検察審査会に再審を申し立て

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 福岡市が現地建て替え費用を1.5倍に水増して市民に「現地立替は高くつくのできない。」と説明した件に関し、その根拠となるゼネコン3社に対するヒアリングのメモおよび資料の毀棄について、市長外3名を公用文書等毀棄罪で刑事告発していましたが、去る11月19日に福岡地検は不起訴処分にしました。不起訴の理由は嫌疑がないというのではなく、証拠が十分集まらず、公判が維持できないということです。私たちは、本日25日に福岡第1検察審査会に審査申し立てを行いました。法制度が変わり、検察審査会の委員は11名全員が国民から抽選で選ばれます。審査会が2度起訴処分に審判すれば、選任された弁護士が起訴することになっています。国民の目線で事件を見極め、起訴処分になることを期待しています。以下申し立ての理由です。

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不起訴処分を不当とする理由

1.公用文書毀棄罪の公訴を求めたのですが、11月19日検察庁は「起訴し公判を維持する足りる証拠を集められなかった」との理由で不起訴処分にしました。本当に証拠集めに尽力したのでしょうか。市長や副市長そして関係市職員を検察庁に呼んで事情を聴いたり、データを消去したコンピューターのCPUを押収・検証するなど、鋭意な捜査が行なわれたのか疑問が残ります。
告発に関して追加資料を提出する度に検察庁に赴き、担当検事に捜査の進捗を聴いたのですが、「捜査を進めています。」という心許ない答えしか返ってきませんでした。等閑な捜査しか行なわれなかったのではないでしょうか。
検察庁が受理した告発状には2009年2月9日付の福岡市長の公文書非公開決定通知書(総企第366号)の写しを添付しています。その通知書には、この市職員の廃棄行為が公用文書等毀棄罪に当たるとして刑事告発した所以なのですが、「公文書を請求しない理由」としてゼネコンから取得したローリング費用や福岡市職員の聴き取りメモなど「当該文書は既に廃棄済である。」と明記されています。公用文書は最初からなかったのではないのです。福岡市は公開請求した公用文書を一旦作成・保有していたのは事実であり、その後「廃棄」したのです。「当該文書は廃棄済みである。」との記載がある公文書非公開決定通知書だけを証拠にしても、また、告発状に記したとおり、添付した09年1月23日の読売新聞紙面によると担当職員はデーターをコンピューターから削除したと取材に答えているのだから、誰の指示によって削除したのかを明らかにすることによって公用文書等毀棄罪(刑法258条、工務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀損棄したものへの罰則規定、検察庁の不起訴処分通知書に罪名として公用文書毀棄と公電磁的記録毀棄を列記、以下「公用文書等毀棄罪」と表現)での起訴立件は可能です。

2.一体、検察庁は地方自治に於いて、福岡市職員による公用文書毀棄の重大性をどのように認識していたのでしょうか。刑法ではこの犯罪に対して「3月以上7年以下の懲役に処する」と重罪で対処しています。公用文書毀棄罪の規定は地方自治の本旨を全うするために不可欠な行政作用を担保しているのです。それを公務員たる福岡市職員が犯罪したのです。地方自治の原則を踏みにじった犯罪行為を、立件の努力もせずに不起訴処分にしたのは全く不当です。

