こども病院運営方式PFI導入は市民を馬鹿にしたもの

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 吉田市長はこども病院の事項と移転に伴う事業方式について、病院建設および施設管理、利便施設提供をPFI方式で導入するとしています。当初は医療業務以外のほとんどをPFI方式としていましたが、滋賀県近江八幡市や高知市における医療センターのPFIの破綻など、医療センターにおけるPFIの破綻の状況を見て、6月議会提案を延期し見直しをして改めて9月議会に提出したものです。

 今回の提案はPFI事業資金の9割を福岡市が調達するというものです。議会では議員から何故9割の資金調達なのかという質問に、福岡市は100%ではPFIではないと国に指摘されたからと答えてています。全くばかげた答弁としか言いようがありません。そもそもPFIとは民間の資金を活用し、民間のノウハウを活かして経営の効率化を図り収支を黒字にするというものです。PFIなのに何故福岡市が9割の資金調達を行い、事業者に貸し付けるのでしょうか。ここの利権が見えてきます。

 そもそもPFIでやれば経費が節約できるとしていますが、その根拠はどこにも示されていません。 PFIの発祥の地であるイギリスでは、既に5年前から医療センターにおけるPFIはリスク分担ができない、公費の負担が大きすぎると国会で問題になっていました。医療センターでのPFIは、医療業務は自治体が行いそれ以外をSPCに委託します。委託費は固定で支払われ、医療収入に合わせて変更はできません。医療収入が不安定であれば、長期にわたる契約は確実に病院経営を圧迫し、一方SPCは固定の委託料を得るため確実に利益を上げます。イギリスでは、30年実施の結論として「公共事業は資金調達方法や運営に問題はあるがPFIでやる意味はない」という意見まで出ています。

 PFIではファウンドが資金を集めSPCを構成し事業を受託します。投資家に対して確実に利益を保証するため、受託料は定額であり、事業を効率化させます。効率化を図り利益を最大するためにSPCは関連会社を使い、下請けを徹底的に絞ることになります。近江八幡市の事例を見ても、SPCは委託費を高く設定するために事業計画を過大にしています。また、受託した業務はSPCの関連会社に業務を発注しています。PFIの本質はファウンドによる事業の受託であり、株主の利益を最大にすることにあります。PFIは財政運営を平準化させるという意見もありますが、これはむしろ自治体の財政の仕組みに問題があるのであり、公会計の仕組みを変える必要があります。

 いずれにしても、今回のこども病院のPFI導入はとてもPFIといえる代物ではありません。病院移転事業に伴う利権構造が見え、まさに市民を馬鹿にしたものです。こども病院をこのようなPFI方式で運営することは、まさにこども病院の人工島移転事業がこどものためでも市民のためでもないことを証明しています。こどもの命が、破綻した人工島事業の穴埋めと移転に伴う事業の利権によって食い物にされようとしているのです。

今回のこども病院PFI導入の問題点をまとめると、

問題1 
 福岡市が資金調達して事業者に貸付、事業はこの資金を借り受けて病院を建設し福岡市に病院を貸し賃貸料を取りますが、福岡市が自ら調達した資金で病院建設をすればすむものを何故こんな回りくどいことをするのか。SPCは福岡市の借入金利に更に金利が上乗せされ、それがSPCの利益と併せて病院の貸付料に反映されることになり、自前で建設するよりも一段と高くつく。もし福岡市がSPCへの貸付金利をゼロにするとすれば、福岡市の借入金利はそのまま市民負担となる。いずれにしても市民にとっては市民負担が増えることになる。

問題2
 清掃や警備、利便施設については、PFIとしてSPC(特別目的会社)に一括して委託するよりも福岡市が調節契約した方が間にSPCが入らない分安いはず。清掃や警備、利便施設の業務は受託したSPCは直接業務をする訳ではなく、下請けに外注する。福岡市がすれば事務費等がかかるとするなら、SPCも同じ筈である。SPCに委託すればSPCの利益が上乗せされ費用は高くなることは必然。PFIであれば安くなる根拠はない。むしろ高くつく。

問題3
 民主党は議会で資金が平準化すると言うことで賛成を表明しているが、9割も資金を福岡市が調達するのであれば自前で建設しても同じである。せいぜい1割の効果しかない。

問題4
 当初の計画ではPFIでやれば85億円の節約になるしていた。今回の見直しでは17億円の節約になるとしているが、いずれもその根拠はどこにも示されていまない。それどころか、PFIでやるのにどうして17億円の赤字を出す計画なのか、一般会計からの毎年12億円の繰入を含めると実質30億円の赤字を30年間出し続けることはおかしい。

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福岡市によるPFIの概要(福岡市HPより)
1.事業の概要
① 事業方式:BTO (建設後、PFI事業者から地方独立行政法人に所有権を移転)
② 事業期間:19年4ヶ月(運営期間は15 年1ヶ月)
③ 資金調達:施設整備費用の約1割を民間資金、約9割を起債で調達
④ 対象業務:ア)施設整備業務(設計、建設、工事監理)
       イ)施設管理業務(建築物保守管理、設備保守管理、清掃・衛生管理、保安警備)
       ウ)利便施設運営業務
2.事業スケジュール(予定)
① 入札公告 :平成21 年12 月
② 地方独立行政法人移行 :平成22 年4 月
③ 事業契約の締結 :平成22 年12 月
④ 設計・建設・準備期間 :平成22 年12 月~平成26 年2 月末
⑤ 開院予定 :平成26 年3 月1 日
⑥ 維持管理期間 :平成26 年3 月1 日~平成41年3月末
⑦ 引継期間 :平成41年4 月1 日~平成42年3 月末