公共工事不正再発防止調査特別委員会

Pocket

2004年12月27日(月)

1、はじめに
 今回、10月27日に行われた「ケヤキ・庭石裁判」の検察官冒頭陳述で、①西田元議員の口利きで人工島以外にもケヤキが売られていた、②100条委員会に虚偽の報告をした、③ケヤキチームを作り組織的に証拠隠滅を行った、など新たな事実が明らかとなり、特別委員会がもたれることになった。総務企画局監察班が関係者の事情聴取を行い報告がなされた。調査に基づき関係者の処分が行われたが、常識から考えると極めて軽いものであった。
 調査は、(1)福岡市におけるケヤキ植栽工事等に関する調査、(2)港湾局から福岡市議会に報告された博多港開発株式会社の作成資料に関する調査、(3)その他博多港開発株式会社における文書廃棄等、についてなされた。当日はケヤキチームの内、課長職以上の6名を参考人として招致し、質疑がなされた。結論から言えば、真相解明のはほど遠く、身内の調査の甘さ、市長の問題意識の低さが改めて明らかとなった。

2、具体的な質疑
1)人工島以外のケヤキの売り込みについて
 ①都市整備局でのケヤキ使用
 平成4年10月~11月頃、都市整備局公園緑地部長に西田藤二元市議(昭和54年5月2日から平成8年9月19日まで市議会議員)がケヤキ購入の依頼に行った。部長は一旦断ったが採算の依頼で中冷え公園に14本を使うことにした。入札は指名競争入札で行われ、計画当初からケヤキを使用することにしており問題はないとしている。価格についても見積書ではケヤキ1本約100万円で、設計単価は約80万から90万であり問題はなかったとしている。
 監察室は、西田元市議の依頼でケヤキを植栽に使うように決めたこと、ケヤキは営林署のものでなくても入手できるとして営林署のケヤキを指定したことは不適切な行為としている。

②港湾局でのケヤキ使用
 平成4年10月頃、西田元議員が港湾局西部建設課に営林署のケヤキを使うように依頼を受け、地行中央公園でシンボルツリーとして3本を使用。平成5年には地行浜緑地整備(植栽)工事にケヤキ28本を使用。いずれも見積書では約100万円、設計単価は約90万円となっており、価格について問題がないとしている。、見積もりは3社から取っており、その中に西田元議員が送ってきたものがあり、他社に比べて一番安かったとしている。指名競争入札で業者選定を行ったが、受注業者から蜜森崎を聞かれて大成産業を教えたとしている。
 監察室は、議員の提案で樹種を決めたことは樹種選定過程に公正であったのか疑問が残るが、事務執行上は門田がなかったとしている。政治倫理条例制定前であり、議員からの紹介を受けたことは当時としては不適切とは言えないとしている。また、受注業者に議員からの紹介の見積もり業者を教えたことは特定のケヤキ取引業者との取引を指示したかのような効果を生じさせ、結果的に不適切な行為であったと思われるとしている。

③下水道局でのケヤキ植栽について
 平成5年夏頃、下水道局建設部長の提案により西部下水処理場の目隠しとしてケヤキを使うことを検討、使用。25本を使用。設計単価は約90万円、工事は指名競争入札、入札後受注業者から聞かれて見積もり先の業者の連絡先を教えたかもしれないと回答したものがいたとしている。工事前に施設か職員は現地に行き、仕様書の内容に合致する高木を選定、使用したとしている。
 監察室は、受注業者に見積もり先の業者の連絡先を教えたことは特定のケヤキ取引業者との取引を指示したかのような効果を与え、結果的に不適切な行為であると思われるとしている。また、当時の植栽検査につては、検査基準を満たしていないと判断したにもかかわらず、検査に合格させたものはいないとしている。

 以上が観察室の報告であるが、どうして指名競争入札なのに、全て営林署のケヤキが使われたのか、大成産業から購入されたのか、説明がつかない。また、検査に合格しないようなものが納入されているにもかかわらず、誰も適正と言い張るのは何故か、市民を馬鹿にしている。平成4から5年以下家手納入されたものは切りぶかしのものであり、とても検査に通るものではなかったといわれている。事実、平成7年に博多港開発が購入したケヤキは全て切りぶかしであったという報告が残っている。検察官の冒頭陳述では、大成産業社長は仕入れ価格は30万円ほどで、建設物価表では145万円から160万円となっているので、100万円ほど売れるとして、西田元議員が経営する海浜公園振興の社長に持ちかけていることが指摘されている。当時現地を視察した職員、そして完成後の検査をした職員がウソを言っているとしか考えられない。検察の冒頭陳述では入札要件として営林署のケヤキを使わせるために、大成産業から仕入れるよう指示したとされていることについても、曖昧に調査になっているが、全て大成産業からケヤキが購入されている事実を見ても、職員がウソをついていると考えられる。。

