博多港開発への銀行融資の再編は何を意味するのか

Pocket

 3月14日に、博多港開発への銀行融資について、みずほ、みずほ信託、住友信託、三菱UFJ信託、中央三井信託の大手5行が撤退し、福銀を中心に地元4行(福銀、西日本シティ、福岡中央、肥後)で引き受ける調整をすると報道されました。博多港開発の融資残高は161億円(3月末見込み)あり、そのうち大手5行の融資額60億円を福岡銀行中心に地元4行に借り換えるということです。ふくおかFGが人工島事業に積極的に関わり、人工島事業を支援する「メインバンク」ができることは吉田市政に朗報と西日本新聞は報じています。しかし、果たして人工島事業の展望ができたのでしょうか。

 山崎前市長の念書、ケヤキ庭石事件での証言、博多港開発と協調融資団の協定書など、これまでの状況を見ると以下のように推測できます。
 もともと大手5行は人工事業の将来性がないとして融資撤退の動きをしてきました。大手5行が撤退すれば協調融資団が崩壊し融資が焦げ付きかねないため、2001年に協調融資の幹事社でありもっとも融資額が大きかった福銀は山崎市長に「銀行には決して損はさせない」という念書を書かせました。2002年には人工島の事業計画を大幅に変更させ、「売れない土地を福岡市が全て買い取る」「博多港開発が融資返済ができない時は福岡市が博多港開発に貸付をして確実に返済させる。そのために福岡市は毎年200億円予算化する。」という具体手な損失保証を福岡市にさせることで大手5行をなだめすかして融資継続をさせてきたのです。人工島の中央公園建設やこども病院の統合移転計画はこのようにしてつくられたのです。2005年には福岡市は博多港開発に87億円を貸し付けています。金利についても「長期プライムローン」に1%上乗せという条件を博多港開発に負担させてきたのです。それでも土地処分が進まない状況を見て、融資銀行団は2004年には福岡市に計画変更させ埋立が終わっていないにもかかわらず博多港開発第2工区を399億円で福岡市に買い取らせ、銀行団への融資返済をさせたのです。

 今回地元銀行への借り換えによって博多港開発の金利負担が軽減されるといっていますが、もともと不良債権であったために金利が上乗せさせられていたのです。こども病院移転が延期になり、当初予定されていた74億円の収入が5億円4千万にとどまったことから、大手5行は最終的に事業の先行きに見切りをつけたといういことです。福岡銀行にすれば既に融資残高は大きく減っているので肩代わりには問題はなく、むしろ福岡市に対する影響力をより大きく持つことになると思われます。融資団再編は福岡銀行の利害がより大きく反映しているだけのことです。

 融資団再編は何を意味しているのでしょうか 一つは埋立事業に展望がないと大手銀行は見ているということが改めてハッキリとしたことです。市5工区(旧博多港開発第2工区)の埋立事業は展望がないこと、また博多港開発第1工区(97.2㌶)の66%が土地処分が進んでいますが、埋立原価の半値でしか処分できなかったという事実から今後も土地処分の見込みがないと見ていると思われます。
 二つ目には福岡銀行の福岡市における影響力が大きくなったと思われます。吉田市長との関係もかねがね噂に上がっていましたが、何となくきな臭さを感じる事態です。福岡市は博多港開発第1工区の土地処分が進まないために、なりふり構わず土地処分を進め、「照葉の街」は当初のイメージとは大きく変わる街になろうとしています。今後土地処分に対する銀行の圧力がさらに強まると思われます。アジアビジネスゾーンを商業地区に変更し、商業施設誘致のために企業立地交付金の増額したことに見られるように、今後の土地処分に福岡市が更に税金を投入することになると思われます。博多港開発の売れ残っている土地は全て銀行団の担保となっていますが、銀行団が差し押さえても損失が出るだけで、福岡市に買わせるないしは福岡市に売らせることを求めていると思われます。

 グローバル化、世界の産業構造の変化、企業会計の変更など、本質的に企業の土地需要がなくなっています。アメリカ住宅バブルの崩壊による世界経済への影響もこれからです。勤労者の所得が伸びない状況は続き、国および地方財政の悪化、加えて、少子化、高齢化、人口減少が更に進もうとしているなかで、開発に重点を置く政策が破綻することは目に見えています。今回の博多港開発への融資団再編は、人工島事業を抜本的に見直す必要があることを示しています。銀行の貸し手責任、誤った政策を進めてきた市長以下福岡市、それを認めてきた議会の責任を明らかしなければ、全て市民が損失を被ることになります。責任の所在を明らかにして責任を取らせることが必要です。