決算特別委員会(意見開陳)

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2006年10月20日(金)
各会派意見開陳の後採決をした。

決算特別委員会意見開陳

 2005年度決算において過去5年間の一般会計における歳入を見ると、市税収は頭打ち、「三位一体の改革」により地方交付税は削減され、歳入は頭打ちの状況が続いています。歳出においては扶助費は伸び続けているものの、人件費や投資的経費を抑制する一方、保健福祉費や教育費を大幅に削減し市民に対する負担を求めた結果、歳出の伸びを抑えることが出来ています。これは、財政健全化プランに示されているように、重点政策として破綻している人工島など大規模開発に資金を集中し、一方で各局予算を毎年10%程度削減させ、市民サービスの切り下げと市民への負担を求めた結果といえます。しかし、経常収支比率は0.1ポイント改善されたとはいえ、91.1%と高水準であり、財政硬直化の状況は改善されていません。2002年に942億円あった財政調整金は、大型開発事業を進め取り崩され2005年度末で73億円しかありません。まさに崖っぷちの財政状況です。
 国の長期債務は6月時点で823兆円といわれ、短期借り入れ等含めれば既に国民の借金は1千兆円を超えています。国は「三位一体の改革」に引き続き、交付税・補助金の削減、補助金の一般財源化と所得税から地方税へと税源移譲を行うとしていますが、実質的には地方への税配分を削減しようとしてます。同時に、これまでのように地方財政について全面的に面倒見ることをやめる方針です。市税収は今後も増える見込みはなく、地方への税配分を削減する国の動きの中で、歳入不足が続く厳しい財政が予測されます。
 2005年度末の市債発行残高は2兆6690億円余、前年度の2兆7092億円余に比べ400億円ほどの減少となっていますが、外郭団体に対する市負わなければならない債務は815億円と増えてます。起債制限比率は前年度17.9%から18.1%へ上昇、今年度から新たに導入された実質公債費比率は21.9%、全国の都道府県、政令市の中で4番目に悪く、福岡市の財政は極めて悪い状況にあります。これまでゼロ金利政策により借金が増えることを抑制できていましたが、ゼロ金利政策が解除され、長期金利が上昇し始め、また自治体の財政状況に応じて金融機関の貸出金利に格差が生じる動きが出ており、毎年2500億円前後の借り換えを行っている福岡市では、金利の上昇が市財政を更に逼迫させることが予測されます。過去の借金があまりにも大きいためにわずかな金利変動でも影響を受けます。福岡市の財政は今後とも脆弱な状況を脱することができるとは考えられません。
 景気が回復したといわれながら、一部の大企業を除いてその実感はなく、リストラと正規職員の削減による企業業績の回復は、失業者と非正規労働者を増加させ、勤労者の所得低下をもたらし、生活保護世帯の増加という社会状況を作り出しています。加えて、さまざまな控除の廃止や定率減減税に廃止などの税制改悪によって、収入が増えないのに税負担が重くなっており、更に追い打ちをかけるように年金給付の削減、医療費の負担増、介護保険のホテルコストの負担、障害者自立支援法施行による原則1割負担、と市民生活は一段と苦しくなっています。財政再建策として受益者負担の適正化と称し、昨年は下水道料金の値上げ、ごみ処理有料化、今年は高齢者医療助成の廃止、留守家庭子ども会の有料化、介護保険料の値上げ、国民保険料の値上げと市民の負担は年々重くなっています。市民の生活が苦しくなっていることは国民健康保険料の収納率の低下にも現れています。このような市民生活が困難さを深めているにもかかわらず、市民に負担を求めることで財政再建を進め、これ以上借金を増やすことが出来ない状況でありながら、なぜオリンピック招致を行い、オリンピック招致を口実に須崎埠頭の再開発をしようとしたのか、市長の見識が問われます。
 今後も地方分権が進み、福岡市の市民生活の安心安全を図る責任が一段と重くなっています。しかし、福岡市において市民の安心安全が図られているでしょうか。昨年の西方沖地震により警固断層による直下型地震の可能性が高くなっているにもかかわらず、財政難のために学校施設の耐震化が遅れています。民間住宅の耐震化も進んでいません。図書館や児童館を増設してほしい、学校司書を増してほしい、保育園の待機児童の解消してほしい、特別養護老人ホームを増やしてほしいなど、多くの市民の要望も財政難を理由に実現できていません。住宅についても、市営住宅の応募率は20倍と高水準にあり、また入居者の所得階層も第1階層が年々増えており、安価で良質な住宅が求められていますが、市営住宅を新たに増やす計画はなく、住宅政策の見直しが必要です。このような状況であるにもかかわらず、山崎市長は「オリンピック招致だけならお金はかからない」と云い、2005年度予算では4900万円を流用しました。そして、「これ以上無駄な公共事業はやめてほしい。これ以上税金の無駄遣いはやめてほしい。市民のために税金を使ってほしい。」という多くの市民の声を無視してオリンピック招致を進め、5億円のもの無駄遣いをした、市長の責任は極めて重いものです。
 大規模開発による都市の活性化を図る手法は時代遅れであるだけでなく、市民生活も環境も破壊し、将来の世代に大きなツケを残すだけです。山崎市政における財政再建のあり方そのものを転換しなければいけません。都市膨張政策を進め、必要もない水源開発を行い、破綻した人工島をはじめとして開発事業に重点的に予算を配分し、市民に負担を求めることで財政再建を図る2005年度決算を認めることは出来ません。資源・エネルギーの限界がみえ、地球環境は経済成長を支えることが出来なくなっている今日、経済成長を求めることなく、持続可能な都市へ政策転換すべきであることを申し添えて意見開陳を終わります。