2)ケヤキ評価業務の受託者に評価額のつり上げ、調査報告書の改ざんを依頼について
 博多港開発は平成14年12月に、社団法人日本造園建設業協会及び社団法人福岡樹芸組合連合会にケヤキの評価を依頼した際、ケヤキの評価を100万円近くにして欲しいと依頼したとされる。観察室の調査では、そのような事実はないとしている。ケヤキの評価を受ける機関がなく、人工島の植栽監督を委託していたコンサルタント会社の紹介で福岡県樹芸組合連合会に依頼をした、また日本造園建設業界九州・沖縄総支部については志岐前社長から依頼され入る。

■福岡県樹芸組合連合会(以下連合会)について
 評価についてコンサルタント会社が評価や表現について修正を行っており、コンサルタント会社は「会社の苦しい立場も感じ取って」全体で平均10万くらいの調整をしている。このことについて、監察室は鑑定者による幅の範囲内であり、連合会の理事会に報告の上会社に提出されているので問題ないとしている。
問題は
①しかし、評価に当たり、コンサルト会社は連合会及び博多港開発職員と同行しており、何故コンサルタント会社が同行しなければならなかったのか。連合会はプロの筈だが。監察室は連合会は評価が出来ても報告書を求めるなどの経験がないのでコンサルタント会社に相談したというが、どうしてコンサルタント会社が修正したのか説明はなっていない。
②コンサルタント会社は博多港開発と4回契約があり、不透明であること。苦しい立場にあることを感じ取った」とはどういうことか。
③鑑定者の幅があるなら、鑑定の幅を示すべきではないのか
④当初鑑定料とは別に旅費宿泊費を博多港開発が負担するとしていたが、連合会から透明性の確保から断ったとしているが、当然鑑定料に含まれるのが普通である。博多港開発が評価変更を依頼する意図の表れではないか。
 以上を付き合わせると、コンサルタント会社を使い意図的に価格評価を修正したとしか考えられない。

■日本造園建設業協会(以後造園協会)について
 小塩元常務の発案で鑑定では評価0のもについて「健全な状態で渡す」と契約がなっているので、新木に入れ替える前提で評価するように依頼した。このことは議会提出資料に明記しているとしている。しかし、平成7年購入のケヤキ200本は全て切り株であったこと、またその後港湾局係長が視察したときには使えるものは10本しかなかったという報告、平成11年購入の300本の内40本は切りぶかしであったという報告などと重ね合わせると、購入したケヤキがいかにひどいものだったかの査証である。
 また、工事部次長は造園協会から中間報告を受けて、自然系の3、4級の木について評価額を5%あげてくれと依頼した。また、次長は報告書の「総評」について添削し、建設物価版を引用して、平成7年、平成11年の市場価格はそれぞれ160万円と145万円の旨を挿入した。これについては特別委員会でも単独で判断した答えている。しかし、このような重大なことを単独で判断したとは考えられない。
 監察室では、造園協会が建設物価版にあてはめてキチンと評価したといっており問題ないとしている。しかし何故価格値上げの依頼をしなければいけなかったのか、何故「総評」を添削しなければいけなかったのか、特別委員会では明かにならなかった。
 本来、検査は一本ずつ行われるべきであり、1、2級以外は検査に合格しない。しかし、そうすべきであったと答えてはいるが、評価は平均価格でなされており、検査に合格しないものまで買っている。このことについて、責任の所在は不明確のままである。
 虚偽の報告をした2事業者について、入札停止などの処分をすべきではないかという質問に、総務企画局長はそれぞれの理事会で確認して出されたもので、処分は出来ないと答えている。しかし、どこに責任の所在があるかを明確にしないままであり、納得できない。

3)庭石の岩石名判定・分類業務の委託に関して、福岡市議会に虚偽の報告を行ったことについて
 庭石について緑泥変成岩の割合が全体の10.8%に過ぎないことを日本地研から受けていたにもかかわらず、市議会には調査していないと報告していた。この件について、小塩元常務は志岐社長に相談したところ無用な混乱が起こるので報告しないよう指示されたと答えた。造園協会に依頼した結果が「博多港開発所有の五木石は五木地方で採取されたものと断定される」とあったので、発注が緑泥変成岩としていたが五木石の記載ミスであり、五木石であることが分かったので報告する必要がないと思ったと答えた。
 問題は
①どうして造園協会が五木から採取したと判断したのか不明であること。目視だけで判断できるか疑問である。
②緑泥変成岩の含有率は採取場所の特定や価格にかかわることであり、鑑定の信頼性には欠かせないはずである。含有率が低かったために故意に隠したとしか考えられない。
 いずれにしても、ケヤキにしろ、庭石にしろ、鑑定にかかわった事業者を呼んで聞かなければ真相は究明できない。

