人工島検証・検討結果に対する抗議

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 吉田市長の検証・検討結果に対する抗議をしました。この検証・検討結果は、「市民の財産にする」という吉田市長の公約を破棄するものであり、山崎前市長同様に市民を裏切るものです。「市民の財産」は何を指し示すのか、それは「埋立に要した資金を回収する」と言うことであり、長期的視点からの福岡市の将来像を描くものではありません。「埋立に要した資金を回収する」という発想は、まさに負けた博打の掛け金を取り戻すために更に追い銭を博打にかけ、全てを失うようなものです。人工島問題は都市のあり方を問うものであり、同時に責任問題を棚上げにする問題です。吉田市長の結論は「一度決めた計画は止められない」、なんと情けない公約破りではないでしょうか。福岡市の不幸は、このような都市膨張政策をヨシとする哲学ない都市政策にあります。いま求められているのは、50年、100年先の青写真を描くことではないでしょうか。

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福岡市長 吉田 宏 様

「人工島事業および市立病院統合移転事業の検証・検討報告書(いわゆる最終報告書)」

についての抗議・申し入れ書

                  「人工島点検」を点検する会代表 荒木龍昇

                   博多湾会議事務局長 脇 義重

Ⅰ.最終報告書への抗議

 12月4日、福岡市アイランドシティ事業検証・検討チームは人工島事業および市立病院統合移転事業の検証・検討報告書(以下、最終報告)」を公表した。

 私たちはこの最終報告について下記の通り抗議する。

1)6月の中間報告で示した人工島事業の課題に即した検討がなされていない。

 6月の中間報告では検証の結果として次の三つの課題と五点の検討の方策が示されていた。課題①拠点形成や産業集積を牽引する企業立地の見込みが不透明②市5工区におけるエリアの将来像や産業集積拠点の土地利用の方向性が不明確③土地処分の進捗に依存する事業収支の安定性への懸念。検討の方策①みなとづくりエリアにおける国際物流拠点機能の強化・企業立地の促進②街づくりエリアにおける産業集積・企業立地の促進③市第5工区におけるエリアの将来像や土地利用の方向性の明示④街づくり、みなとづくりの展開を踏まえた交通基盤の対応⑤事業の着実な推進の前提となる事業収支の安定性向上

 しかし最終報告では、9月の「結果報告」と同様、検証結果で出された課題を解決するための調査に基づく事業方針の青写真さえ描かれず、また応募した市民の意見も活かされていない。長い時間をかけて一体何を検討したのか。

2)吉田市長の公約に反している。

市長は「人工島は、市民の財産となるよう大胆に見直し、現実的解決を図ります。」と公約しており、市長選挙では「人工島事業をゼロから見直す」と訴えていた。しかし、最終報告では「大胆な見直し」は示されず、反対に、既存の計画を具体的な展望を示さないまま実施に移すという人工島事業推進の立場に変移した。これは市民に対する公約違反だ。

3)人工島がどのように「市民の財産」になるのか示されていない。

 人工島を「市民の財産」にするためには、人工島の土地処分を事業の第一目標にするのではなく、福岡市の長期的な街づくりについてのビジョンを作り、その上で人工島のあり方を位置づけるような総合的な視点での見直しをすべきで、埋め立てないで博多湾の自然を残すことが「市民の財産」にすることでもある。しかし、最終報告では具体的に人工島がどのように「市民の財産」になるのかは示されていない。吉田市長は「いまさら海に戻せますか」と言うが、市財政を圧迫する売れない造成地が「市民の財産」となるのか。

4)患者や家族、小児科医から反対の声が上がっている人工島をこども病院の移転先にした。

 利便性が高い当仁中学校跡地などの近傍適地を除外し、患者とその家族、医療関係者から利便性・医療機関の偏在性から反対され、利便性が最低だと結果報告で評価した人工島を移転先にした。これでは、博多港開発株式会社救済策だとしか考えられない。

