他都市調査報告

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4月19日(木) 世田谷区

目的
 世田谷区は景観法が制定される以前から国分寺崖線を軸に景観形成と緑化の取り組みをしてきた。市民との協働での取り組みは先進的である。福岡市景観法に基づき景観計画を策定したが、百道浜や人工島などを景観形成地区の指定していることを見ても分かるように、単にこれまでの都市開発の延長線上しかない。いわば福岡市の将来の都市像は創造性に欠け、モザイク模様の哲学がないものである。世田谷区のと陸は学ぶところが多い。近々中には実地調査をする予定である。

1風景づくり条例に基づく取り組み
1)風景づくり条例制定の経緯
 世田谷区の構造として環状7号線と環状8号線によって3のエリアに分かれている。東京都の再西部に位置し,環状8号線以西は農村地域が残っており、多摩川沿いの国分寺崖線と呼ばれる河岸段丘の緑地が多く残っている。
 東京都23区は都の都市計画で位置づけられており、昭和44年まで環状8号線以西は緑地地区と指定されていた。昭和44年に法改正で緑地の指定がなくなり、土地区画整理事業が始まり,開発が進んだ。区民の緑地保全の意識が高まり、昭和55年に世田谷区に都市美委員会が作られた。区民と行政との協働のまちづくり活動が進められ、その積み重ねの上に平成11年に「風景づくり条例」が制定された。平成16年に景観法が出来、景観法を生かしてまちづくりを進めるために平成19年に都内で初めて景観行政団体となり、平成20年には「風景づくり条例」改正、「景観計画」として「風景づくり計画」を策定した。区、区民、事業者で風景づくりを進めるとしている。

2)風景づくりの活動
 風景づくり条例が出来る前には区民による風景100選が選ぶなど身近な風景を残していく活動がなされてきた。「風景づくり条例」が制定され、風景づくりの仕組みが更に整備された。平成14に第一回風景遺産が区民参加で36ヶ所を指定、平成19年に第2回風景遺産30ヶ所を選定、5年ごとに風景遺産を選定する計画となっている。今年度は風景遺産選定10年と言うことでイベントを計画中。
 風景遺産選定の仕組みは、区民が推薦人として風景遺産として残すべき場所を推薦し、区民のサーポーターとともに「風景づくりプラン」を作る。選定委員会は推薦に人とともに現地調査を行い選定する。「風景づくりプラン」は風景づくりの活動計画で、選定後も風景づくりの活動を行うことになっている。
 風景づくり条例では区民の自主的な活動を支援するために、風景遺産の指定の外、ご近所の3名以上で行う風景づくり活動として「界わい宣言」、風景づくり活動を行う自主的な活動団体を「風景づくり団体」として、それぞれ区が認定し登録する制度を作っている。登録した団体には必要があれば「風景づくりアドバイザー」の派遣などの支援をしているが、金銭的な支援はない。昨年は風景づくり団体に50件の風景づくりアドバイザーを派遣している。その他、風景づくり団体の活動支援として共同のイベントや広報活動を行っている。界わい宣言をしている場所は3ヶ所、風景づくり団体は7団体が登録されている。

3)景観計画策定後
 景観法を活用するために世田谷区全域を地域指定し、景観計画として「風景づくり計画」を策定、一般地区と重点地区に分けている。重点地区は景観計画地区として国分寺崖線エリアを「水と緑の風景軸」に定めた。一般地区と重点地区それぞれ地域の歴史や特性の応じてに風景づくりの基準が設けられている。一定規模(一般地区は3000㎡、重点地区は500㎡)の開発行為を行うときに届け出が必要であり、重点地区の「水と緑の風景軸」は厳しくなっている。一定規模の開発を行う事業者は届け出とともに地域住民への説明が必要としており、事前協議においては区が認定する景観デザイナーを交えて行われる。これは住民、事業者、区が協力してまちづくりを行う仕組みにとしている。このことが事業者を育てることにもなっている。

