第4委員会調査報告

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2005年8月24日(水)~26日(金)
24日(水):仙台市:支えあうこれからのまちづくり
25日(木):東大阪市:耐震・防災機能を備えた市総合庁舎
26日(金):神戸市:阪神淡路大震災の復興の取り組み

24日(水)
仙台市:支えあうこれからのまちづくり
 仙台市臥床し・高齢化社会に向けて試験的に建設した「新井市営住宅」について調査した。仙台市の市営住宅の状況も福岡市同様に需要は多く、平成16年度の競争率は17.5倍となっている。管理戸数は9,465戸であるが、基本的には増やす計画はなく建て替えを進めている。今回の新井市営住宅も、軌道系沿線を中心に集約的な建て替えを進める集約型市街地形成の一貫として土地区画整理事業の保有地を購入して建てられたものである。1LDK35戸、2LDK11戸、3LDK4,床面積34.2~56.9㎡の計50戸である。このうち取り壊しとなった2団地30世帯の内17世帯が優先的に入居、残り33世帯が公募であった。この団地の特徴は、周辺地区が低層地域であることから3階建て、6棟がブドウの房のように繋がり、それぞれの階の公共空間(集会所)とオープンスペースが設けられている。1階部部には中庭形式の市罰と植木の空間と駐車場が設けられている。部屋は30センチメートルの厚さの壁のみで、壁面はコンクリート打ち抜き、フローリングで間仕切りがない。いわゆるスケルトンタイプとなっている。コンクリート造りであるが、外部断熱をしているので苦情はないと言っている。
 住宅建設に当たっては、東北大学に委託し、入居者のワークショップを10回重ねてきた。住宅の利用や自治組織、助け合いについて協議をおこなった。また、2組の親子世帯募集も行った。少子・高齢化社会での親子の助け合い、子育て支援、住民通しの助け合いが出来ることを目指している。親世帯と子世帯はインターホンで繋がっており、何かあるときには対応出来るようになっている。またバリアフリーということでエ東大阪市:耐震・防災機能を備えた市総合庁舎レベーターを設置している。それぞれの階に集会所や共用のベランダを作るなど公共空間を増やすことで、住民同士の出会う仕掛けになっている。
 現地を視察したが、全体手にはゆったりとして開放的であるが、部屋は狭いことは否めない。また、スケルトンタイプであるため高齢者の人気がないことも理解出来た。住民の移動がある中で、住民同士のつながりを今後もどのように維持するかが課題と思われる。建設費は1戸当たり1500万円ということで、オープンスペースが多い分やや高いと思われる。

25日(木)
東大阪市:耐震・防災機能を備えた市総合庁舎
 東大阪市の人口は51万人、21万世帯、職員数4,569名。平成15年3月に新庁舎を完成。地上24階、地下2階、高さ115.8m。建て幅52.8m、横幅44.8mである。総事業費212億円。
 防災拠点としての設備について調査した。非常時における電気設備の対応として、特別高圧2回線受電により、いずれかが断線しても受電出来るようにしている。また、最悪両回線が断線した場合のために非常用発電機を設置。1200kw、ガスタービン発電機を4階に設置(水没しないように)、燃料は3日分を備蓄している。6階にはコンピューター室があり、停電時の電源切り替えのため飲む停電電源装置が設置されている。配管等は耐震仕様になっている。23F、10F、1F、B2Fの4箇所に加速度計を設置し、地震の影響を中央監視室で観測出来るようにし、制震壁への影響を考察出来るようになっている。10階に危機管理室が設けられており、24階に防災無線等設置され、危機管理室から遠隔操作出来るようになっている。地上には気象庁の地震計が設置され、気象庁にデーターが送られる。
 庁舎の耐震構造は、四隅にコンクリート充填鋼管柱(CFT柱)で耐震強度を保ち、建造物上部に四隅の柱を固定するハットトラストを設置することで曲げの変形を抑制、極軟鉄綱制震壁で曲げの力を吸収する構造になっている。最大層間変形角は1/125以下に設計されている。基礎は杭頭鋼管巻場所打コンクリート基礎(杭頭に16~19㎜の綱板を巻、杭がおれないようにしている。)とし、地価42mの洪積砂質土に基礎を打っている。6階のコンピューター室は部分的に免震構造にしてコンピューターを保護している。 精神構造になっているが高層階は揺れは大きい。先日の仙台の地震の際、東大阪市は震度4であったが、22階では22㎝の揺れがあり立っていられなかったという。22階では震度7になると160㎝ほどの揺れになるとされ、かつ構造上揺れる時間が長くなると言うことである。
 制震壁は力を吸収するために軟らかい綱板を使っており、震度5でシワが出来、震度7になるとつぶれる。ユニットで取り替える構造であるため、補修がすぐ出来ると言うことである。CFT柱は1/125の層間の曲がりしかないため、劣化しないと言うことであった。
 危機管理室は非常時の対応を考えると低層が好ましいと思えるので10階にした理由を尋ねた。10階にした理由は市長および助役等の部屋が10階にあるためと説明された。建設費は、通常の工法と大差ないため、特に高くなってはいないということであった。
 水回りについては、飲料水は浄水を使い雑用水は工業用水を使う2ウェイにしている。災害時の場合にそなえて緊急遮断弁をつけた受水槽を地価2階に設置しており、災害対応職員の必要量3日分(28トン)を確保出来るようになっている。また、地域住民のために飲料水を100トン確保出来る緊急遮断弁をつけた受水槽が敷地内に設置されている。このような施設は市内に5~6箇所設置されている。
 排水処理については、排水放流又は搬出可能な7日分(400立米)の汚水緊急貯水槽を地価に設置している。機器・配管についても全て耐震仕様となっている。防火設備もそれぞれの場所にスプリンクラー、消火器等設置、100トンの防火貯水槽も設置されている。
 制震構造の庁舎は、建造物を倒壊させないように揺れることで力を吸収する仕組みとなっている。そのため高層階の揺れは大きく、揺れる時間も長くなる。備品等は固定しているというものの、地震の際には大きく揺れるため被害が多きと考えられる。またエレベーターは地震時には最寄りの階に緊急停止出来ると言うことであるが、ドアの故障等でコンピューターの誤作動が起こる可能性があり、閉じこめられる危険は0ではない。これらのことを考えると、高層建築が本質的に抱えるもので、市庁舎頭を超そう建築にすることの是非を検討する必要がある。特に、東大阪市の議会棟は18階以上にあり、議会開催時に大きな地震があれば、東大阪市政が止まる可能性がある。

