福岡市の6月議会PFI提案見送りの背景

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新に900億円の市民負、納得できますか!

 今年3月に福岡市は総務省の「公立病院改革ガイドライン」に基づきこども病院の改革案を提出しました。福岡市の改革案ではこども病院は現在地で努力すれば3年間で黒字になるという報告をしています。ところが、こども病院の人工島移転すれば30年間毎年17億円の赤字となっています。この赤字とは別に一般会計から毎年12億円の繰り入れ(補助)がなされることになっており、実質約30億円もの赤字が30年間続くことになります。こども病院が人工島移転すれば、市民は新に900億円もの負担をしなければいけないのです。ずさんな計画を見るとこれ以上の負担になります。

 市内の9割の産科医が反対しています。福岡地区小児科医会ではこども病院人工島移転反対の決議を挙げています。患者・家族や多くの市民が反対しています。しかし、吉田市長は説明責任を果たしていないどころか、これまで福岡市は現地立替は高くつく、人工島で立て替えた方が経済的と言ってきましたが、その根拠となる資料を破棄しているのです。私たちは吉田市長以下関係者4名を公文書棄毀罪で刑事告発し、検察庁は受理して捜査を始めています。私たちはこども病院の建て替えに反対しているのではありません。よりよいこども病院に建て替えて欲しいと願っているのです。しかし、キチンと説明がなされないままで900億円を超える負担を認めることはできません。

こども病院人工島移転に見え隠れする利権の影。

 更に問題なのはこども病院人工島移転に見え隠れする利権です。福岡市のこども病院人工島移転計画では、PFI方式を導入するとしています。PFI方式は医療は福岡市が行い、病院建設および医療以外のサービスを一括して特別目的会社に委託します。福岡市はPFI方式であれば85億円の節約になると説明しています。しかし、その根拠はどもにもありません。

 本来PFI導入の目的は民間のノウハウを活用し、経営を合理化して黒字にするというものです。しかし、福岡市の計画ではPFI導入しても30年間17億円の赤字、一般会計かからの繰り入れ12億円を含めると実質30億円の赤字が30年間続く計画となっています。病院経営は大きな赤字にもかかわらず、委託を受ける特別目的会社(SPC)は毎年定額で委託料を受け取るため常に黒字となります。医療収入に合わせて病院経営が出来ない仕組みになっているのです。その結果、市民負担の行き先はSPCの利益に変わります。SPCに出資する企業や投資家が潤う仕組みなのです。このことは近江八幡市で既に問題となりました。

 また、こども病院が異常に高い建設費にも利権の影が見え隠れします。福岡市の計画では、病院建設はSPCに任せ、30年間賃料を払い、30年後に無料で譲渡されることになっています。病院建設が高ければ高いほど賃料を高く設定でき、SPCの利潤も大きくなります。近江八幡市では、地方債の金利は2%程度であるにもかかわらず、病院建設のためのSPCの借入金利は5.37%と異常に高い設定になっていました。理由は市中の借入金利1.8%にSPCの儲け3.57%を組み込んでいたからです。高い建設に高い借入金利、全て言い値で賃料に組み込まれたのです。ここにも利権の影が見え隠れします。

 更に、SPCはより高い委託料を確保するために過大な事業計画を立てます。福岡市でも現在55億円程度の収入しかないにもかかわらず、人工島に移転すれば、周産期医療を始め救急医療など診療科を増やし、外来患者が増え、入院患者が増え、ベット利用率も上がり、84億の収入になるとしています。しかし、その根拠は極めていい加減であり、医師の確保のみ通しもないにもかかわらず、過大な計画を立てているのです。また、周産期医療など高度な3次医療が占める割合が増えれば増えるほど病院経営は厳しくなります。高度な3次医療を支えるためには外来患者が増える必要があり、交通アクセスの問題は病院経営に大きなウェイトがかかります。人工島移転は病院経営の実態に逆行する過大な事業計画を立ていますが、たちまち破綻することは目に見えています。このようにPFIは投資ファンドの良い餌食といえます。

 福岡市が6月議会にPFI導入を議会に上程する要諦でしたがやめました。近江八幡市などの事例からPFI導入の規模を縮小することを検討すると報道されています。6月議会に福岡市が提案できなかった背景にはPFIの縮小によりうまみがヘリ、PFIを受ける企業や投資ファンドが撤退したのではないかとも言われています。PFIの生みの国であるイギリスの国会でも、保守党が労働党に医療センターでのPFIは公費の負担が大きすぎると問題にしています。こども病院はこどものため、市民のために抜本的な見直しが必要なのです。