2、みどりの基本条例に基づくの取り組みについて
 区民の環境保全意識の高まる中、昭和52に「自然環境の保護及び回復に関する条例」を作り開発の規制を始めた。建築基準法等の規制緩和により、国分寺崖線エリアの赦免緑地の開発我を抑制するために、平成17年に「自然環境の保護及び回復に関する条例」を「世田谷区みどりの基本条例」に改正し、併せて「国分寺崖線保全地区整備条例」が作られた。斜面緑地の開発を規制し景観形成を測るために、500㎡以上の開発行為については届け出制とし、階段上の高層建築物の抑制と景観の調和を図ることを求めた。「世田谷区みどりの基本条例」では建築物に応じて緑化を定め、緑被率を付置義務とした。みどりの基本条例では敷地250㎡以上の開発行為は緑被率が決められ、「緑化計画書兼緑化計画適合証明申請書」の提出が義務づけられた。
 更に平成20年には「みどりとみずの基本計画」を策定し、区政100周年を迎えるの平成44年年に世田谷区の「みどり率を33%」にする長期目標「世田谷みどり33」を設定した。「世田谷みどり33」を実現するために、平成22年に都市緑地法に基づく緑化地域制度を導入した。緑化地域制度は名古屋、横浜に次いで3番目の制度導入になる。これまでみどりの基本条例で緑被率を付置義務にしていたが法的拘束力が弱く、緑化地区制度を導入することで300㎡以上の開発行為は「緑化計画書兼緑化計画適合証明申請書」提出が建築基準法で建築確認・完了検査の必須要件となる。緑化地区指定は多摩川河川敷を除く世田谷区全域となっている。敷地面積と建坪率に応じて緑被率が決められている。今日民間による建築申請がなされるケースが8割を超えているが、建築確認の際の緑化が申請通りなされているかは建築確認事業者の依頼を受けて区がしており、緑化について担保されている。
 世田谷区はかっては農村部で環状8号線以西部の地域には農家が多く残っており、「みどり33」に向けて農地の保全することが大きい。200ヘクタールあった農地はここ10年で100ヘクタールに減少している。緑地としての農地を保全するために、農家の営農支援をしている。更に、農地の7地区を重点地区に指定し、相続など処分せざるを得ない状況の場合は区が買い取る仕組みなっている。しかし、財政上重点地区1地区は1ヘクタール程度しかない。
 その他緑地維持・拡大の取り組みとして、小学校の緑化、校庭の芝生化すすめており、5,6校が取り組んでいる。緑化地区制度を利用して、土地所有者と行政が認定する緑地管理機構(世田谷区は(罪)世田谷トラストまちづくり)が契約を行い、屋敷林など民有緑地を区民に開放することを条件に相続税の減免措置などの助成を行うことで緑地保全をしている。保存樹、保存樹林の指定と支援、名木百選の指定などで市民とともに保存活動をしている。保存樹以外でもには「みどりの基本条例」の基準に基づき、増改築などで伐採するときには届け出を義務づけ、移植するときには助成を行う、都市公園の拡大を行っている。最近多摩川そばの工場跡地を都市公園にすることがでた。また、国分寺崖線地域はわき水が多く、わき水の保全にも努めている。しかし、緑化地区制度導入後もみどりは減り続けており、5年間で1%減下している。

まとめ、
 世田谷区では、昭和50年代から区と市民による緑地保全がなされ、先進的な条例をいくつも作ることで制度的にも景観形成及び緑地保全の仕組みを作り上げてきた。景観法の成立で景観形成及び緑地保全がさらに進んでいる。世田谷区の人口は増加しており、景観形成及び緑地保全は住環境の質の向上とともに自治体のブランドとなっている。

4月20日(金) 浦安市

目的
 3.11の大震災で浦安市は液状化による甚大な被害が生じた。浦安市の8割が埋め立て地である。2005年(平成17年)福岡西方沖地震で人工島も液状化している。福岡市は液状化を否定し、またまだ建築物があまりなかったこともあり被害についてはそれほど問題にされなかった。しかし液状化が広範囲に起こっていたことは国土地理院の航空写真で明らかである。近い将来警固断層の直下型地震が予想されており、改めて人工島の液状化問題を検証するために調査にいった。

地震による液状化の被害及び対策について

 液状化の跡が残っているということで京葉線浦安市舞浜駅周辺の視察をした。駅の歩道は30㎝ほど地盤沈下した跡が歩道橋の支柱や階段などに残っていた。その後災害対策本部に移動し話しを伺った。まず、地震当日の液状化の状況を取材した報道ビデオを見た後に説明を受けた。

