福岡市財政と人工島事業

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 破綻した人工島事業のツケは既に一般会計から様々に形で支出されています。このまま続ければ港湾整備特別会計の赤字補填に一般会計から繰り入れが行われることになりかねません。いっそう厳しくなる財政状況で、そのしわ寄せは市民サービスの低下と負担増につながります。だれも責任を取らない、全て市民が割を食ういまの制度を改めるためには、サンセット方式など事業途中でも中止する仕組みが必要です。地方分権が進む中で、市民の監視と議会の責任が問われています。

1、人工島の歴史
1989年 
  人工島計画(1978年港湾計画では東部地区は全面埋立)
  ①港湾の整備。国際コンテナー埠頭の強化
  ②東区の交通渋滞解消
  ③良好な住環境の都市空間を造る
  ④新産業の集積 
1992年
  12万人の博多湾埋立中止を求める請願を提出
  ローマクラブin九州を福岡市で開催
  福岡市が市民意見発表会開催 埋立反対の意見が続出
1993年
  第3回ラムサール条約締約国会議、釧路で開催
  国内外の環境保護団体が博多湾の埋立反対と登録湿地にすることを求めた
1994年 
  4月8日、建設省が埋立を認可
  環境庁は「博多湾は重要な湿地」と異例の意見書を提出
  福岡市は埋立免許を許可
  7月11日 着工
1995年
  埋立公金支出差し止め訴訟
  その後の判決は敗訴であったが、「福岡市のアセスは非科学的、見直しは政治的決断
  としてあり得る」と異例の意見が述べられた。
1996年
  環境庁が福岡市に博多湾をラムサール条約登録湿地にすることを打診、市長は断る
1998年
  山崎元市長が「引き返す勇気を持って見直しをする」と公約して市長に当選
1999年
  人工島事業の見直し。結論は事業を続けても43億円の黒字となるとウソの報告。
  博多港開発は200億円の赤字と報告、これを隠した。
2000年
  日本勧業銀行はこのままでは100億円の赤字になるとして融資から撤退検討
2001年
  山崎市長は銀行団と日本勧業銀行宛に「銀行には決して損はさせない」と念書を書く。
  新生銀行、あおぞら銀行、鹿児島銀行が融資から撤退、信託銀行5行も撤退を検討
  銀行団に損失補償を具体的に約束、人工島事業の新計画策定
  ①随時返済(土地が売れたときに融資を返済)から土地張付約定返済(返済期日に合
   わせて売却する土地を決め期日に返済返済)に変更。
  ※福岡市が銀行の融資に対する保障として福岡市が土地売却を担保
  ②福岡市が博多港開発に対する200億円の緊急貸付枠を予算化する。      
  ③道路や公園用地を公共事業として福岡市が土地を購入し整備する。
  ④博多港開発の資本金を4億円から64億円に増資。
   福岡市30億円増資 02年に6億円、03年に24億円)
2002年
  新計画が議会で承認、具体的な損失補償として売れない土地を買い始める。
  11月、ケヤキ庭石事件発覚
  ※ケヤキ1本100万円で600本を、庭石1トンを3億6千万円で博多港開発に買
  わせ、西田元市議会議員は約5億円を得る。議会は100条委員会を設置、福岡市は
  特別背任で告訴。刑事裁判で元志岐助役・当時社長ともと西田市議会議員、大場常務
  は有罪となる。
  12月、こども病院と市民病院との人工島へ統合移転検討を始める
2003年
  人工島に「トトロの森・照り葉の街」を計画。宮崎駿監督は拒否し計画は頓挫。
2004年
  福岡市住宅供給公社の土地を積水ハウスグループに7万円/㎡で一括処分。そのため
  博多港開発は住宅供給公社に戸建部分を3万円/㎡で処分、その結果50億の赤字。
  銀行団は博多港開発第2工区を福岡市が購入するよう求める。福岡市は埋立が始まっ
  たばかりの博多港開発第2工区(現市5工区)を3999億円で購入する計画に変更。
  人工島の住宅販売促進のため、人工島で都市緑化フェアーを開催。
  福岡市は41億のうち円30億円を負担。
2005年
  人工島事業を見直し、博多港開発第2工区を399億円で購入。
  3月20日福岡県西方沖地震 人工島液状化
  山崎元市長、福岡市にオリンピック招致を表明、
2006年
  市民の反対運動でJOCはオリンピック開催地の候補地を東京に決める
11月吉田前市長がこども病院人工島移転見直しを公約し当選
2007年
  人工島事業及びこども病院の検証検討を行う。結論は従来通り進める。
   こども病院現地移転費用を1.5倍に水増して報告。
2008年
  9月議会で人工島にこども病院移転予定地購入を議決
  こども病院の人工島移転の是非を問う投票条例制定の直接請求を行う
  市長は反対、議会も否決
2009年
  こども病院人工島移転撤回を求める市民会議を結成
  現地建て替え費用を1.5倍に水増ししたことで関係者を刑事告発。受理されたが証
  拠不十分で不起訴となる。
2010年
  こども病院移転住民監査請求、その後住民訴訟を提訴
  高島市長がこども病院を「白紙で検討する」と公約し当選
2011年
  1月市長は「こども病院移転計画検討委員会」設置し見直しを始める。
  3月11日東日本大震災
  宮城県立こども病院長林委員は検討委員会で「東日本大震災を経験した医師として、
  人工島は不適」と発言
国の中央防災会議でも「病院等重要な施設は海岸部に造るべきでない」と答申
  5月市長はこども病院及び人工島事業は従来通りと結論
  人工島事業についての「未来フォーラム」を開催。参加者から「人工島は売れない。
  地価を下げるべき。補助金をもっと上げるべき。的借地権を導入すべき。」という意
  見が相次ぐ。
2012年
  福岡市は人工島事業の収支計画を見直す。人工島の土地評価額を評定した結果13万円/㎡
が9.7万円/㎡となったことを受けて、地価を下げ、敵借地権を導入して見積もりを出した。
その結果、人工島事業は160億円の赤字となると発表。しかし同時に見積もった試算では、
  最悪のパパターンは421億円となっている。
3月予算議会では企業立地促進条例が可決し、これまで企業立地交付金は1件の上限
  が10億円であったものが上限を30億円になった。さらに予算案では、企業立地交
  付金総額は4年間で265億円とし、そのうち260億円を人工島で使う計画となっ
  ている。