2.申し入れ 市長に判断を求める――市の将来のために

市長には最終報告に束縛されることなく、市の将来のために応募した市民の意見をよく聞き取り、市役所内だけではなく市民意見発表会やラウンドテーブル方式での討論会など広く市民の意見を聞く機会を設けながら、市民とともに人工島問題と市立病院のあり方を引き続き検証・検討することを求める。

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添付資料

2007年12月13日

福岡市長 吉田 宏 様

                                               
                                                                                                   
                       
「人工島事業および市立病院統合移転事業の検証・検討 結果報告公表後の意見募集結果」
いわゆる最終報告についての抗議・申し入れ

                 「人工島点検」を点検する会 代表   荒木龍昇
                   博多湾会議       事務局長 脇 義重

Ⅰ.最終報告について総論評価
12月4日、福岡市アイランドシティ事業検証・検討チームは人工島事業および市立病院統合移転事業の検証・検討結果報告後の意見募集結果(以下、最終報告)」を公表した。しかし、私たちはこの最終報告を率直に受け取ることが出来ない。なぜなら、「人工島検証・検討チーム」は「社会問題化したアイランドシティ(人工島)は、市民の財産となるよう大胆に見直し、現実的解決を図る」という公約を実現するために市長の下に組織されたものだったが、最終報告には人工島を「市民の財産」にする「大胆な見直し」が記されていないからである。最終報告が示す新たな人工島事業計画が成就する現実的な見通しを示していないことから人工島が「市民の負の財産」と化す心配さえ生じている。
人工島事業そのものが当初から展望のないものであり、博多湾の自然という「市民の財産」を破壊し、福岡市の財政を破綻に追いやるものであると私たちは批判し、計画の撤回を求めて運動し、着工後も繰り返し工事の中止を求めてきた。こうした博多湾の自然の恵沢とともに暮らしていける街づくりのための運動や教育や福祉など市民の生活に市政が行き届くよう財政を保全するための運動はその成果を私たちだけではなく、次の世代とともに享受するためのものである。
では一体、人工島の検証・検討には何が求められていたのか。別の言い方をすれば「大胆な見直し」とは何なのか。この回答は最終報告からは出てこない。市民の応募意見のなかに求められる。違いは何か。最終報告は人工島だけに焦点を当て、市民は各地から全市的な立場で意見を述べた。そのことが違っていた。前者が埋め立て地の販売、しかもその方法に収斂していったのに対して、市民は全市的な街づくりのなかで、博多湾と人工島を考えた。両者の違いは歴然としている。
私たちの主張がはっきりとしてくる。福岡市の自然を活かす形で街づくりを考え、未だ埋め立てが完成していない工区は工事を止め、湿地に戻すという判断をすることが「市民の財産」になる。ここで始めて自然を大切にする街福岡として再生する道筋が見えてくる。逆に、具体的な土地処分と利用の展望のないまま埋め立てを続けていけば、また、たとえ売却できたとしても低層住宅のすぐ傍に100メートルのマンションが博多港開発の既開発地区の不整合な街づくりが拡大する内容の最終報告の中身では、人工島は住宅地域が毒グモや毒蛇が移入する港湾地区に隣接するという不調和な関係が目立たせ、自然と人間の相互関係がゆるぎ市財政を危殆に瀕しさせる「市民の負の財産」になってしまうことは明白である。
両者の違いは、市民の視点から自然を大事にしたいという率直な気持ちが「元の海にもどしてほしい」という表現となって現れたのに対し、「いまさら海に戻せますか?」との市長発言によって極まった。無駄な人工島工事を止めて欲しいという市民の願いとも受け止められる要求を跳ね除け、工事を進めてきたのは前代までの市長であり、現市長だ。仮に「いまさら海に戻せない」のが現状だとしたら、その原因をつくったのは歴代の市長たちであって、市民ではない。私たちは、工事進捗の各段階でその工事を止めるよう求めてきた。工事延長をしないこと、それが「元の海に戻す」初手であり、市民の願いが成就する事態への始まりだ。海に戻るかどうかは自然が決める。しかし、それ以上の自然破壊を止め市の財政破綻を救う道がそこにあると主張してきた。埋め立てを止め、元の湿地に戻し地域を活性化させた成功例はイタリアのポーデルタ地帯の干潟再生事業など海外に沢山ある。逆に、日本では東京副都心計画地帯など売却されない財政を圧迫し続ける埋立地が沢山ある。