 浦安市は当初旧江戸川河口の漁村であった。昭和37年に本州製紙会社の汚水流失事件があり、漁業が出来なくなったことから漁業権を放棄し、千葉県の事業として埋立事業が始まった。昭和56年に現状の埋立が終了し、同時に浦安市となった。埋立により市域は元の地域の5倍になった。埋め立て地は京葉線で東京駅から約20分、成田空港まで車で約40分という立地からベットタウンとして宅地化が進んだ。また、埋め立て地の南側は当初から大型商業施設を誘致する計画が作られており、昭和58年にディズニーランドが開業した。現在人口は16万人、7万2千世帯である。
   (浦安市舞浜駅前の液状化の様子)
 昨年の地震では震度5強であったが、本震のあと茨城県沖にマグニチュードⅦ震度5弱の余震が続けて起こったために揺れる時間が7~8分と長かった。揺れが長かったことが液状化の被害を大きくしたものと思われる。当初地震が起こった場合は旧江戸川河口の州に出来ている元の地域が液状化すると予想していた。しかし、この場所ではほとんど被害はなく、市域の86%を占める昭和38年以降埋立をした場所に被害が出た。
 被災者96437人、被害世帯37,023世帯、避難者22,400人,マンションは比較的被害は軽く戸建て住宅に大きな被害でた。東京都をはじめ、近隣自治体の支援がありインフラの復旧は早かった。電気は3月15日、ガスは3月30日、水道は4月6日、下水道は4月15日には復旧した。
 マンションは基礎の杭を基礎地盤まで打ち込んでいたため、建物周辺での液状化や地盤沈下があっても建物そのもの被害は少なかった。戸建ては液状化により家が傾き大きな被害が出た。これまで地震被害に液状化による被害が想定されていなかったため、地震後当初戸建て住宅が被災対象としては小さな被害としてしか認定されなかったが、被害実態が分かるにつれて見直され、120センチの高さから直下に重しを付けてたらし6㎝傾いていれば全壊と見なすことになった。戸建ても基礎の構造によって被害に違いが出ている。
 ディズニーランドは被害はあまりなかったが駐車場は液状化が起こっている。液状化の原因は地盤改良をしているところは被害は少なかったと言われているが、戸建て住宅の場合は構造物重量が軽いため支持地盤強度が低くても良いことから、地盤改良が十分なされず液状化が起こったものと思われる。液状化したところも地震が起これば再液状化する可能性があり、戸建て住宅における地盤改良をどのようにするのかが課題となっている。個別に対応しても効果は少なく、面的な地盤改良が必要であるが、費用の問題が重たい状況である。被災者支援は全壊の家を建て替えるときは400万円の補助、その他か家屋の補修には最大300万円、地盤復旧には最大300円などの補助が出されているが、定年退職後に新たに出費しなければいけない問題や、近い将来新たな地震が起こるとされていることなどから、補助金の申請は進んでいない。そのため平成26年まで事業を延長することになっている。マンションについては共用部分について1世帯当たり3千円の補助をすることとしている。

 地震対策本部は5月から災害復旧本部に衣替えして本格的な復旧対策を始めると言うことである。昨年は市の財源を復旧に優先的に投入してきたということであるが、今年度も復興に力を入れなければいけないが、国の財政状況から十分な支援が続けられるかが心配される。

まとめ
 地盤改良については浦安市液状化検討調査委員会が原因調査と今後の液状化対策について提案をしている。その中で液状化を防ぐためには地盤の水分を排出することが重要とされており、地下水脈の問題、海水の浸入の問題も指摘されている。この点は福岡市の地盤改良のあり方から再度見直しが必要と思われる。
 また災害時の対応で、トイレの問題がやはり問題となったと言うことである。浦安市では仮設トイレを400用意していたが、周辺を布で覆う古層であったため助成の利用者に不評であったと言うことである。また、万初伝は水は使えないが取れそのもの葉の被害がないため、尿や糞便を固形化する袋を使ってもらい、可燃物として処理したと言うことである。これらも参考になると思われる。
 また町内会の加入率が50%しかなく、近隣の助け合いが出来ない状況も課題として言われた。この点も改めて地域コミュニティを維持することの重要性を感じた。