議会は住民投票条例否決!市民自治が問われている。

Pocket

福岡市に市民自治があるのか!
こども病院の人工島移転の是非を問う住民投票条例案を否決

 福岡市立こども病院人工島移転の是非を住民投票を実現させる会は、有効署名数30,545筆をもって「福岡市立こども病院人工島移転の是非を住民投票条例案」を直接請求しました。住民投票条例案審議の議会が18日、19日に開催されました。住民条例案を議会に提案するにあたり、吉田市長は「これまで様々な機会をつくり十分説明をおなってきた、9月議会でもこども病院移転予定地土地取得議案も議決されにで住民投票は必要ない」という意見を述べて、本議会での議案質疑、委員会質疑でも吉田市長及び保健福祉局長は議員の質問に、同じ内容のと便を繰り返しました。一方的な説明でもって説明責任を果たしたと言えるのでしょうか。
 議会での審議では、与党民主党は「十分に説明をしたので住民投票の必要がない」と、繰り返し市長を養護しました。採決では、民主をはじめ、自民、公明、みらい福岡、福政市民の会派が住民投票条例に反対し、住民投票条例案は否決されました。住民投票は議会による間接民主主義と補完し合うものです。市長および議会が住民投票を否定する福岡市には、市民自治があるとはとても考えられません。

18日(火)の議会審議で福岡市は迷走
 18日の委員会審査で、RKBTVで「福岡市はこども病院を移転させた後、百道浜急患センターの夜間診療を中止し、日・祝日の中間の診療だけにし、区の保健所で実施している日・祝日の昼間の救急診療はやめ、こども病院に集約することを検討している」報道したことについて質問されました。このことについては自民党市議団からも事実なのかと質問がされました。これについて保健福祉局理事は「そんな事実はない」と強く否定しましたが、部長は「医師会役員個人の意見」として検討していないとしながらも、新こども病院の収支計画に救急医療に予算化されていることを指摘されると、「計画に入れている。東部地区の一部を算定している。」と答えています。つまり、一方では救急診療について検討していないとしながら、一方では収支計画に参入して検討していることを認め、答弁は迷走しています。この問題は市民全体に関わる問題であり、オープンな場で検討がなされる必要がありますが、市にはそのような姿勢は感じられませんでした。

 また医師の確保ができているのかという問いには、66名の医師を予定しているが、その部署の人数はまだ決めていないと答えています。つまり、医療体制も決まらずに、ともかく建物だけは建てるというのです。医師不足の中で医師が確保できるのか、いまそのことが問われているにもかかわらず、なんの展望も示されませんでした。いま、浜の町病院では産科医が7名の内5名が辞めることになっていますが、その補充のの目途が立っていないと聞いています。福岡市民病院では3年前から産科医がいないため、産科を閉鎖しており、産科医開業の目途は立っていません。今回の委員会審査の市の答弁は医師不足がいかに深刻な状況にあるのかを状況を示しています。当直は2名必要であり、当直後に継続しての勤務は原則禁止となっているため、周産期救急医療を行うためには産科医は14名必要といわれています。仮に基準を緩和しても当直の2名体制は必要で、産科医は最低8人は必要といわれています。いかにずさんな計画かが改めて明らかになりました。 

 吉田市長が検証検討の資料として調査を依頼したPcWアドバイザリー社の報告書には「この調査は現地立替が理想的なものにならないことを証明するものである。」という旨の記載があります。誰がこのようなことを指示したのかという質問に、市は「業者の意見」とし「報告書の表現は勇み足であった」と答えています。しかし、吉田市長が、山崎前市長がこども病院と市民病院を統合移転させるために使ったコンサルタント会社PcWアドバイザリー社をつかったのは、当初から人工島移転を前提にしていたとしか考えられません。市はPcW者を使った理由を医療についての知識があるため、適切な依頼であったと否定しました。しかし、医療知識を持つコンサルタント会社は他もあり、何故入札しなかったのかの理由になりません。人工島ありきであったことは、昨年9月時点で総務省との起債の協議では人工島を前提にしていることが、総務省提出の資料から明らかとなっています。吉田市長が行った検証・検討は市民に対する偽装といえます。