最終報告には、そうした人工島事業全体を壮大な無駄だという視点がない。例えば照葉住宅地を成功例として、それを模範にして当初の人工島住宅地販売につなげたいという叙述がある。また、市工区への企業立地の実績を評価している。しかし、これらの住宅販売に巨額の財政支援策が施されたことや企業立地が香椎パークポートへの入り口付近での道路拡幅工事によるものであることの記載がない。実績の背後に隠された事実のなかに人工島の真の姿が浮かび上がる。
そうして、土地処分願望が不均衡な埋め立て造成だけを急がせている。土地需要が見込めるから土地造成を進めるとしながら、現実には土地需要がない現実から逃避している。もし、将来土地需要が増えるような経済状態になってからでも造成整備を行えば間に合うにも拘わらず、最終報告が当初計画で人工島事業を進めると判断したのは、土地処分代金による市債償還や博多港開発株式会社への融資金返済という硬直した金融スキームから脱していないからだと言える。そのためにこそ、市内三つの青果市場やこども病院と市民病院などの人工島への統合移転が最終報告に盛り込まれているのだ。共通しているのは、償還や返済の収入源を市財政、すなわち市民の税金に求めようとしているのだ。したがって、市全体の行政と財政が人工島に一層偏ることになる。人工島無展望、市財政悪化、一層の自然破壊の螺旋から脱却する唯一の道は上述の金融スキームを見直し、博多港開発株式会社を清算し融資銀行団には応分の負担を求めることだが、最終報告にはそうした記述はない。
私たちは、現に湿地化している造成土地を野鳥公園にする提言を行った。しかし、最終報告は野鳥が飛来している湿地は一時的なものであり、埋め立てが完成すれば消えてなくなるものであると提案を一蹴した。しかし、湿地に憩う野生生物にとっては永続的か一時的かの区別は重要ではない。なぜなら、そこにある餌、ねぐらが必要なのであり、そこで命を永らえるが野生生物なのであるからである。したがって、現に野生生物の生息環境となっている人工島造成地内湿地の保全こそが野生生物に必要なことなのであり、必要もなく造成を進めることは野生生物の命を脅かすことなのである。故にこそラムサール条約は一時的な湿地も国際的に重要なのだと規定しているのだ。野鳥公園は、かかる意味において、生物の生息環境も含めた自然のなかに人が生かされている街、福岡を展望するうえで欠かせない構想なのであるが、最終報告にはこの重要性と湿地保全が記載されていない。
一方、市立病院の人工島への統合移転問題で、最終報告は「病院事業運営審議会」の答申待ちだとしているが、少なくとも、こども病院の移転が前提となっている。しかし、患者や介護家族、市民にとっては交通の利便性からいって、現在地での治療が最善だと意見が多く出されている。市立病院に関する市民意見503件の6割に当たる312件が整備方法・整備場所であり、その多くが東部への移転で医療が受けられないのではないかと心配する声だった。また、検証・検討チーム会議議事要旨を見てみても、「患者や家族などこども病院利用者の声は無視できない」旨の発言が目立った。人工島への移転については、別に、こども医療機関の東部偏重だとして「人工島への移転には強く反対する」との要望書が市内の小児科医69人の連名で出されている。また、10月5日の「人工島検証・検討結果報告 市民説明会」では患者の家族からの移転反対の声が聞かれ、「医療スタッフも参加して」の検討が必要だとの意見が出された。これらの意見は最終報告には盛り込まれていない。また、もっとも利便性の低いとされた人工島移転を結論付けた候補地選定過程には合理性がない。利便性の高い近隣移転候補地が落選した理由に合理性は見受けられない。それどころか、候補地潰しだとしか思えないことが起こった。移転候補地選定真っ最中の10月、市は候補地のひとつである当仁中学校跡地に住民から不合理性が指摘されていた鳥飼ポンプ場の工事を始めたのだ。
総じて、こども病院の移転候補地を人工島に選定した最終報告には合理性がない。

