二枚舌の山崎市長

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 ケヤキ庭石裁判で、1999年に山崎市長が行った人工島の点検で、博多港開発(株)によって当初作られた「200億円の赤字」という収支予測が、福岡市の指示によって「43億円の黒字」になるよう改ざんが指示されたことが明らかになりました。
 当時、「人工島点検」を点検する会では、福岡市の資料を基に地価下落の状況から「270億円」の赤字なることを予測し、福岡市に事業見直しを求めていました。しかし、福岡市は土地処分期間を7年から15年間に延ばすことで40億円の黒字になるとして公表しました。地価下落が続き最終的には銀行は採算の見通しがないことから福岡市に396億円で博多港開発第2工区の埋立権を買わせ、福岡市が直接埋立を行うという、私たちの見通し以上にひどい結果となりました。この396億円により銀行団は博多港開発の貸付を「無事」回収したのです。
 当時既に銀行の不良債権処理が進められており、人工島事業の採算性についても厳しく査定査定されていたと考えられます。山崎市長が見直しの結論を出したわずか数ヶ月後の2000年3月には旧日本興業銀行が「このまま事業続けると100億円の赤字になる。福岡市が損失補償をしなければ融資できない。」と融資を拒否しています。さらの同年4月には新生銀行が融資打ち切りを通告し10月には融資をやめています。それに引き続き、あおぞら銀行、鹿児島銀行が融資を引き上げました。博多港開発と福岡市は融資継続を幹事行の福岡銀行に頼み込み、2001年12月28日にようやく融資条件が整い、新事業計画なるものが作られたのです。その内容はまさに福岡市が損失補償をするというものです。土地張り付き約定返済(決まった期日に決まった土地を売り、返済する)による福岡市の土地購入、博多港開発が予定の価格で土地処分が出来なくて返済が滞らないよう200億円の博多港開発への緊急貸付枠を福岡市が予算化する、福岡市の30億円の増資、更に博多港開発の第一工区の土地全てに銀行の根抵当権が設定されたのです。そして、最終的には第2工区の福岡市による直轄化です。銀行団が見越していたように、地価下落が続き博多港開発は予定価格で土地処分が出来ず、福岡市から87億円を借りる事態が生じました。
 今私は福岡市に1999年当時の人工島見直しに関する全ての資料と、3度に亘る計画変更にともなう融資銀行との契約書および覚え書き等について資料請求をしています。しかし、銀行と博多港開発との融資契約および覚え書き等は博多港開発と福岡市における情報公開の協定に入っていないので出せないと答えています。しかし、福岡市の税金が投入されている事業について情報公開しないことは許されるばずがありません。再度請求しています。
 山崎市長は1999年の点検時の改ざんについて、「当初から事業継続を前提としており、継続の是非を市民問うつもりはなかった」と語っています。市長選挙の公約では「引き返す勇気を持って見直しをする」と言っており、まさに市民をだましたとしか言いようがありません。いま子ども病院と市民病院を統合して人工島に新病院を移転することについてパブリックコメントを募集していますが、何のためにパブリックコメントをしているのでしょうか。市民を馬鹿にしているとしか言いようがありません。また、いまの事業計画も全く信用できないものです。
 私たちは以下のように山崎市長に公開質問状を出し、市長自ら説明することを求めました。

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                            平成17年7月20日

人工島事業の「収支予想改竄」についての質問状

   福岡市長 山崎広太郎 殿
                   「人工島点検」を点検する会 代表 荒木龍昇
                        博多湾会議  事務局長 脇 義重
                        博多湾市民の会 代表  安東 毅

 1999年の人工島事業の点検作業の中で、当初作成された「200億円の赤字」の収支予想が福岡市の指示によって「43億円の黒字」に訂正されていた事実が明らかになった。
 また、山崎市長はこの問題について「当初から事業継続を前提としており、継続の是非を市民に問うつもりはなかった」と発言している。
 いずれも、「情報の公開」「市民との対話」を信条とする市長の政治姿勢と矛盾するものであり、私たちは以下の点について市長の説明を求めたい。

1. 当初の収支予想のどの項目をどのように修正したのか?
   収支予想は事業継続の是非を判断するに当たっての要となる情報であり、できる限り実態を反映させたものでなければならない。収支のシミュレーションは不確実な将来に備えて起こりうる事態を予想するためのもの、あるいは政策努力による収支改善の可能性を探るために行われるものであって、政策を正当化するために数字を操作するのはシミュレーションの目的を踏み外している。本来、政策判断の材料として利用されるべき収支予想が、市民を欺くための材料として使われることになるからである。
   福岡市は、1999年の事業点検に当たり、何の目的で収支予想の訂正を指示したのか説明する必要がある。その際、当初の収支予想、第1回目の修正結果、第2回目の修正結果(公表値)を収支計算の前提資料とともにすべて公開し、何をどのように修正したのか、説明していただきたい。

2. 市長は市政上の重要な問題について市民の声を聞く気持ちがあるのか?
   市長は、収支予想の訂正に関連して「人工島事業は点検時からやらなければならないと思っていた」と発言している。しかし、これは大規模事業の点検を公約に掲げ、情報の公開と市民との対話を訴えて当選した市長の政治姿勢と明らかに矛盾する。
   情報を広く公開して市民の市政への認識を高め、議論を重ねながら意思決定をしていくのが地方自治、そして民主主義の根幹ではないのか?市長自身が1998年の選
 挙時には「市民との対話から知恵と決断が生まれる」と訴えたではないか。公約実現の第一歩であったはずの事業点検時に、なぜ市長は市民への情報提供を拒み、対話の道を閉ざしてしまったのか。しかも点検結果も待たずに事業の継続を決めていたのでは、市民は騙されたも同然である。
  「情報公開」「市民との対話」という政治信条は放棄してしまったのか、市長の考えをお尋ねしたい。
  また現在、人工島への市民病院の移転・統合をめぐってパブリックコメントを募集しているが、いったい何のために募集しているのか、市民の意見を聴いてそれをどう政策に反映するつもりなのか、あわせてお尋ねしたい。

3.改めて人工島事業の収支予想を説明せよ。
「黒字の収支予想」に基づいて継続された人工島事業は、その後当初の赤字の予想をもはるかに上回って業績が悪化し、今年の2月、博多港開発㈱は400億円の負債を残して事業の福岡市の直轄事業化(=市税による債務の負担)する事態に陥った。政策判断の材料として真剣に検討されるべき収支予想を、市民・議会を欺くための恣意的な材料としてしか位置づけてこなかったことの結果である。
このようなことを繰り返さないために、改めて実態を正確に反映させた人工島事業の収支計画(博多港開発㈱、臨海土地整備事業、港湾機能整備事業、直轄化した事業)を市民に説明することを求めたい。その際、収支計画が実態を反映したものとなるように、2002年春に発表された博多港開発㈱の「新事業計画」を現在までの実績と対比させて公表することを求める。これまでの計画と実績との差異を検証することによってのみ、収支予想は政策判断の材料としての意味を持つことができる。

以上3点について市長に公開の場での説明会を開催していただくよう求めます。ただし、3.については収支計画の作成に時間を要する可能性があります。収支計画の作成についての今後の方針、2002年時の「新事業計画」の実績との差異についてとりあえず説明していただきたいと考えます。
回答を8月1日(月)までに下記までご連絡ください。

              連絡先
  福岡市中央区天神1丁目15番6号
                 人工島点検を点検する会
                        事務局  中尾卯作