4)平成15年3月に大量の文書を廃棄して証拠隠滅が行われたことについて
 平成14年11月の第三委員会後ケヤキ庭石事件が議会で問題になり、資料作成のために小塩元常務を中心に博多港開発にケヤキチームが作られた。ところが、港湾局は知らなかったとしている。
 ①平成12年12月に総務課において段ボール2~3箱の書類を廃棄、
②平成15年2月6日、総務課で段ボール箱約10箱の書類を廃棄
 ③平成15年3月5日、工務課ほか、約30箱の書類を廃棄
    (平成15年2月20日、市長が社長に就任) 
 ④平成15年6月6日、9日、20日、11日に約100箱の書類を廃棄
    (強制捜査終了後)
 工事部次長が西田藤二元市議の経営する海浜公園振興の名前が出てくる書類については木を命じたが、課長は原本又は原本に近いコピーについては残したと答えている。工事部次長は疑われることを避けるために命じたと言っているが、課長は証拠隠滅になるのではないかと感じていたと答えている。その他については、出席した参考人は文書廃棄について誰も指示をしていないし指示も受けていないと答えている。小塩元常務は文書管理は総務部の仕事であり、ケヤキチームとはリンクしていないので知らないと答えている。情報公開で第三セクターも対象になるので文書の整理を指示したが廃棄は指示していない、近々職を離れると思っていたので整理を命じたことが結果として廃棄に繋がったことは反省していると答えた。
 博多港開発の文書規定は不十分であったので改正したとしている。しかし、文書管理規定として保存区分として1年、3年、10年、永久の4段階であったものを新たに5年を加えたと答えているが保存期間の区分は存在しており、廃棄した書類の内容について把握できないというのは納得できない。
 問題を整理すると
①小塩元常務はケヤキ庭石事件の文書準備の責任者であり、作業の進行管理、連絡・調整、文書作成を担当しており、報告書を作る上で全体の状況を把握して筈であり、総務部での廃棄の事実を知らないのはおかしい。
②どうして総務部の調査をしないのか。当時の総務の責任者を呼ばなければ真相は分からない。
③廃棄した文書の内容を把握していないのはおかしい上、責任者が不明というのはどう考えてもおかしい。
④ケヤキ庭石事件が議会で問題なっており、当然文書保全を図るべきなのに誰も文書管理をしようとしてないことはどう考えてもおかしい。
⑤市長が社長に就任後も文書廃棄が行われており、市長の管理責任はまったく問われていないことはおかしい。市長の自覚は薄い。また、小塩元常務の責任も重いはず。
⑥工事部次長は文書破棄を命じたのは独断でしたというが、どうして海浜公園振興の名前がある書類があると誤解を招くと判断したのか、捜査を意識していたのではないのか、また小塩元常務からの指示ではなかったのかと思われる。
 いずれにしても、文書廃棄は組織的になされたと考えられ、その指示は小塩元常務と考えられるが、参考人は協力的ではなく、100条委員会が必要である。

5)平成15年2月13日の福岡市議会特別委員会の前日に、博多港開発株式会社元社長に内容虚偽の文書を手渡し、暗に会社に有利な証言を求めようとしたことについて
 特別委員会の前に志岐前社長、大庭前常務、小塩常務、事業部長が元社長を呼んで博多港開発に有利な証言をしてもらおうと、想定問答集を手渡したが元社長にが断られた。このことについては小塩元常務は勉強会のためで、証言を強要しようとしたものではないと答えている。しかし、状況を考えれば、どういう意味があるかは歴然としている。

6)平成12年の庭石の購入契約において、支払いを早めるために契約締結を遡及したことについて
 平成12年6月19日に一つ葉技研と契約したが、支払いが7月末日になるため、7月25日の衆議院選挙に間に合わせるために契約日を5月31日と改ざんした。5月26日に稟議の決済は終わっていたが起案者が経理部に預けていたので分からないと言っている。一方経理部は工務部次長から5月中に契約して欲しいという依頼があり、6月19日では決済からの日があきすぎるので5月31日にしたと答えている。しかし、どうして6月19日になって遡るように依頼したのか答えていない。工務次長は大庭元常務の指示で行ったとしているが、原則事後処理は出来ないことになっており、上司の命令とはいえ、疑問に感じないはずはなく、内部告発のシステムがない、不正を見逃す土壌があるのではないかと思わずにはいられない。