Ⅱ.最終報告への経過的評価
私たちは同チームが6月に公表した中間報告が事業の現況や問題点を数字を使って率直に公表し、人工島事業が抱える問題点 について整理をしている点など評価した。しかし、9月の検討結果では7月に提出した提言(7月提言)で「今後の方向性が人工島事業のこれまでどおりの継続を念頭において記されており」と危惧していたことが、現実のものとなったと9月提言で述べたが、最終報告では、「今後の方向性や提案にとどまっている」としながら、実は「見直し」を中止し、人工島事業「推進」に軌道修正したことが判然とした。そのことは後継の組織名が人工島整備事業推進本部であることやその初回会合における市長の「人工島は新しいステージに入った。全庁一丸となって事業を仕上げる」との決意表明からも判る。
私たちは7月提言で人工島の計画について「埋立地の土地処分が予定通りできなければたちまち全ての計画が破綻する。現在の事業計画では、想定されているような土地需要がないことは容易に想像できる。」と指摘し「人工島を『市民の財産』とするためには、人工島の土地処分を事業の第一目標にするのではなく、福岡市の長期的な街づくりについてのビジョンを作り、その上で人工島のあり方を位置づけるような総合的な視点での見直しをすべきと考える。」と述べた。しかし、9月報告に続き最終報告でもこの提言は活かされていない。福岡市全体の街づくりの視点が見られず、土地利用計画も土地実需を前提としない売却願望が先行した内容になっている。
病院の統合移転については、7月提言で「従来の人工島移転を前提とした議論から脱却し」と評価したが、9月検討結果でこども病院の人工島への移転が盛り込まれたことによりむしろ後退した結果となっていたが、今回の最終報告で人工島への移転に反対する市民の意見は顧みられることはなかった。それどころか、候補地のひとつである当仁中学校跡地に鳥飼ポンプ場の工事を始め、無理やり人工島に移転する不当な行政を始めた。
7月提言と9月提言で指摘した「国際的な価値のある野鳥の宝庫、和白干潟・博多湾の自然環境を保全する」点については最終報告では小規模の野鳥公園の記載のみで、和白干潟・博多湾全体での自然保全の視点や福岡市全体の街づくりとの関連の視点が欠落したままの最終報告となっている。
 
Ⅲ.最終報告への評価 提言に照らして
土地利用、事業計画についての提言;市民の財産となる見直しにするために 
 1.港湾整備事業(機能施設整備事業)について    
 私たちは、7月提言で「博多港を取り巻く物流の環境変化を良く研究し、拙速な整備を控える。」との観点から下記を提言した。
①博多港が国際海上物流におけるハブ港湾となることは不可能といってよく、大型船の受け入れよりも今後増加が見込まれる小型船の受け入れに対応できる港湾整備のほうが現実的である。
②港湾物流へのITの導入により、港湾への倉庫用地の需要は減少してきている。
③機能施設整備事業は70年経過して収支が均衡することになっているが、施設の耐用年数を超えなければ均衡しないような事業計画は事業としては成り立たない。しかもこの期間中、設備の更新について考慮されていないことを見れば、この収支計画でさえ実現できない。
④港湾物流の環境変化を見据え、水深15メートル岸壁やガントリークレーン・倉庫などの設備投資計画を大幅に見直し、博多港の港湾整備の方向を再検討する必要がある。