 建築コストが以上に高いことも問題となりました。総務省のガイドラインでは1床あたり1500万円から2000万円とされていますが、新こども病院では3961万円となっていることが指摘されました。民間では1床あたり1600万円ということですが、福岡市は資材の高騰やこども病院という特殊な病院のためプレイルームなどが必要で面積が広くなるなどを挙げていますがが、財政が厳しい中でこのような過大な建設計画には問題があります。こども病院の個室料1室1日8,000円~12,000円はホテルを参考に決めているということですが、他都市の病院と比べてそれほど高くないと答えています。しかし、患者・家族の負担を考えるとこのような豪華な施設が必要とは思えません。

 PFI導入についても、コンサルタント会社は他都市の事例を検証し、メリット・デメリットを把握し、長期的経営の視点から検討すべきと指摘されています。日本のPFI法は日本国外のPFIでは禁止されている施設整備費の割賦払を禁止していないばかりかむしろ割賦払いによる施設整備を促進しており、財政悪化の歯止めをはずした悪法となっていると指摘されています。割賦払いの契約を締結すると公共には施設整備費を全額支払う義務が生じ、施設の瑕疵担保リスクを超えた不具合リスク(例えばサービスの低下など)を民間に移転することが出来なくなるというデメリットが生じます。そして、公債よりも資金調達コストの高い民間資金を利用して施設を整備する合理的な理由がなくなります。PFI事業は10年以上に渡る長期での計画を設定し入札を行います。そのため入札後は事業が設定された期間の金利を税金で払い続け、公債による資金調達コストよりも民間資金調達コストが高い分だけ税金の無駄遣いになります。 また、特別目的会社が施設建設及び施設管理に伴う様々な事業を行います。特別目的会社の構成民間企業のみが利益を得て、雇用状況は特別目的会社の構成企業から下請け、孫受け状態で現場の労働者は低賃金になります。適正な雇用環境を維持できるかは疑問であり、サービス低下の問題も残ります。
 

 
こども病院人工島移転は市民に負の遺産を残します!

■医師が確保できるのか?
 東京都の墨東病院での妊婦死亡事件で明らかになっているように全国的に、小児科医産科医が不足している状況で、こども病院に周産期医療を開設できるのか、医師の確保の目処は何も示されていません。また、こども病院の人工島移転後の西部地区の小児2次医療についても浜の町病院、九州医療センターと協議会を作り検討しているとしていますが、協議会は頓挫しており具体的な対策は何も示されませんでした。このままでは西部地区の小児2次医療は空洞化します。
こども・母親の命は守れるのか?
 こども病院は2次医療・3次医療を行っています。患者は重症者が多く、緊急時に対応できるのかが一番の問題です。また、市内の小児科医や産科からの緊急時の搬送に時間はかけられないことは東京都の墨東病院の事例でも明らかです。時間との勝負であり、交通アクセスと距離、つまり場所が重要です。市内のどこからでも短時間に患者を搬送するために橋の中央部にあるべきです。しかし、吉田市長は小児科医・産科医や患者・家族のこの声を受け入れようとしません。
ずさんな収支計画、このままでは赤字が更に拡大。
 福岡市の収支計画では、1日の患者数は420人としていますが、それは現こども病院の平均患者数1日300人弱の全てが人工島に通院することを前提としています。しかし、現在の市内利用者のなかで、西区・早良区の患者は22~23%いるため、その半数が人工島に行かなくなれば患者数は10%ほど少なくなります。多くは近くの福大病院や浜の町病院などに行くと考えられ、1日の外来患者420人がという数字は極めて怪しいものです。
 また、こども病院では入院患者は退院後にその半数は通院患者として治療を受けている状況がありますか、ベッド数を増すと自動的に通院患者が増える根拠はどこにあるでしょう。救急外来についても、現在の百道浜の急患センターに来ている患者の半数がくると想定していますがそのようになるのか、またそもそも救急外来の体制ができるのか疑問が残ります。ベッド利用率ついても、計画では90%としていますが、この数字も都合がよいように数字合わせしたもので、現状の70%~80%と同程度と見ることが妥当です。加えて、個室を増やし、差額ベッド料1日8,000円から12,000円とすることでも、入院患者は減少のではないかと考えられます。
 現在のこども病院は年間3億円の赤字ですが、人工島移転後は17億円の赤字となる計画dす。しかし、ずさんで過大な収支計画になっており、赤字は17億円ではすまいでしょう。このままでは立派な建物はできたが医師はそろわない、患者も来ない、赤字も膨らみ、負の遺産を残すという結果になりかねません。