新福岡空港ストップ連絡会総会

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新福岡ストップ連絡会総会
2005年4月24日(日)
記念講演 「パイロットが語る日本の航空事情」
講師 日本乗員組合連絡会議議長代行 川畑二郎氏

 川畑氏はYS11をはじめ、ボーイング727,767,747を機長として操縦し、国内、海外の航路を飛行している。乗員組合としては空港建設の是非については発言していないことを前提に話しをしていただいた。

1)航空機のメリット
 最近の航空需要は中国への需要が増えており、航空機は小型化している。航空機のメリットは、高速で移動でき便利であること、道路や鉄軌道の管理に比べ飛行場の維持管理だけでよいこと、一方デメリットとしては騒音問題、事故の時には重大な事故となることをあげている。日本の場合は鉄道や道路よりも短時間で目的地へ行ける。航空機と他の交通手段とのネットワークが重要である。エネルギー効率については、乗客一人当たり燃料は40~50㍑で、自動車とあまり変わらない。

2)安全性について
 安全性について、会社は事故が起これば手当てするが安全に関してお金を出さなくなっていると指摘。目につかない安全面にお金を掛けないことが重大な事故の原因となる。乗務員の下請けについても、キチンと訓練されているのか、チームでカバーできているのか、最も危機的状況でそれが問題となる。安さだけを追求すのは問題である。
 操縦士はポリシーマニュアルが作られており、規定、法規の遵守、困難なときの的確な対応が求められている。資格維持は大変厳しく、それぞれの機種毎に年3回の技能チェック、路線でのチェックがなされている。そのため、1年に1機種しか操縦できない。また身体のチェックも厳しく年2回のチェックがなされている。
 空港の安全性の条件として、第一に空港周辺に障害物がないことがよい。山が近くにあると気流の乱れが起きる。また、騒音による航路の規制がない方がよい。施設面としては、滑走路は長い方がよい。長距離飛行の時には燃料をいっぱいに積むため離陸に距離がいること、雨や雪、風などで走行が長くなる。また、飛行場での乗客輸送のバスなどを動かすようなところでは、誘導路の進路を遮り危険である。空港の面積も余裕がある方がよい。航空交通量も少ないところがよい。飛行間隔が短いと翼端でうずき流を生じ後の飛行機に影響を与える。欧米では360度障害物がないところが多いが、日本ではない。古い空港は人家に近いところに造られているが、新しい空港は騒音問題で都市から離れたところの海上や山頂に造られている。福岡空港は最も利便性が高い。これまで、福岡空港は山に挟まれているので横風がないといわれていたという会場の質問に、三郡山地の影響で乱気流があるし、国際ターミナルを西に造ったことでビル風による影響が着陸寸前まであるという。また、三郡山地が視界を遮るため、天候が悪いときは博多湾側から着陸する。南に回ると時間的なロスもあり、追い風での離発着が多くなっている。南側に誘導措置が設置されたが、時間がかかるため通常は有視界飛行で着陸をする。 

3)航空行政の問題点
 航空行政の問題点は、歴史的に蓄積が少ないため、専門家が少ない。また1967年から空港整備5カ年計画」が策定されるようになり、1970年から「空港整備特別会計」が創られ、財源として着陸料、停留料、通行税(89年廃止)を創設。71年には空港援助施設利用料、72年航空燃料税、75年特別着陸料 、89年消費税、00年上空通過料が創られた。この課税負担は航空運賃の約25%を占め、航空会社が代行してチケット料金に入れて徴税している。この特別空港整備会計が91年では4718億円になっており、無駄な空港建設の財源となっている。自衛隊の基地を含めると、日本の空港は130を超えており、これ以上必要ないのではないか。無駄な空港を創らないためにも空港整備特別会計を廃止することも必要ではないかと思った。
 新福岡空港が建設されると現空港が軍事空港として残る可能性については、空域の関係で現空港との併存は無理である。また財政的にも国がお金を出せる状況にはないのではないか。しかし、ゼネコンなど造りたがっている人がおり、力関係なので断言できないといっている。空域の問題で言えば、新北九州空港は宇部、岩国、築城、小月と空港が隣接しており、問題であるが、便数が多く利便性が高い福岡空港に客が流れ利用者が少ないのでやれるのではないかと語った。玄海に新福岡空港が造られれば、芦屋との問題が起こるのではないかということである。これは以前から指摘されていた。
 新福岡空港建設に関連した質問で、福岡空港の場合は追い風15ノットくらいまでは大丈夫だが、問題は横風、特に真横の風が危険である。玄海灘海上は風が強いので、滑走の向きが重要となる。中部国際空港も、滑走路の向きを変えれば問題なかったが、これまでの経緯で岸に沿った埋立のため、西風を受けることになった。冬場が10数便欠航することになるという。

4)今日の航空事情
 福岡空港の現状については、限界に近い付いているのではないかと語った。世界的に国内線は小型機を使うが、日本では空港の滑走路数が少ないため、便数が少ないので大型機が使われる。日本の国内路線は地方と羽田を直接繋ぐ構造になっており、羽田の離発着回数が増えなければ便数は増やせない。そのため、福岡空港は羽田福岡便は大型機を使っており、機材に合わせた運行しかできないため昼間時間に空き席が出ている。海外の空港は土地が広く、障害物がないため360度空域が利用でき、滑走路も4本設置出来き、ロンドン3空港、パリ2空港、ニューヨーク3空港などに隣接した空港があっても運行が出来る。便数を多くできるため、小型機で効率よく運行できる。しかし、日本の場合は山が近くにあり、また騒音問題などから空域が限られていること、土地も広く取れず滑走路も少ないため、便数が増やせない。
 福岡空港が便数を増やしたくても羽田の便数が増えなければ増やせない。羽田に新たに滑走路を造って便数を増やしても他の地方空港も便数増を希望しており、福岡空港の割り当てが増えるとは限らない。福岡空港が限界にきていると言っても、すぐに増えるわけではない状況が理解できた。
 また各国とも空港を大型化し、滑走路数を増やしている。空港建設で経済効果を追求する政策がとられており、バブ空港をねらっている。ロシア上空と中国上空が通過できないため、日本の空港は地理的にいい位置に位置している。現在の航空機の性能から、欧米からアジア、オーストラリアに行くには日本で乗り換えると最短時間でいける。しかし、中国冗句やロシア上空が開放されれば日本はローカル空港になるかの製がある。航空協定は2国間協定のため、後進国は日本に乗り入れをしてがっているが、日本は後進国へ乗り入れを求めていないため、後進国の乗り入れが少ない。現在アメリカが日本の海外路線の6割を占めている。

5)民間機の軍事利用を反対
 空港の軍事利用については、乗員組合でも民間機を軍事利用することに反対している。航空条約でも民間機を軍事利用することを禁止している。民間機を軍事利用すれば、敵の攻撃目標とされ、民間人を戦争に巻き込むことになる。ガイドラインにおいて民間機を軍事利用することが示されているが、空港そのもの軍事利用は別の問題ではあるが民間機の軍事利用は本質的に問題である。

 以上、さまざまな視点から航空事情を語ってもらった。