2.臨海土地整備事業(市2~4工区)について
私たちは7月提言で「埋め立て、地盤整備は当面凍結する。」と述べた。そして「利用方法は福岡市の長期ビジョンの策定を待って検討することとし、その間市2~4工区は保留地とする。」と現実的な提言をした。そして「土地処分の見通しの立たない現況において、埋め立てを進めても、財政悪化を深刻にすることにしかならない。平成29年までの基金の投入額が中間報告において予想されている320億円を大きく上回ることは容易に想像できる。」と具体的に指摘した。そして、結論として「早急に土地利用計画を決定して事業を推進することを避け、これからの社会環境の変化を見据え、福岡市の将来の長期ビジョンを作り上げた上で利用方法についての構想を練ることが賢明だと考える。その際は事業の主体・資金調達の方法など事業の枠組みについても根本的に見直す必要がある。」ことをあげ、「これまでに発行した市債の償還条件の緩和についての銀行団などとの交渉が必要になる。」と解決策を提案した。
しかし9月の結果報告には私たちの7月提言は採用されておらず、次の4点が示されただけであった。
(1) 博多港の特性を活かした複合型物流施設の立地促進
(2) 港湾機能強化と連携した土地処分方策
(3) 市場機能との連携によるみなとづくりエリアの付加価値向上
(4) 土地需要への柔軟な対応や周囲の自然環境を活かす土地利用の検討
しかも、最終報告は結果報告に基づく検討だけが示されており、数値処理を含めた港湾施設の収支明細は中間報告を参考にして欲しいと述べているに過ぎず、結果報告に続き最終報告でも次のように数値に基づく事業の展望が示されていない。7月提言が示した港湾整備事業(機能施設整備事業)の危機的状況についての認識がなく単に「航路誘致、集荷拡大と企業誘致を推進する」という方針が記されているだけであるが、これは港湾施設立地への需要は現実のものではなく、ポートセールスによってこれから展望を拓いていると希望を述べているにすぎない。特に、水深15メートルを必要とする大型商船が博多港に入り人工島岸壁を使用する予測値が現実的根拠をもって述べられていない。
「港湾土地利用と販売の需要があるからではなく、むしろ土地需要を創出することにより土地売却を実現しようとする意図が見られる。土地売却が進まない現状を打開するためにこそ中間報告で三つの課題を示したのではなかったか。」との9月提案における対応要求は実施されていない。
特に、青果市場の人工島への統合移転は中間報告では「業界からの要望がある」とだけ記されていたが、今回の結果報告では検討過程抜きに、いきなり「市2工区立地を評価」と記されている。最終報告では市2工区への移転が決定事項として記載されているだけである。本来、青果市場の問題は生産者や流通機構、消費者などの意見を聞き全市的な視点で在り方を検証・検討すべきなのだが、中間報告同様その検討過程は記されていない。
今回の検討結果に続き最終報告でも「埋め立て、地盤整備は当面凍結する。利用方法は福岡市の長期ビジョンの策定を待って検討することとし、その間市2~4工区は保留地とする。」という7月提案を取り入れなかったためつぎはぎ的な計画となっており、結果として福岡市全体の都市計画をゆがめる懸念さえ生じさせた。
まちづくり地区も同様だが、検討結果によって中間報告の機能施設整備と臨海土地整備の事業収支計画が変更されるのかどうかの記述がない。

