福岡空港増設は必要ない

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 これまでの検討経過の中で、運輸政策機構の需要予測が大幅に外れている状況が明らかとなり、昨年福岡空港の需要予測が見直されました。今回の見直しは運輸政策機構ではないとされていますが、需要予測は相変わらず右肩上がりです。2030年の中位推計では、利用者は1,985万人、2010年度利用者1,596万人の124%増、発着回数は17万6千回、2010年の13万7千回から3万9千回増です。ところが、福岡空港における旅客需要実績は2002年をピーク減少しています。2008年のリーマンショック以前も減少傾向にあり、本来ならば将来予測は減少ないし頭打ちとなるはずです。それがどうして増え続けるのか不思議です。そもそもプラス要因しか要素に含めないという需要予測のあり方が本質的に間違っていると思われます。

 実績の内訳を見ると国内線は2002年1,740万人が2010年には1,353万人に減少、国際線は2002年236万人が2010年は243万人微増、2000年の260万人を見ると頭打ちと言えます。発着回数も2001年14万1千回をピークに14万回弱で頭打ちの状況です。福岡空港国内線の利用者の6割は東京羽田空港であり、これまでも新幹線との競合が指摘されています。新幹線の所要時間も短縮されており、またオイルピークを迎えたと言われ石油価格が高値定着の傾向が見え始めており、燃料費の上昇などを考えると利用者が増える要因があるとは考えられません。
 また、先日日航社長が福岡市に表敬訪問した際、社長は市長に「機材を小型して便数は維持する」と言っているように、機材は小型化しています。需要が減少する中で機材を小型化することで効率を上げており、需要が減少している現状から今後便数が増えるとは考えられません。表を見ても利用者が減っているが発着回数は頭打ちという状況から読み取れます。同時に機材が小型化すれば発着の間隔が短くてすみ、発着容量は増えることになります。福岡空港では飛行機の移動の混雑緩和するため、第1ターミナルをセットバックさせ誘導路を複線化することにしており、国の予算も今年度設計費2億2千万円が付きました。誘導路を複線化することで発着回数は年間1万6千回増やせると試算されています。このことからも滑走路増設の必要性はありません。

 先日格安航空会社ピーチ航空に続いてカンタス航空の子会社が格安航空に参入しました。格安航空会社の参入が利用者増になると言っていますが、これも不確かなものです。高齢化が進み、人口減少が始まる、更に通信技術の進化は移動を減らす要因と言えます。また、経済格差が広がり所得が減少し続けている中でどうして需要が増えるのか不思議です。このような社会的要因我が考慮されず、実績の分析もないまま、GDPの数値を使いプラス要因をのみで計算するシミュレーションは虚構のものと言えます。
しかし、国土交通省は12年度予算を発表し、福岡空港の滑走路増設に向けた環境影響評価(アセスメント)の調査費6000万円を計上しました。これでアセスメントをすることになり、滑走路増設が動き始めたと言えます。滑走路増設費は1,800億円とされています。国の厳しい財政で本当にいま必要な事業なのでしょうか。前に述べたように過大な需要計画を作り、土建会社に利益をもたらすだけでしかないことは明らかです。

 昨年の3月11日の東日本大震災で未曾有鵜な被害を受けた被災者の方々、そして福島原発事故で甚大な被害を被り続けている福島県の人たち、いま必要なことは被災者支援です。多くの方が避難を余儀なくされ、住むところ、そして職を失い、苦しんでいる人たちに税金は使うべきです。無駄な公共事業は止める、これがなぜ出来ないのでしょうか。なによりも、交通をトータルにとらえて交通手段を配置する哲学が欠如していることに問題があるといえます。地元利権の上に作られたモザイク模様の政策(といえない)が無駄遣いをさせています。いまこそ、私たちの手で政治を変えましょう。