7)庭石の購入において、2回目の支払いに間に合わせるために搬入が完了していないのに虚偽の検収手続きを行ったことについて
 売買契約の搬入完了期限であった平成13年2月末日までに搬入が終了していないにもかかわらず、一つ葉技研に納品完了届けを出させ虚偽の検収手続きをした。1月までの搬入の契約が遅れ2月搬入に契約し直したが、さらに遅れることになり、2度の契約変更を避けるために行ったとしている。しかし手続きを行った職員は工務部長に相談したと言っているが、部長は記憶がないと言っているという。誰の指示なのかも不明ということである。当日参考人として工務部長は出席しておらず、真相解明に至らなかった。わずか2年あまりのことをどうして分からないのか。また検収した工務次長は事実を知りながら見逃した。次長は反省の弁は述べるが、真相解明に非協力的だった。

8)平成13年のケヤキ購入において、1回目の支払いを年内に行えるように稟議書と契約書の作成日付を遡及したことについて
 大庭前常務が稟議書を早くあげてくれ、1回目の支払いを年内に支払うようにという指示で、職員は購入稟議書及び契約書の日付を遡らせ、平成13年12月14の契約を同月4日付に改ざんし、博多港開発と大成産業との間でケヤキ100本を9,975万円(性込み)で購入する内容の売買契約書締結し、同月27日、博多港開発は大成産業に対し、1回目の支払いとして福岡地所から入金された残土受け入れ負担金5,000万円より4,987万円を払った。
 改ざんした理由は、購入理由を考えの二時間がかかり起案が遅れたためということである。事前に総務課に決済番号を取っていたので契約が実際は12月14日になったが支払い前1ヶ月くらいあればいいだろうと思い12月4日にしたという。
 ここで問題なのは、
①何故起案が遅れたのか、起案者がケヤキ購入の理由がないと思っていた証拠ではないのか。時間がないため聞けなかった。
②決済番号を事前に取るということが日常的に行われているということであれば今回のような事態が起こってもチェックできないし、感覚的にも麻痺することに繋がる。

9)処分が軽いことについて
 今回、小塩元常務が責任者として証拠隠滅、評価の改ざんに深く関わっていたにもかかわらず、局長職から部長職に降格だけというのは処分が軽いという指摘が多くの議員からなされた。監察室は、平成14年に外郭団体への職員派遣法が変わり、退職して外郭団体へ出向しているときの職員の非違行為については、戻ってきたときには処分できない。出向中の行為が局長としての資質に欠けるということで降格したとしている。
 ケヤキ庭石事件が議会で問題になり、ケヤキチームが組織されたことは、責任者として文書保全に努めなければならなかったはずである。ところが、期限を過ぎたものは破棄するように(これも疑わしい)指示したこと自体が問題であり、かつ志岐前社長が解任され市長が社長に就任した直後も文書廃棄を続けており、小塩元常務が組織的に証拠隠滅させたとしか考えられない。その他、志岐前社長の犯罪に荷担しているとしか思われないケヤキ、庭石の評価の改ざん、虚偽報告を行ったことについては考えれば懲戒免職に値する。
 市長はケヤキチームの多量の文書廃棄について証拠隠滅を図ったものとは見られないとしてかばった。このこと自体が問題であると同時に市長の見識が問われる。また市長が社長就任後の文書廃棄を知り得なかったことは、市長の監督責任が問われる。このことについての自覚が市長にはない。

10)事件が起きる土壌と再発防止について
 そもそもこのような不正が度重なって起こること、また多くの職員が関与しているにもかかわらず事件が表面化しないことに、福岡市の不正を助長する土壌があるとしか考えられない。ケヤキの価格が30万円ということを知っていたのではないかという渡しの質問に、参考人はそれぞれ切りぶかしのケヤキで100万円というのは高いと感じていたと答えている。職員が不正の事実を知りながら、事務処理を行っていた状況は、職員にとっても苦しいことであったと思われると同時に、事実を知らせることが出来ない状況、また積極的、消極的に荷担してきた多くの幹部職員の存在が不正をはびこらせる土壌としてあるといわざるを得ない。
 昨年5月に「職員相談サポート制度」が出来、内部告発が出来るようになったが、この制度は穴だらけである。①対象が職員だけで外郭団体の職員や取引業者が対象になっていない、②相談窓口が監察室か市の顧問弁護士となっており、安心して相談できない、特に上司の犯罪についてはこの体制では相談できない、など問題がある。千代田区のような制度について総務企画局長は司法取引のような制度があり賛同できないと答えているが、いまの福岡市の制度が欠陥だらけであり不祥事再発が防げていないことに反省すべきである。内部告発制度は中野区長や千代田区長が言っているように「職員の品質保証」である。

 今回の特別委員会では真相解明にはほど遠いといわざるを得ない。全ての関係者を召喚しなければ真相解明は出来ない。また、参考人の多くは非協力的であり、100条委員会が必要である。