人工島見直しについての申し入れ

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 12月議会においての吉田新市長の答弁は公約からの後退を感じました。博多湾会議として、具体的な人工島見直しについての市長の考えと検討委員会設置について申し入れをしました。

                             2007年1月24日

福岡市長 吉田 宏 様

                             博多湾会議 
                             代  表 荒木龍昇
                             事務局長 脇 義重
 

            人工島事業見直しを求める申し入れ

 吉田市長は人工島事業を見直すと公約して市長に就任しました。そこで、どのように見直しをするのかお尋ねし、人工島事業検討委員会を設置し人工島事業を抜本的に見直すことを申し入れます。2月5日までに書面にて回答してください。

1、市長はどのように人工島事業を見直すのかお尋ねします。
 東京都の臨海副都心、横浜市のみなと未来21,大阪市の夢洲、咲洲、舞洲、神戸市のポートアイランド第2期埋立など、全国各地の状況を見ても埋立地の土地処分の見通しには厳しいものがあります。
12月市議会での市長答弁を聞いて、市民が求めている人工島見直しが実現するのか不安にかられ、吉田市長は全国の自治体が行っている埋立事業の実態、港湾物流の現状について理解し、人工島事業の現状を正しく掌握し適切な対策を採られるのか疑問を抱きました。人工島事業は大幅に遅れており、更に竣工した土地の売却処分も進んでいないのが現状です。経済構造が大きく変わり、土地需要そのものがない中で、人工島の広大な土地処分が今後も進むとは考えられません。港湾計画での人工島の完成時期は当初計画の2004年が2011年に延長され、土地処分計画は計画通り進んでも2027年となっています。現在全体で53%しか竣工していない現状を見ると、その後の人工島埋立事業そのものも2011年までに終わるとはとても思えません。
 山崎前市長が人工島の点検をした1999年時点では融資銀行の多くは融資を凍結、その後新生銀行、鹿児島銀行、あおぞら銀行は融資をやめました。融資銀行団は人工島を不良債権として評価しており、人工島事業そのものは既に破綻状態でした。このような状況において、無理矢理事業を進めるために2001年3月に山崎前市長が銀行団に「決して損はさせない」と念書を書き、同年7月には市長立ち会いの下、博多港開発と銀行団との融資協定書が結ばれ、福岡市が具体的に損失保証しました。
そして2002年には人工島事業計画を大きく変更しました。新計画では博多港開発が決まった期日に決まった土地を売却し、売れない時は福岡市が購入、道路や下水道、公園は市が公共事業として整備し、事業費を引き下げ、土地の売却単価を下げる、もし博多港開発が銀行に返済出来ない事態が起これば福岡市が博多港開発に貸付、銀行には必ず返済をさせるというものでした。実際、売れない土地を市が買い取り中央公園を造り、住宅地は市住宅供給公社に買わせ、博多港開発への貸付金として毎年200億円を予算化する(2003年には87億円を貸し付けています。)など税金が次々と投入されました。それでも土地処分の見通しが付かないために、2005年2月には博多港開発第2工区の埋立権を市が396億円で買い取るに至ってます。博多港開発工区には既に1000億円ほどの税金が投入され、今後事業を継続するためには更に1000億円もの税金が必要と考えられます。市民病院や子ども病院を人工島に移転させる理由は、福岡市が銀行に損失保証するために必要もない土地を買わなければならないからで、子どものためでも市民のためでもありません。多くの市民は人工島への移転に反対しています。
 港湾整備のあり方も見直しが必要です。博多港には大型船の入港は減っており、上海便や釜山便など近距離の小型船舶の利用が増えています。これは博多港がフィーダー港化していることを意味しています。大水深岸壁を作れば大型船が寄港する訳ではありません。港湾局長は世界のコンテナ船は大型しているから大型船が接岸できる岸壁が必要と言っていますが、コンテナ船が大型化すればするほど効率化のために寄港港は減り、博多港への大型船の寄港は減ります。博多港は釜山や上海に30分の1程度の規模でしかなく、ハブ港湾の機能はありません。加えて世界の工場である中国からは近距離であり、しかもRORO船に見られるように流通形態が小規模多品種、生産地での仕分けとなっており、港湾における上屋やガントリークレーン、コンテナヤードなど港湾施設も不必要になっています。つまり、港湾間連用地の需要も見込めないのです。
 アジアビジネス構想も破綻しており、博多港開発第1工区の土地処分も計画通りに進むとは思えません。市第5工区(旧博多港開発第2工区)の造成を進めても土地処分の見込みはありません。市工区についても埋立がいつ終わるのか、土地処分が進むのか全く不透明です。経済構造の変化を見れば土地需要もなく、港湾整備も過剰投資になることは明らかであり、人工島事業は破綻していると見切りをつけるべきです。
 昨年の市長選挙の最大の争点はオリンピック招致とそれを口実にした須崎埠頭再開発の是非でした。結果は「これ以上無駄な開発は止めてほしい。これ以上無駄な税金を使わないでほしい。市民のためにもっと税金を使ってほしい。」という市民の声が山崎前市長を落選させることになりました。吉田市長は昨年12月の議会で、「心耳をすまして市民の声を聞いて市政を行う」と挨拶し、「無駄な開発はしない。市民のための公共事業を行う」と答えています。しかし、人工島の具体的な見直しについては、「住宅地区は整備する。」「港湾地区は整備する。」「市第5工区は使途が決まっていないので見直す。」「病院移転については人工島も候補地の一つとして見直す。」など不透明な回答をしています。市民が求めていることは、人工島事業が既に破綻しており、人工島事業を抜本的に見直すことです。
質問事項
①市長はどのように人工島を見直すのかお尋ねします。
②博多港開発救済のために税金を注ぎ込むことはやめるべきであり、既に存在意義がなくなっている博多港開発を清算すべきですと思いますが、市長はいかがお考えですか。

2、上述の人工島の現状を踏まえて、下記の事項を申し入れます。
申し入れ事項
①公募市民、関係NGO、専門家、事業者の構成による人工島事業検討委員会を設置し、公開のラウンドテーブル方式で人工島事業を検討すること。
②検討結果を住民投票にかけ市民の意思を確認すること。
③検討委員会の検討結果と住民投票の結果がでるまで、人工島事業は凍結すること。
 すわなち、既契約分充当も含め新規予算をつけず、事業を凍結すること。
④存在意義がない博多港開発株式会社は清算すること。