他都市調査(公益通報制度、入札制度について)

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千代田区職員等公益通報制度
千代田区職員等公益通報制度

他都市調査報告
日時:2004年1月13日(火)~15日(木)
場所:13日(火) 千代田区(公益通報条例)
14日(水) 中野区(公益通報要綱)
15日(木) 座間市(入札制度改革について)

1、公益通報制度のついて
「千代田区職員等公益通報条例」と「中野区職員の公益通報に関する要綱」について調査を行った。中野区が昨年(03年)6月に「中野区職員の公益通報に関する要綱」を作ったことに続いて、千代田区では「千代田区職員等公益通報条例」を昨年(03年)7月に議決を経て8月から施行された。いずれの区も区長の発案による。行政の透明性と信頼性を確保するために提起されている。目的は通報者の保護と区行政執行に係る公益の確保にある。

1)千代田区
千代田区は中野区のような要綱ではなく、条例にしている。対象者も中野区では区職員のみとしているが、区職員、外郭団体役職員、受託事業者、およびその退職者となっている。千代田区が条例とした理由は、公益通報の受け皿を独立した第三者にするためとしている。具体的には、2名の弁護士を「行政監察員」として議会の同意を経て設置している。 通報は原則実名であるが、十分な証拠や緊急性がある場合は特命でも受ける。通報者名は行政監察員しか知ることはない。行政監察員に通報されると、行政観察員が調査を行い、区長に報告する。報告を受けた区長は調査内容に基づき、公表し、告発等必要な措置を執り、改善策をとる。区長が必要な措置を執らない場合は行政監察員が外部に通報することが出来る。
現在千代田区は現在2名の弁護士と行政監察員の契約をしている。2名の行政監察員は独立しており、合議制ではない。また、行政監察員は必要があれば区長に報告して、契約金額(年間2415000円を限度、基本料月10万円、調査1時間につき2万円)の範囲内で調査員をおくことが出来る。その場合は行政監察員は、補助行政監察員の監督責任を負う。補助者の資格も弁護士等となる。
行政監察官は、通報者が不利益を受けているという申し入れについても調査を行い、是正を求める。また、通報が事実でなく名誉が害されたときには、区長は名誉回復の措置を執るとなっている。
条例については特に議会からの反対はなかった。千代田区では福岡市のような事件はないので、議会として特段議論にはならなっかたようである。現状でも問題になる通報はない。

2)中野区
中野区は対象者は区の職員のみとしている。通報先は公益通報委員会(助役、収入役、教育庁、総務部長、公益通報相談員の5名で構成)となっており、その窓口として庁内LANに公益通報メールボックスを作っている。公益通報メールボックスは総務課長しか開けないようになっており、総務課長は通報を公益通報委員会に報告する。また、通報者の信頼を確保するために、外部に公益通報相談員として弁護士を1名おいている。公益通報相談員は通報があれば公益通報委員会に報告する。通報者名は総務課長又は公益通報相談員以外は知らない。
公益通報相談員は、区としてはアドバイザー的な役割を委託している。通報および区の相談1件につき2万円を払っている。通報は原則実名であるが、匿名でも受けている。
通報について報告を受けた公益通報委員会では検討し区長に報告、区長は公益通報調査員を職員の中から専任する。公益通報調査員は調査の際には通報者がわからないように慎重に調査する。。
公益通報委員会は、公益通報調査員の報告を受け検討し区長に報告。区長は再発防止等必要な改善措置を指示する、懲戒分限委員会にかける、告発など必要な措置を執る。区長は毎年執行状況の報告をすることになっている。現時点では、勤務実態に対する通報が1件あったのみで、特に問題となるケースはない。
中野区が条例ではなく要綱にした理由は、これまで特に事件は起こっていないこと、国で公益通報に関する法が検討されていることなどから、職員間で自浄作用が働ければいいと考えていることにある。また、財政的事情からも、弁護士を顧問のような契約が難しことなどが説明された。
中野区では要綱を作るときに、職員間の相互監視なると不評であった。区長が行政の品質保証をするものだという話しをしたことで職員は納得した。現在は特に問題になっていない。