3.市5工区(旧博多港開発2工区)について
私たちは7月提言で「大部分を和白干潟と一体となった湿地公園として整備し、福岡市の街づくりにあたっての核地域の一つとする。」と提言した。すなわち、「湿地として保全市5工区も福岡市の長期ビジョンの策定を待ってその利用計画が決められるべきものであるが、私たちは、博多湾の豊かな自然を街づくりの戦略の一つとし、その核として当地域を湿地公園として整備することを提案する。」とした。また、「土地処分の見通しも立たない中で埋立を継続しても、市民の借金が増えることにしかならない。当該工区を湿地として残すことで、これから投入されるであろう埋立て・地盤整備費も大幅に削減することが可能である。」とも提言した。
しかし、博多港開発株式会社工区を含めたまちづくりゾーンについて今回の結果では7月提言の多くの部分は取り入れられず、次の4点が示されただけに止まった。
すなわち、
(1) まちづくりエリアの将来像
(2) 土地利用の方向性
(3) まちづくりエリアの開発を効果的に進めていく事業手法等
(4) 自然環境の保全・創造と野鳥公園の整備のあり方
これらの検討結果からは埋め立て凍結など福岡市全体の財政視点から立った必要な措置は見受けられず、人工島事業の混迷を深める懸念さえ生じさせた。特に、これまで「アジアビジネスゾーン」として、アジアからの企業立地をめざしていた地区を名称も「センター地区」に変えたことは、以前の構想がいかに時代に適合しないものであったかを示すものであるが、「センター地区」も土地実需がないうえに不確実な構想である。また、野鳥公園の整備については広さや場所の特定がないので市民が検討するのは困難である。私たちは、7月提言で5工区の大部分を湿地のままに整備することを求めた。
市5工区が博多港開発㈱の管轄であったとき、土地処分が出来ず銀行団は埋立事業に資金回収の展望がないと判断して融資をやめた。銀行が事業の展望を見出せない市5工区に福岡市の上記事業が成功する保証は全くない。これ以上無謀な事業推進はやめるべきである。

4.博多港開発㈱について
私たちは7月提言で「市民病院の統合・移転が白紙に戻されたとしても、同社救済のために無理な土地購入をすべきではない。」と述べた。そして、「市立病院統合・移転問題が    『公立病院のあり方』という本来的な問題に添って検討すべきことが提案された。この問 題が人工島の土地処分のために利用される惧れが一応はなくなったことを私たちは評価したい。」と指摘した。「博多港開発(株)の救済のために税金を投入して土地を購入するのは明らかに本末転倒である。」からだ。「人工島事業が博多港開発㈱の救済事業にならぬよう、やむをえないときには使命を終えた同社の解散を発議するくらいの覚悟を福岡市に求めたい。」とし提言した。それは「博多港開発㈱が解散・清算されれば、福岡市による無理な土地購入の必要がなくなり、不要な市民負担を避けることができる。一方、土地も妥当な価格で評価されることになり処分が容易になる。」からである。
しかし、今回の検討結果では、市民病院との統合は白紙に戻ったがこども病院が周産期医療・感染センターとともに人工島に移転すること、が記された。こども病院がどうして、交通の不便な地震に弱い人工島に移転されるのか説明がなされていない。また、患者と家族の反対の声を顧みない移転策となっており、移転候補地のなかで、どうして人工島が選定されたのかその理由が不明瞭である。人工島土地処分と博多港開発株式会社の経営救済が目的であると言わざるを得ない。また、市長選挙での「こども病院の人工島移転計画見直し」との市民との公約は「こども病院を人工島には移転しません。」と理解されているので、公約違反になるのではないか。

5.総じて、今回の結果報告に続く最終報告はつぎはぎだらけの内容になっている。
今回の最終報告は9月の結果報告と同様、商業・娯楽施設や企業誘致へ交付金、福岡都市高速導入、鉄道導入構想などが盛り込まれている。しかも、「企業ニーズに対応した土地活用方策の導入」など市が企業に阿る姿勢が見受けられ、造成した土地を何処にでも売却すること繋がる危惧さえある。しかも、販売だけではなく、造成土地の定期借地制度など長期リースや不動産証券化も検討されている。この方策を採用すると売却を前提とした当初の人工島事業は根本的な破綻することになる。これでは福岡市全体の街づくりは整合性のない、ちぐはぐなものとなってしまう。福岡市の都市計画は人工島に偏り、優遇政策を受けた人工島だけが博多湾に出来ることになりかねない。さらに、このまま推移すれば、市の教育、福祉予算は削減されている一方で、ひとり人工島事業関連予算だけが進捗する福岡市政になってしまう危険に満ちている。

