人工島に「トトロの街」?

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 宮崎駿監督が人工島の住宅建設のために「トトロの森」をイメージしてデザインを提供した。「自然との共生」などをイメージした住宅街をスケッチしたものという。でも「ちょっとおかしい」と直感的に違和感を持った人は多いのではないだろうか。
 人工島は多くの市民、国内外の環境保護団体が博多湾の自然を破壊するとして反対する中を強行して進められた埋立計画である。人工島によって博多湾の自然は致命的な打撃を受けた。埋立により海水の入れ替わりがさらに悪くなり、水質の悪化、生態系への大きな影響、渡り鳥の激減、景観や地域の気象の変化、環境破壊と言わずして何というのだろうか。福岡市は今なお「環境の創造」をキーワードにして開発を続けている。人工島は「環境の創造」の象徴なのだ。この人工島と「トトロの森」はいったいどのようなつながりがあるというのだろう。
 宮崎駿監督の弟さんの弁によれば、監督は「バブルの過ちを繰り返している人工島には批判的だ」という。しかし、人工島の住宅建設のために「トトロの街」づくりにデザインを提供することは、地球環境が危機的状況にあるという認識、それも行政の開発行為によっていまなお全国各地で環境破壊が進んでいる現状を、宮崎駿監督がどう受け止めているのか疑問を持たざるを得ない。