3.ここで、改めて公用文書毀棄罪規定の所以を記します。先ず、刑法40章【毀棄及び隠匿の罪】では文書の毀棄については、今回の告発に際し適用した第258条(公用文書等毀棄)のほかに第259条(私用文書等毀棄)の罪刑が規定されています。同じ文書の毀棄でも前者は法定刑が重く、公務所の用に供する文書の方がその他の文書よりも大事に保護されています。また、公用文等毀棄罪は第264条(親告罪)から除外されています。福岡市職員の「公用文書毀棄、公電磁的記録毀棄」が福岡市政の根幹に抵触し、憲法や地方自治法付与の法益が損なわれることを防止乃至回復するという公益保護のために国民・市民一般に告発権を確定しているのです。告発権をこのように付与することによって国政と地方自治上の不正な違法状態を是正する権利を国民・市民一般に保障しているのです。しだって、今回の不起訴処分はこの国民・市民の権利を全うさせないことによって、不正な違法状態を是正する検察の役割を全うしていないことにおいて不当です。
ところで、第258条の謂う「公務所の用に供する文書又は電磁的記録」とは、公務所で使用中または使用するために保管中の文書すべてを指すとされていますので、いわゆる公文書だけではなく私文書であっても、これに含まれることになります。前述の公文書非公開決定通知書(総企第366号)で福岡市は非公開の理由として「当該文書は個人的なメモであり、公開請求の対象となる公文書には該当しない。」ことを挙げています。告発人らはメモも公文書を構成し公開請求の対象であると主張していますが、福岡市の謂う「個人的なメモ」も福岡市が保管する公用文書に該当することは言を俟ちません。
因みに、最高裁判所は1976年、「昭和51(あ)1202 暴行、器物毀棄、公務執行妨害、公文書毀棄被告事件」で次ぎのように伴示しています。判決より抜粋します。   
 「おもうに、刑法二五八条にいう『公務所ノ用ニ供スル文書』とは、公務所において現に使用し又は使用に供する目的で保管している文書を総称するとすることは、つとに当裁判所の判例(昭和三七年(あ)第一一九一号同三八年一二月二四日第三小法廷判決・刑集一七巻一二号二四八五頁)とするところであるが、当該公務員が公務所の作用として職務権限に基づいて作成中の文書は、それが文書としての意味、内容を備えるに至つた以上、右にいう公務所において現に使用している文書にあたるものと解すべきである。」

4.次ぎに、今回の公用文書等毀棄罪告発が福岡市立こども病院の人工島移転の福岡市政上の不当・違法状態摘発のなかで、どのような位置にあったかを記し、今回の検察庁の同不起訴処分がいかに、市立こども病院の人工島移転過程疑惑の司法究明を期待していた市民の期待と・希望を踏みにじったものであったかを記します。
 吉田宏候補は市立こども病院の人工島移転計画について根本的の見直すことを公約にして市長選に勝利し、福岡市長に就任しました。福岡市民が人工島への移転に反対しているからこそ得た勝利でした。翌2007年、福岡市は副市長を本部長とする市庁内部の「人工島事業検証・検討チーム」を組織し検討しましたが、人工島移転改築を最適とする最終報告を受け、市長は人工島移転を福岡市の方針としました。しかし、2007年の8月にゼネコンから事情を聴いて現在地建替費用を再見積もりしたと議会答弁していましたが、それより以前の7月27日に開催された第17回検証・検討チーム会議の配布資料には、コンサルタントのpwcアドバイザリーが見積もっていた85.5億円が1.5倍の128.3億円に変更・印刷された会議資料が配布されていました。ではなぜ、見積もりが1.5倍になったのか、どこのゼネコンから聴き取りをしたのか、それは何時なのかは、福岡市のこども病院の人工島移転決定の真相を正しく知る上で不可欠な市政情報なのです。この真相を明らかにするために告発人らは公文書公開請求を行い、公用文書等毀棄罪で刑事告発したのです。
 したがって、告発人らは公用文書等毀棄罪の立件を通して、こども病院の人工島移転の決定疑惑が解明されることを期待していました。期待していたのは告発人らだけではありません。患者家族の方、医療関係者の方、弁護士の方そして多くの市民の方々が公判での証言などから真相が得られることを期待していました。なぜなら、こども病院の人工島移転は患者とその家族に一層大きな経済的負担を強いるものであり、大方の患者からこども病院が遠くなることによって助かる命が助からなくなるという致命的な欠陥を持つ行政だからです。まさしく距離も医療の質なのです。福岡市はこども病院を人工島に移転すれば毎年17億円の赤字が発生するとしており、30年間で約900億円の赤字が発生しびょういんけいえいしだいでは、ふくおかしの財政破綻を危ぶむ声さえ挙がっています。福岡市は広い人工島に写すことが医療の充実の決め手のように宣伝していますが、医療現場では産科・小児科・麻酔科の医者不足が常態化しておりこの解消策が優先課題なのです。医療機関の東部偏在助長と相俟って、こども病院の人工島移転は医療現場を混乱・悪化させる一方なのです。
こうした福岡市の医療行政を質すための大きな手がかりを市民が得る機会が、公用文書毀棄罪の立件・公判だったのです。福岡市の医療現場混乱を収束させ、福岡市と市民を財政破綻から救う絶好の機会を失いかねない不起訴処分は不当です。
 福岡市長はこれまで、このこども病院の人工島移転疑惑について、説明責任を果たしてきませんでしたが、起訴され裁判が行なわれれば、司法の力によって福岡市に説明を求め回答を求めることや証言させることも出来ました。これらの点からも今回の不起訴処分は不当です。