Ⅳ.最終報告の総括に対する抗議
1.人工島事業について
(1)人工島事業については市民から自然環境保全、福岡市財政危機、健全な街づくりの視点などから疑問や批判が多く寄せられている。6月、9月と2回に公募した市民意見にも「凍結」なしい「中止」の声が多くあった。また、福岡市民は人工島見直しを公約した現市長に投票した。このようなことを考えるとき、人工島事業中止も重要な政治選択肢として提案されたものとして市民は受け止めた。現に市民は応募して凍結・中止の意見を述べた。しかも、中間報告での検証結果は正確に人工島の現状を伝えた部分もあり、この検証結果を敷衍すれば、市自らも事業の中止やむなしという当然の検討結果を公表するものとさえ思えた。にも拘わらず、「検証・検討チーム」は最終報告にいたるまで事業推進を前提にして「事業がより良い方向へ進むよう方策を検討すること」が今回の検証・検討の目的であるとの立場を変更しなかった。住宅・産業立地の先行き不安、港湾の過剰投資など問題は何一つ解決されていない。
(2)以上の結果は、市役所内部だけの構成で、人工島検証・検討を行ったことに起因する。私たちは、7月提言と9月提言で繰り返し市民や学者、専門家、特にこども病院の移転問題では患者とその家族、専門医などを交えたラウンドテーブル方式での議論が真の問題解決に繋がると指摘した。それは、人工島、こども病院の問題を解決するのは市民自身であるからだ。
(3)特に、事業の凍結、中止についは、最終報告は「現状で事業を中止することは、これまで投じた費用の回収の道を完全に閉ざすことになり、人工島のもつ将来の可能性も無に帰するものであるため、採るべきではない。」としている。これでは、検証したことが活かされていない。人工島の収支の展望は破産的であり、事業継続は福岡市民を市財政の破綻の道連れを強いるものである。
    無駄な人工島予算によって、福祉、教育など市民生活を支える部署への予算配分が削られている福岡市政の現状を考えると人工島事業(埋め立て・基盤整備事業)はいったん中止すべきである。

2.こども病院について
  1)特に「整備場所」については、「現地や付近での建替えを検討した」しかし、「全市的視点と将来、諸条件を精査し、総合的に判断し、人工島を適地と判断したとある」が支離滅裂な論理であり、患者とその家族、「全市的視野」、利便性などを吟味すれば、人工島への移転はありえない。人工島検証・検討チームの評価でも利便性は最低だった。

Ⅴ.市長に正しい判断を求める――市の将来のために
 市長には、人工島事業と市立病院問題について今回の最終報告に拘束されることなく、福岡市の将来にむけ、行政の長として市民が納得する政治決断を行うよう求める。
1.福岡市の全体的な長期ビジョンを策定し、福岡の価値を私たち自身が改めて確認し、少子高齢化・地球温暖化・産業構造の変化、などの長期的な社会環境の変化を視野に入れながら福岡市全体の街づくりのビジョンを作ることが今求められている。人工島の土地処分だけを優先させても、福岡市がちぐはぐな特色のない街にしかならない。
2.私たちは7月に続き9月にも事業見直しの進め方についてとして「当面は、各工区について当面凍結することも含めて事業の方向付けを行うための今後の検討課題を整理し、人工島事業全体の今後の検討の体制について結論を得ることにとどめること」とし下記を提言した。
1) 検討すべき内容(例)として
①港湾施設の整備など各工区で予定されている事業についての事業環境を客観的な立場から再評価するとともに、改めて事業の収支計画・福岡市の財政見通しを点検する。
②和白干潟の人工島着工後の環境変化を事実に基づいて確認するとともに、人工島事業の大きな要素として今後の保全のあり方を検討する。
2)土地利用の方向付けを行うに当たっては、市民合意を形成させるために、次の点を原則とする。
①市民意見発表会を開催するなど市民参加のもとに検討を進める。公募市民、NGO、 NPO、専門家を含めたラウンドテーブル方式での検討を行う。
②情報を公開する。
3) 今秋の報告を最終報告とせず、今後の検討課題・検討体制について提言する第2次中間報告とする。
今日、改めて上記を申し入れる。