 22階の極軟綱制震壁を見学した後神戸へ移動。神戸市の防災未来センターを見学。1995年1月17日の阪神淡路大震災当時の様子と復興への足取りを生々しく伝えており、地震の備えについて大いに参考になった。

26日(金)
神戸市:阪神淡路大震災の復興の取り組み
 神戸市議会棟にて説明を受け、その後質疑に入った。神戸市は震災以来打撃を受けた経済の立ち直りが進まず、当時2500億円の市税収があったが今なお2000億円しか市税収がない状況という。財政再建に向けて市職員を10年間で2000人削減するとしており、市営バス約900名の職員の内450名を嘱託にする計画を、2期に分けて進めている。
 震災復興の内、特に住宅再建、耐震調査、公共施設の耐震調査について質疑をした。
1、マンションの再建について
 大規模な被害を受けたマンションは約70棟、そのうち建て替えが必要となったものは54棟、そのうち建て替え終了は51棟、建て替え中は1棟、未着工は2棟となっている。未着工のマンションは、いずれも入居者が一旦建て替え決議をしたものの、補修を主張する住民が建て替え決議無効を訴え訴訟になったためである。1件は平成13年に1審で建て替え決議無効の判決が出され、控訴を断念したために確定し再度協議して平成16年から建て替えの準備に入った。もう1件は平成9年に1審、平成12に年2審で建て替え決議は有効という判決が出され、平成15年に最高裁所で控訴棄却の判決出され建て替え決議有効が確定。その後抵当権の解除などの整理作業中ということである。しかし国の補助事業である「有料建築物等整備事業」の期限が迫っており、市として早く再建にはいるよう勧めていると言うことであった。
1)制度的な支援策
 市のマンション被害支援策は、平成7年2月14日から1ヶ月間、「神戸市分譲マンション補修建て替え登録相談センター」を作り、専門家グループと市職員で、補修・建て替えの相談に応じた。7月7日からは「こうべすまい・まちづくり人材センター」による専門家派遣制度を創設、補修か建て替えかの検討の合意形成の支援を始めた。平成7年3月には「被災区分所有建築物の再建等に関する特別措置法」が公布され、5分の4の賛成で建て替え可能となった。平成7年4月から「神戸市震災復興総合設計制度」を創設し容積率や斜線規制を緩和することで、既存不適格マンションの建て替えが出来るようにした。
2)財政的な支援策
 平成7年2月に「神戸市震災復興住宅特別融資」を創設し、マンション教養部の補修にも融資が適応されるようになった。12月には阪神・淡路大震災復興基金で「被災マンション共用部分補修支援利子補修制度」を創設、翌平成8年10月に限度額の増額など制度拡充がなされた。また建て替えについては平成7年7月に阪神・淡路大震災復興基金に「被災マンション建て替え支援利子補給事業」が創設された。
3)建て替え事業に対する補助
 国の制度である「有料建築物等整備事業」等を特例措置として活用が出来るよう国に要望し、平成7年7月に予算措置をした。特例措置として、区域面積等採択の要件の緩和、補助額を対象事業費(調査・設計費、解体費、公共部分など)、の2/3から4/5に拡大、共同施設の算定方式の特例(全体の2割ぐらい)などである。この事業の対象要件に満たないマンションには平成9年度に阪神・淡路大震災復興基金に「小規模共同建て替え事業補助」制度を創設して、建て替えするマンション全てに特例措置ないし特例措置相当の補助がなされた。しかし、直接的な再建支援金のようなものは支給されていない。
4)建て替えの方法
 建て替え方式には、住民自ら行う自主再建方式、ディベロッパーに行政や金融機関の高所など事業を委託する事業代行方式、一旦全ての権利をディベロッパーに譲渡する全部譲渡方式がとられた。自主再建や代行方式ではダブルローンの問題が起きるが、全部譲渡方式ではローンは残るが再建のために新たな借り入れはしなくて済む。全部譲渡方式はディベロッパーの全ての権利を譲渡するため、元の建物に戻りたい人は買い戻すことになる。また権利を全て譲渡するために、抵当権の解除など法的な整理が必要となる。いずれにしても厳しい選択が迫られることになる。

