虹と緑・九州ブロック政策研究会報告

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「虹と緑」九州ブロック 第2期政策研究会報告
日時 2003年7が27日(日) 
場所 福岡市中央市民センター

1、市町村合併後の地域自治体の展望は?
 講師 河原晶子(鹿児島志學館大学 コミュニティ社会学)
1)合併によるメリット・デメリット
 いまの市町村合併は、行財政の合理化でしかなく、どのような合併がよいのか議論がなく、先に合併の枠組みが議論されていることに問題がある。都市部における行政と農村部における行政では、構造が異なり、農村部における地域密着型福祉サービスの熟達が軽視され、市場ベースの行政になる。地域「遺産」を守り抜く住民能動が弱いとサービスの低下を招く。結果として、小さい故におもしろい町村が消え、大きてつまらない芝刈りになる。また広域化することで、自治体の自己変革の機会を失うことになる。

2)合併後の基礎的自治体
 合併後どうなうかを確実にいえる状況にはない。言えることは、「巨大化、官僚化」が進み効率化がいっそう求められる。広域化により、中心部と周辺部の格差が拡大する。地域への各種助成金の減額・統合が進み、一方で地域住民組織への「委託事業」が増加する。 住民の「自立と自己決定」が強調され、様々な「参加」制度を利用して能動的に関わりサービスを受ける積極性を持った「強い市民」と、制度やサービスも権利も知らずに沈殿する「弱い市民」に二極分解していく。住民の地域生活を最終的に支えるセーフティネットととしての地域福祉が重要となる。

3)地域内自治(自治体内分権)の議論をめぐって
 ◎超制度調査会西尾私案・中間報告(03.4)の提案
合併後の自治体内に「住民自治強化のために」「旧市町村単位の地域自治組織」
a、法人格を有しない「行政区」タイプ
b、法人格を持つ「特別地方公共団体」タイプ
自治体からの財源移譲はあるが課税権・地方債発行権は認めない。
◎コミュニティレベルでの自治の制度化に関する諸試論も多い
 住民が「地域の行政や経営に対して主体的に取り組む」と強調される。意見集約や意向は反映されるが決定権は重視されない。地域諸団体の代表や公募市民による運営協議の住民自治組織は中野区の住区協議会のようにすでにある。

 地域内自治が取りざたされる背景は、合併を進めるための方便、広域化することによる住民と行政の距離が遠くなることへの対応、行政需要に対応するための「行政サービスシステム」として「公民パートナーシップ」や「住民と行政の協働」が謳われる。
住民による自治・分権の「統治システム・制度論」については担い手が地縁組織としての自治会や町内会が主流となり、いざというときの自立した意思を表明できるか疑問がある。日常的な運動に支えられ、行政との緊張関係にある自治組織でなければ、「行政によるソフトな支配」になってしまう危惧がある。財政的にも、土木関連や商工関連の助成金に比べれば地域への助成は少なく、分権・自治の中身は貧弱である。そういう意味では運動論としての地域内自治はあっても、組織論としての地域内自治に危うさを感じる。
 
 この後援は市町村合併の問題ではあったが、福岡市が抱える地域内自治の問題としても共通の課題であることを感じた。地域内自治・分権について、今後の研究改題と考えている。

2、地方財政のゆくえ
 講師 徳田康光(鹿児島県龍郷町職員)
 国は財政難のために三位一体の改革と称して、財源移譲と同時に交付税を削減しようとしている。平成15年度は地方交付税は16兆5千億円で7.5%減となっており、これまでの景気対策による公共事業の起債でどの自治体も財政はさらに悪化している。背景として、公共事業の工事単価は民間の1.7倍といわれていることがある。また、銀行救済に8年間で44兆4千億円の税金が投入されたことで国の財政悪化に拍車をかけていることがある。
鹿児島県では県が枠組みを決めて合併を進めている。当初14市町村合併案が出されていたが、8市町村で合併協議が始まった。枠組みの議論が施行し、合併の中身の議論がないまま協議が進められてきた。直接住民投票で、住民の6割以上が反対したため、町長は合併協議会から離脱を決めた。龍郷町が離脱した後2町が離脱をした。県は圧力をかけているが、合併しないという方針で進めている。
 8市町村で鹿児島総研に今後の財政状況について調査を依頼した。その結果、龍郷町では平成32年の時点で地方交付税が16.4%減額されるとして4億円ほどの財源不足が生じることになった。すでに、地方交付税では1万人以下の町村に対する「段階補正」という補助策は削減され始めており、今後厳しい財政状況になるとして、昨年から職員を10人減らしている。鹿児島総研の予測の範囲であれば、あと5名の職員を削減し、職員の創意工夫と住民との協働を進めればやれないことはないと判断している。
 離島は住みやすい環境にすれば人口は維持できるという話があり、コルシカ島やジャージー島では無税にすることで島が活性化していると聞いている。龍郷町では公共事業が最大の企業となっており、この構造を脱却したい。かっては大島紬が島の最大の産業であったが、いまは見る影もなくなっている。離島では収入が多くなくてもいい環境の中で豊かに暮らしていけるので、国が離島で住みやすい環境をつくるように望んでいる。

 下甑町の議員が見えており、川内市、串木野市との合併についての経過報告があった。下甑町では、議員12人の内7人が離島だけで合併すべきで仙台市等との合併には反対していた。ところが、鹿児島県の圧力で合併反対派議員7名が住民によるリコールがなされ、再選挙の結果7名の内反対派は3名しか当選しなかった。その結果、合併推進派は9名となり、合併協議会に参加することなった。ところが、串木野市が合併協議から離脱し、市来市などとの合併を進めることとなり、状況は混沌としているということであった。鹿児島県では県が枠組みをつくり、県が合併を強固に進めているため、結果的には様々な混乱を引き起こしている現状が見えてきた。