5.検察庁が不起訴処分にした不当性は、「法律による行政の原理」とりわけ「法律の優位の原則」に違反した福岡市の行政を摘発・是正しようとした告発を受理しながら、公訴してその不正をただし、社会正義を全うさせるという検察庁が国民から付与された社会的使命・役割を没却・放棄したことにあります。「法律の優位の原則」とは、いかなる行政活動も法律の定めに違反してはならないという原則で、この原則は全ての行政活動に適用されますが、今回のこども病院現在地建替再見積に関る疑惑の告発事実は、政策決定を後の検証・検討に耐えうるために保存しておかねばならない証拠種類たる行政文書を故意に毀棄したことは「法律による行政の原理」、「法律の優位の原則」に違反する犯則行為なのです。なぜなら、かかる行政文書は「福岡市公文書の管理に関する規則」と「福岡市公文書規程」によって保管が義務付けられた公文書であるにも拘わらず違法にも毀棄されたからです。また、「情報公開法」1条の目的にも違反します。同法は5条で行政機関の長は開示請求された行政文書は「不開示情報」を除き「公開しなければならない」と規定しています。本件毀棄公文書は「不開示情報」の規定に該当せず、かつ当初作成・保有され、後に廃棄されたのですから同法に違反し「法律の優位の原則」に違反します。また、告発状に添付している「福岡市公文書の管理に関する規則」は第2条で、「公文書」を「職員が職務上作成し、また取得した文書、図画、写真、フイルムおよび電磁的記録であって、職員が組織的に用いるものとして本市が保有しているものをいう。」(抜粋)と定義し、第3条で「公文書は、すべて正確かつ迅速に取り扱うとともに、常に整理してその所在および処理状況を明らかにし、適正に管理しなければならない。」と取扱責務を定めています。今回の公用文書等毀棄はこの規則にも違反しています。
 検察庁は公用文書毀棄罪の立件を通して、福岡市政の「法律の優位の原則」の没却・逸脱を正すべきだったのです。この意味からしても、不起訴処分は不当です。

6.また、国民・市民には国政・市政の情報を知る権利があります。これは憲法21条の表現の自由の規定や「情報公開法」及び「福岡市情報公開条例」の規定で権利として保障されています。今回の公用文書毀棄はこの国民・市民の知る権利を侵害しました。福岡市は市政を市民に説明する責務を果たさず、よって市民の的確な理解と批判の下での公正で民主的な行政の推進に資するとする「情報公開法」の規定に背き、市民の権利を奪ったのです。因みに「福岡市情報公開条例」は、第1条で「日本国憲法の保障する住民自治の理念にのっとり、市民の知る権利を具体化するため、公文書の公開を請求する市民の権利を明らかにし、あわせて情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより、市の保有する情報の一層の公開を図り、もって市政に関し市民に説明する市の責務が全うされるようにするとともに、市民の監視と参加の下にある公正で開かれた市政の推進に資することを目的とする。」と規定しています。本件公用文書毀棄罪の公訴・公判による立件はまさしく、この奪われた市民の権利と住民自治を回復する検察の任務だったのです。この意味からしても、不起訴処分は不当です。

7. さらに、行政を進める上で、法律に基づいて適切な手続きをする適正手続きの要請は憲法31条に由来するものですが、本件公用文書毀棄は、上記のとおり法律に違反して進められたこども病院の人工島移転行政での決定的な手続き違反なのです。こうした瑕疵をそのままにしてこども病院の人工島移転計画が進められることは許されません。この意味からしても、本来違法行為を摘発すべき検察庁による本件不起訴処分は不当です。

(備考欄に記載します)
要望 11月に告発人らは福岡市情報公開審査会で意見陳述を行ないました。これは、今年三次にわたって原告らが福岡市に、こども病院の現在地建替費を1.5倍にした根拠公文書の公開請求したところ非公開処分とされた異議申立に関連して、福岡市長からの諮問に答申するための福岡市情報公開審査会が開催したものです。近いうちに、その答申が公表されます。検察審査会の審査に反映していただきとう存じます。