都市論としての人工島(その3)

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人工島に市民の森と市民の干潟を作ろう

 昨年吉田市長は人工島の検証・検討結果を発表しました。結論は従来通り埋立を続けるというものです。この結論が吉田市長が公約とした「人工島を市民の財産にする」ことができるのでしょうか。私たちは破綻している埋立事業は止め、これ以上ムダな税金を使わず、埋立が終わっていないところは、市民の森と干潟にすることで博多湾の自然を復元させることが市民の財産になると提案します。

 そもそも何故福岡市が博多港開発から埋立が終わっていない95㌶の土地を399億円で買い取らなければいけなかったのでしょうか。銀行団はこれ以上埋立事業に融資しても採算の見通しがないとして福岡市に買い取らせたのです。銀行でさえ見放した埋立事業を福岡市が続けて展望があるはずがありません。現に埋立が終わった照葉地区では、埋立原価138,000円/㎡の土地を70,000/㎡以下の値段で売らなければ土地処分ができなっかた事実を見ても明らかです。また、照葉地区の土地処分も進んでおらず、こども病院をむりやり移転させ、福岡市が売れない土地を買わなければいけない状況です。

 博多湾は東アジアの渡り鳥の重要な中継地です。約300種の鳥が観察されており、人工島建設が始まる前には7万羽を超える渡り鳥が観察されていました。先日のモニタリング委員会では3万5千羽程度に激減していることが報告されています。この報告では人工島にシギ千鳥類の大半が飛来していることが報告されています。市5工区には擬似干潟があり、国際的にも絶滅が危惧されているクロツラヘラサギを始め、多くのシギ千鳥などが生息しています。人工島は6割しか埋立は終わっていません。干潟を復元し、クロツラヘラサギの保護は国際的な責務です。人工島検証・検討結果では干潟に復元することは難しいとしていますが、搬入している土砂をかき寄せて丘にし、残りの埋立地と和白干潟の海底を同じ深さにすればよいのです。丘には市民の手で森を再生し、干潟と森を一体で自然を復元させるのです。

 イタリアのアドリア海に面するポー川河口において埋立地を干潟に復元すること地域の活性化に役立ています。埋立地のため塩分が残り農業に制約がありうまくいっていなかったこともあり、干潟に復元することでエコツーリズムの場にしています。住民は民宿経営などに転業することで地域の活性化が進んだといわれています。また、干潟が復元されたことで藻場ができ、アドリア海の漁業再生に役立っているといわれています。人工島に森と干潟を復元することで、エコツーリズム、環境教育の場、市民の憩いの場として活用でき、国内外からの訪問者の交流の場にすることができます。また博多湾内の漁業再生を図ることができます。

 吉田市長は埋立を止めればこれまでかかった費用が回収できないといっています。しかし、破綻が明らかな埋立を続けることで将来の世代に借金を残すよりも、市民の手で自然を復元し、自然を生かした街づくりをすることが市民の財産になります。これまでかかった費用は間違った方針を出し、追認してきた市長以下市と議会が責任を取るべきです。人工島に市民の森と市民の干潟を作り、玄界灘、島、博多湾、都心部、河川、背振の山並みをつなぐ景観と文化の香りを醸す街づくりをすべきです。

オープンスペースとみどりに囲まれた街に
 今博多駅周辺と天神地区の再開発が動き始めています。地球温暖化防止、ヒートアラン土現象の軽減から、都心部への車の乗り入れを規制し、川辺を活かし、みどりの街並みやオープンスペースを広げることで歩いて楽し街、環境に優しい街、心がいやされる街をつくべきです。福岡市全体がみどりと歴史と文化を感じる景観を形成させることです。

 いま七隈線の延伸が検討されることになりました。4.8kmの建設は1,600億円といわれています。果たして七隈線の延伸が街づくりによいのでしょうか。私はいまの南天神駅から空港線天神駅につなぐことが経済的であり、現実的であると考えます。そして、都心部への自動車の乗り入れを規制し、代わりに博多駅、呉服町、天神、清川を回遊するトラムをつることが街の魅了を高め、環境対策になると思います。パリでは中心笛の自動車の乗り入れを規制し、自伝車利用を進めていると言われています。自転車の中継場所は2万箇所にもなっているとのことです。福岡市でも都心部に自転車専用道路を造り、低料金で貸し自転車を手今日するシステムを作っても良いのではないでしょうか。七隈線延伸に1,600億円を投じるよりも、環境的、景観として、また観光資源として優れているのではないでしょうか。自転車専用道路を整備すれば、人工島の市民の森や干潟にも自転車で行けるのではないでしょうか。   

新福岡空港はいらない

 福岡空港調査連絡調整会議ではパブリック・インボルメント(PI)では新福岡空港建設か現空港拡張のいずれかの選択をするとしています。しかし、そもそも新福岡空建設や空港拡張が必要でしょうか。新福岡空港建設に1兆円を超える費用が必要であることは財政問題として大きな問題ですが、エネルギー・資源問題、環境問題の視点からも新たな空港を作ることは問題です。地球温暖化防止の取り組みとしてEUでは後期のCO2排出規制をはじめます。EUでは環境対策として飛行機による出張をなくし、テレビ会議をする企業もでています。また、石油の産油量のピークが来ているという指摘もあり、このまま化石エネルギーを使い続けることに限界が見えています。また、貴重な自然を破壊してまで空港建設は必要ありません。

 福岡空港における需要そのものも頭打ちの状況であり、また政策的にも需要を喚起することは間違っています。財政問題、環境問題、エネルギー問題、いずれの視点から見ても新空港建設や現空港拡張の必要はなく、むしる航空需要を抑制する政策が必要です。

 福岡市では人工島に鉄軌道を通すために、奈多沖に新空港を建設する計画を検討してきました。多額な建設費は誰が負担するのか、埋立の土はどこから持ってくるのか、海を埋め立て自然夜業場の破壊をしていいのか、地球温暖化防止、資源・エネルギー問題、いずれの問題からも新福岡空港は必要ないのです。