2、耐震診断について
1)耐震診断の実施状況
 旧建築基準法で建てられた耐震診断が必要とされる住宅は戸建て住宅で約82,700戸、共同住宅で約36,400戸。そのうち平成16年度まで耐震診断がなされたのは、戸建てで1,042戸、マンション511棟14,471戸、長屋21戸である。戸建てでは1%程度、マンションで40%程度である。
 耐震診断が進まない理由は戸建ての場合は高齢者が多いこと(60台30%、70台39%)にある。また高齢者の一人暮らし14%、二人暮らし47%、また建て替えるには費用が掛かるとしている人が約40%、リフォーム時に考えるという人が約30%と、建て替えてまで住み続ける可能性が少ないことも考えられる。また高齢者が多いこともあり、制度の案内が充分に行き渡っていないことも指摘されている。マンションでの耐震診断は費用が掛かるため、住民の合意が取りにくいことにあると思われる。

2)耐震診断の補助制度
 耐震診断の補助制度は平成14年度まで派遣が無料で行っていたが、その後県は事業をやめたため神戸市が独自で行っている。市が派遣する専門家が簡易診断を行い、検討結果を住民に郵送で通知する。基本的には費用の1割を住民が負担することになっている。戸建ての場合はこれまで郵送であったので、1件3万円かかるので1割3千円の負担であったが、郵送の通知ではよく分からないということで平成17年度から建築士が直接結果を持参し説明することとしている。そのため費用は5万円になったが、とりあえず3千円の負担にしているということであった。平成17年度から件が事業を再開したので、無料化も検討しているという。県の補助は、1件3万円としてそのうち1割を住民負担にするということなので、市への補助額は2700円の1/4が補助金として受け取ることになる。

3)耐震補強について
 耐震診断は進んでいないが、耐震補強も進んでいない。補助制度としては、県の制度はあるが神戸市としてはない。県の制度は耐震診断によって基準の1.0以下の建物を1.0以上にする場合に補助がなされる。戸建ての場合の補助額は、かかる費用が200万円以下が30万円、200万円以上300万円未満は40万円、300万円以上は50万円補助されるとなっている。マンションの場合は共同部分の補修が1戸当たり50万円以下の場合は1戸当たり7万5千円、1戸当たり50万円以上75万円未満は1戸当たり10万円、1戸当たり75万円以上は1戸当たり12万5千円が補助されるとなっている。
 
3、公共施設の耐震診断
 公共施設の耐震診断は一般施設で140施設の内6施設、小中学校1241棟の内32棟が耐震診断が終わっていない。耐震診断が終わっていない施設は17年度中には終わらせると言うことであった。耐震診断の結果、一般施設の耐震性が認められている施設は73施設70%、小中学校の耐震性が認められる施設は426棟44.9%である。小中学校の耐震化は10年掛けて実施するとしているが、ペースをあげるためにはじめの5年間で8割実施を考えていると言うことである。小中学校の地進化には1箇所約1億円、内装等を考えると2億円かかり、耐震化には大きな費用が掛かるので、消防署の建て替えなどは予算上すぐには難しいと答えている。避難所等の耐震化も決して進んでいるようには見えず、震災後10年を経過しているが、耐震化を進めてきたとは言い難い。財政難は理解出来るが、どこに優先的にお金を使うのか、神戸市のあり方が問われている。

4、おわりに
 福岡市同様、神戸市でも必要がない神戸空港建設やポートアイランド第二期埋立などに多大な税金をつぎ込んでおり、阪神淡路大震災の教訓は何だったのか、首をかしげざるを得ない。福岡市は神戸市を見習わないよう、震災復興と震災対策に優先的に税金を使うよう求めていく必要性を改めて感じた。