地域包括支援センター調査

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早良区地域包括支援センター
2006年7月14日

 三浦唐津市議と共に早良区役所にある地域包括支援センターを訪問し、福岡市の地域包括支援センターの運用状況について調査した。
 介護保険の見直しが行われ、本年度4月から地域包括支援センター設置が各自治体に義務づけられた。これまで福岡市は総合相談窓口として各区の保健福祉センターに「在宅ケア・ホットライン」を設置して対応してきたが、国の制度見直しにより区役所内に直営の地域包括支援センターを設置、区の人口比に応じてエリアを分けて委託の地域包括支援センターを配置している。市内全体では28ヶ所、早良区は直営センター1ヶ所、委託のセンター3ヶ所となっている。直営の地域包括センターには保健師2名、ケアマネージャー1名、社会福祉士1名、ケアマネージャーの資格者3名、事務2名の計9名となっている。委託の3ヶ所の各センターの構成人員は保健師1名、ケアマネージャー1名、社会福祉士1名の計3名なっている。早良区では医師会に2ヶ所、社団法人福祉公社に1ヶ所が委託されている。直営の地域包括支援センターが3ヶ所の地域包括支援センターの運営の相談や市の福祉関係業務との繋ぎをしている。
 増え続ける介護保険費用を抑制するために国の介護保険制度の見直しが行われ、予防を重点にするとして要介護や要支援の認定の恐れがある方(特定高齢者)を見つけ出して予防等のの訓練等を行う、また介護認定の区分を見直し、新たに要支援Ⅰ,要支援Ⅱを設けて介護予防訓練をすることとしている。地域包括支援センターの業務はこれまでの相談業務と要支援者のケアプランをつくることになっている。介護保険支給額が増え続けていることから国は介護保険制度の見直しを行い、介護認定基準を変えて介護認定の見直しと同時に介護給付の引き下げをしている。これまで要介護1に認定されていた方が要支援Ⅱに下げられる、給付が削減されるなどが生じており、対象者からの多くの苦情で現場は暫く混乱していたということである。センターの委託料は従来の「在宅ケア・ホットライン」が行ってきた相談業務等の委託料と要支援者のケアプランの作成費となっている。その財源は自治体への介護給付費の2%から支出される。特定高齢者施策についても同じ介護給付費2%が財源となる。
 福岡市では今年4月から制度が始まったが、準備期間中に事業者登録ができないこと、引き継ぎ時間がもてないことなどから多くの混乱が生じた。地域包括支援センターの設置は全ての自治体に設置が義務づけられたが、制度が始まった後に10月までの経過措置がつくられたが、混乱がひどいことから更に来年3月まで延長されることになった。福岡市ではこれまで総合相談窓口としての「在宅ケア・ホットライン」事業の蓄積が役に立っている。また、直営センターを各区区役所に設置していることで現場の状況を把握でき、より適格に対応できていると思われる。また、委託のセンターは、地域への訪問業務、ケアプランの作成、相談業務となど3人での業務量としてかなりきついと思われる。
 これまでの経緯から、地域包括支援センターの業務のうち要支援者のケアプラン作成の多くは居宅介護事業者(ケアプランをつくる事業者)委託されている。センターへのケアプラン作成費は1件4400円、居宅介護事業者へは3300円で委託されている。要介護者のケアプラン作成費は1件8000円とされており、ケアマネージャーは現在50人までしか担当することはできない。国はこれを35人減らすとされており、更に要支援者は8人までしか担当できないようにしている。担当件数は要支援者は要介護者の0.5人として換算されるため、要支援者を最大8人受け持ったとすると、要介護者の受け持ちは31人までとなる。ケアマネージャーの収入を単純に計算すると28万円から27万4400円になり、事務所経費等を考えるととても自立できない。一部の大手施設が居宅介護事業者を施設内に置き、目一杯に自己の施設を使わせることで儲けていることが問題になっているが、実態は介護事業の従事者は身分が不安定で給与も安いことが介護の質を落とすことに繋がっていると思われる。大手施設のようなことをなくすために、ケアプランをつくる場合同じ居宅介護事業者が同じ施設を1/2以上を使うことができなくしているが、大手使節同士の談合が行われるのではと思われる。
 特定高齢者施策が義務づけられているが、医師会、民生員などの情報も少なく、現時点では対象者は非常に少ない。特定これ医者施策はこれまでの一般施策としての健康づくりや転倒防止要望などの講習をしてきたこととの整理が必要となる。
 介護保険の見直しは費用削減が目的であり、さまざまな負担が被保険者、事業者、行政にきている。昨年の10月からの新たな食事代と住居費の負担、予防措置に重点化と称して基準の見直しと給付の引き下げ、介護保険料の引き上げに加えて、年金給付の引き下げと国民健康保険料の引き上げ、制度破綻に近づいていると思われる。介護従事者の身分も不安定で給与は低く、介護の質の低下が進むのではと危惧される。保険制度ではなく税による制度へ、介護従事者の安定した身分の確立と暮らしていける給与の確立など制度の抜本的改革の必要性を改めて感じた。