2、福岡市の財政(2012年度予算から)
○2012年度予算 1兆8417億円 前年比3.4%減(一般会計はほぼ横ばい)
 市税収は頭打ちが減少傾向
 義務的経費は増額
 社会資本の維持管理費の増大
 →財政硬直化
○市債発行残高 2兆4756億円(前年比126億円減)市民一人当たり171万円
 毎年2000億円強の借り換えが行われており、金利が上昇すれば財政はたちまち苦し くなる
○財政調整基金 98億円(ピーク時942億円)
 かろうじてこのレベルを維持している。いざというときには十分と言える状況ではない。
○臨時財政対策債の問題
 地方交付税の約半額が起債による(2012年度829億円の内394億円が起債)
 借金を借金で返す仕組み、借金が減らない構造になっている。
 国債発行残高782兆円、その他の債務を合わせると958兆円(2012年2月)
 このような状況で将来交付税が約束通りに交付される補償はない
 
3、人工島事業の破綻が一般会計を圧迫する
 現在でも一般会計から人工島事業に多額の税金が使われている。
■まちづくりエリアにおける税金投入額実績(埋立費用とは別の経費)
2010年度決算時まで
①用地購入(国/市)
 中央公園用地          121.6億円
 こども病院(土地のみ)      44.4億円
 学校用地(土地のみ)       43億円
 博多港開発第2工区(市5工区) 399億円
小計               608億円
②補助金(国/市)
 住宅市街地総合整備事業 53.3億円
立地交付金        2.5億円
まちづくり交付金     0.1億円 
小計            55.9億円
③公共事業(国/市)
道路(用地費+工事費)  124.3億円
下水道(用地費+工事費)  35.3億円
 中水道           18.1億円
 外周護岸          15億円
 公園整備   54.3億円
小計            247億円
合計①+②+③       964.2億円(借入金利は含まない)
■港エリア
 青果市場用地 54億円
 道路・下水道等整備

4、今後の財政問題
○人工島事業の見直し 
 ●160億円の赤字
 地価の下落 港湾地区 13万円/㎡→9.7万円/㎡ 
 定期借地権設定
 ●最悪421億円の赤字
 →人工島に市の施設、港湾局の土地(マリンメッセ周辺、香椎パークポート)を市が購入
  これか形を変えた市民負担
○2015年には399億円の返済
○企業立地交付金の増額 
 一件の上限30億円 人工島に4年間で総額260億円の予定
 企業立地交付金条例は出来たが、上限額の記載はなく、運用は規則に委ねられている。
 →増額の歯止めがない
○総合体育館の移転計画
 市立体育館(吉塚)と九電記念体育館を廃止し、人工島に新総合体育館を移転建設計画
 メインアリーナ2600㎡、サブアリーナ1700㎡ 駐車場500台 敷地5㏊
○様々な施設の建て替え
 市民会館の建て替え、児童館の建て替え、少年文化会館の移設・建て替え
 こども病院建設、地下鉄七隈線延伸400億円、五ヶ山ダム建設500億円 
青果市場の建設 給食センターの統合移転(香椎パークポート)

5、こども病院の問題
 ○立地の問題(中心部から外れる、周辺環境の悪化)
  地域医療としての機能低下、港湾施設の前(騒音、排ガス、光、セアカゴケグモ)、
  周辺の渋滞問題、公共交通機関、地震の問題(液状化、孤立化)、海岸のそば(津波)
 ○入札の問題
  ・1社しか応募がない→競争がない(評価点84~28点、平均60点でも落札)
  ・落札したグループの中心日本管財は市の指定管理業務で悪質な契約違反
  ・市が建設費の90%を負担、来れでもなぜPFIとして事業を行うのか
 ○毎年17億円の赤字→一般会計からの繰り入れ
  計画に比べて利用者が減ると言われている、赤字はこれだけで収まるのか
 ○独立行政法人にしたことで市民の目には見えにくくなった←市議会の関与が大幅減