3)福岡市にとって
福岡市では、自民党パーティ券事件以来政治倫理条例、職員倫理条例が作られたにもかかわらず、企画総務局長の汚職、副議長の贈収賄、ケヤキ庭石事件、港湾局計画課長の汚職、塗装協同組合の談合、そして港湾局内では日常的に業者から金品を要求してきたことなど、不正腐敗が後を絶たない。千代田区、中野区においてはこのような事件が起こっていないにもかかわらず、行政の信頼性を高めるために公益通報制度が作られている。市民からの信用が地に落ちている福岡市においては、公益通報制度を作ることは当然と思われる。特に、千代田区の例に見られる、独立した第三者による通報の受け皿が必要である。
福岡市の現状を見れば、内部の監察制度はほとんど機能していない。身内の調査はお手盛りとしかいいようがないことは、ケヤキ庭石事件の調査経緯を見れば一目瞭然である。包括外部監査においてさえ、第三セクターがいかに非協力的であるかがわかる。
さらに、議会としてのチェック能力も問われている。三重県における議会の外郭団体への関与のような制度も必要である。公益通報制度および議会の外郭団体に対する関与の制度など、全体的な枠組みを再検討する必要がある。

2、入札制度改革に向けて
座間市では平成9年に土木工事の談合事件が発覚し、入札の改善がなされた。入札の改善前の平均落札率は、平成8年度98.97%、平成9年度96.77%であったものが、平成10年には76.04%、平成11年は82.15%、平成14年度は83.70%になっている。入札改善の効果が如実に出ている。では、何が効果があったのか問うたが、それぞせれの対策が相乗効果を生んでいるのではないかと答えた。
談合事件後、入札制度は、一般競争入札を増やす、現場説明会をなくし設計書渡しにして業者間が会う機会をなくす、入札情報の公開、見積もり内訳書の提出、直接工事費の事前公表、入札会場の公開、談合情報があったときは直前に抽選で参加企業を半数に減らす、設計図書の売却、入札特約条項を新設、など変更された。予定価格の事前公表は検討しているが、談合を助長する恐れもあるとして検討中ということであった。
注目したいことは、 談合事件後、市発注契約における談合等の不正行為があったときの損害賠償条項をつけた。対象となる契約の範囲は、工事請負、物品購入、委託等すべての契約。対象となる契約方法は、入札および随意契約。損害賠償請求の実施条件は、独占禁止法違反で公正取引委員会の審決で確定したとき、又は談合等の競争入札妨害の刑が確定したときとなっている。随契約の場合は、贈収賄罪が確定したときとなる。損害賠償額は契約金額の10%、損害がこれを越えたときには越えたる部分も請求できることになっている。すべての契約に網をかけていることは、不正を防ぐ手だてになっているのではないかと思われる。港湾局前計画課長の汚職についても、このような制度があれば一定の歯止めになると考えられる。
指名競争入札の場合、必ず市外の業者を1社入れて入札している。市外業者を入れることで、お互いに牽制し合い、談合しにくい状況を作っている。福岡市でも、指名競争入札については、同業組合以外の業者を必ず入れる必要がある。しかし、座間市においても、同業組合内では未だに談合の形跡が残っている。落札率を事業ごとに見ると、造園関係96.95%、電気設備関係94.94%、水道関係93.56%、管工事関係93.96%となっており、相変わらず高い。土木関係は74.52%(契約額全体の47%を占める)と全体を下げているが、談合事件で組合を解散し、価格のたたき合いになっているという。
また、談合対策とは別に、市内小規模事業者の受注機会の拡大を図っている。具体的には建設業法第3条の規定に基づく建設業許可を取得していない市内の業者でも、納税義務等を遵守していれば1件50万円以下の諸規模、簡易な事業については入札に参加できるようにした。福岡市でも参考にすべきと思われた。
最後に、契約後の設計変更の問題について、座間市の状況を尋ねた。設計後の契約変更は約8割あるが、そのうち当初変更見込みの事業は57%、また変更の内減額修正は30%程度あるという。変更金額は平均3.9%ということであった。福岡市で談合事件となっている市営住宅の外壁塗装においては、変更額は20%弱となっており、変更後は予定価格を上回っていた。このような事態はどう考えても異常である。設計変更の考え方を明確にする必要がある。また、桧原葬祭場の全面建て替えは、53億円の図有為契約をしていることの異常さを改めて感じた。参加事業者の辞退等で最終的に1社になった場合は競争入札をやり直すなど、随意契約についても考え方を整理する必要がある。他都市調査(公益通報制度、入札制度について)