家が犬を放し飼いにできる場所のことである。駒沢公園では、東京都が試験的に公園の一角に「ドッグラン」を設置している。毎日新聞で紹介されていたので、現地を視察してきた。新聞によると、好評なので、当分は続けるということであった。施設は周辺を柵で囲っているだけで、特別なものはなかった。ただし、中で犬の糞の後始末をちゃんとしないとか、他の犬にかみつくというようなことがあれば施設を閉鎖するという看板が出されていた。
 福岡市でも同じような要望があり、愛犬家とそうでない人が棲み分けして気持ちよく公園を利用できる施設としてはあってもいいのではないかと感じた。

4、川崎市(市民オンブズマン、人権オンブズパーソン)
川崎市には、市民オンブズマン制度についいて調査に行った。川崎市では、市民オンブズマン制度をさらに発展させ、人権オンブズマン制度が新たにできていたので、併せて説明を受けた。
 市民オンブズマン制度は通常の単なる苦情処理ではなく、市民の苦情処理および監視機能を高めることで行政の改善を図ることが目的である。市民の申し立てについて調査し、結果行政に是正の必要があると認められたときは市長に意見表明あるいは勧告をする仕組みである。自治法に基づく市長の付属機関としており、議会の同意を得て市長が委員を任命している。対象は行政の業務の執行にかかわることおよび業務にかかわる職員の行為についてである。今年度から委員は2名、調査員8名となっている。委員は弁護士や大学の教授など法律の専門家が任命されており、調査員は法律関係の大学院生がなっている。一人の委員に4人の調査委員がついている。
 申し立てを受けた場合には、事務局と委員、調査員で扱いを協議し、担当課の課長を呼びヒアリングをする。ヒアリングに基づき、該当事案についてさらに調査するか否かを判断する。申し立てだけでなく、委員独自の判断で調査することもあり、平成13年には各局の要綱についてもすべてホームページで公開するように意見表明をしている。
 制度ができて13年を迎えているが、申し立て件数は160件ほどと制度的には安定している。職員も緊張感を持って市民と対応している。申し立ては建築関係、保健福祉家計、街づくり関係が多い。平均的には60日程度で処理されている。市民オンブズマン制度は、包括外部監査などの監査制度との補完関係で、市民の監視機能を強化する上で有効な制度と感じた。
昨年度から新たに人権オンブズパーソン制度ができた。子どもの権利条約批准にともない、子どもの権利に関す条例ができた。また男女平等川崎条例ができ、この2つの条例に基づき、子どもの権利と男女平等の実現を目指して人権オンブズパーソン制度が作られた。制度は、市民オンブズマンと同じく市長の付属機関となっている。構成も委員が2名、調査員も8名委員は弁護士や家庭裁判所の判事がなっている。調査員は看護師、精神保健福祉士、カウンセラーなどの専門家がなっており、委員も調査員もすべて女性で構成されている。
 相談は子どもに関してはいじめ、女性に関してはDVが圧倒的に多い。平均して2~3ヶ月で解決しているが、解決後のケアの問題など、様々な機関との連携が重要になっている。子どもの問題やDVなど深刻な問題が起こっており、人権オンブズパーソンとNGOとの連携など行政と民間との協力・連携が求められている。川崎市ではすべての保育園、幼稚園、小学生、中学生、高校生、聾学校、養護学校に人権オンブズパーソンを知ってもらうために「子ども相談カード」を渡している。また、子ども権利に関する条例も子どもが参加して作られた。
 福岡市では子ども総合相談も窓口ができているが、調査し解決に向けて行動する点では不十分である。子どもの権利を主張できる仕組みとしても、子どもの権利に関する条例とそれを担保するオンブズパーソン制度が必要である。