公共施設白書

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Ⅱ、公共施設白書について
7月9日(水)
名古屋市
日時 2014年7月9日 10:00~11:00
説明員 三島 薫アセットマネジメント推進室室長 芦刈康宏主幹

1,公共施設白書作成の経緯
名古屋市では2006年(平成18年)に「第3次行財政改革」および「新財政健全化計画」にアセットマネジメント導入の必要性を位置づけ検討を始め、2008年(平成20年)に「アセットマネジメント基本計画」を策定した。翌2009年(平成21年)に、アセットマネジメント推進室(課長級2名、係長級2名、係員4名、建築系技術職、財政系半々の8名で構成)を設置し、2009年から2013年にかけて概ね40年以上の建造物について躯体のサンプルを取るなどの構造耐久性調査をはじめた。2011年に「アセットマネジメント推進のための計画を策定した。建造物耐久調査の結果、1000万平米の施設の内補修により7割が60年に、3割が80年に寿命を伸ばすことが出来ることが分かった。
アセットマネジメント推進プラン(計画期間は2012年から2021年の10年間)では①経費の抑制と平準化②施設の集約化③保有資産の有効活用と財源確保を柱として計画を立てた。計画的な補修で建造物の長寿命化を図る場合、40年で改修するとして40年間でみると年平均854億円が必要となり、現在毎年改修に要している費用434億円を差し引くと毎年420億円の不足になる。躯体調査に合わせて60年ないし80年の長寿命化を図る場合は、10年間はほぼ現状と同じ金額で済むが、10年後からは毎年748億円必要となり、一律40年改修するとした場合と比較して年間106億円の削減が出来るものの、毎年314億円の不足が生じる。
以上の検討から、長寿命化だけでは限界があること、また、高齢化、人口減少、少子化が進むことにより市民や地域のニーズが変わること、今後市財政が増える見込みがないことなどから、公共施設の1割削減が必要と結論づけた。アセットマネジメント推進プラン後である10年後の新たな計画策定に向けて公共施設白書をつくり情報を開示し、市民を含めた幅広い議論に付すこととした。これまでの施設重視から機能重視へ、例えば志木市における小学校建て替え時に公民館と図書館を併設にすることで施設を削減する事例などを提起している。以上の経緯で公共施設白書は今年2014年3月に作成された。

2,公共施設白書
公共施設白書は全施設の建造物耐久調査した結果を初め施設規模、利用状況、維持管理費用などの全ての情報を区毎に載せている。また、名古屋市の人口推移等の社会状況、区毎状況、名古屋市の財政状況、アセットマネジメント計画の説明など、議会および市民に正確な情報を提供している。
今年度に有識者による今後の基本方針をまとめ、市民シンポジウムの開催、市民によるパブリックコメントを経て、来年2015年3月には「市設建築物再編整備の方針」を策定する予定。

3、課題
これまでの公共施設の長寿命化だけでは財政的に限界に来ている。施設の総量削減が必要なことは議会で総論賛成を得ても個別事案では反対がでる。志木市の事例のように、機能を重視し施設の統廃合で利便性を確保する事例を示すなど、特に地域住民に将来像がイメージできようにすることが必要である。また、公共施設の内市営住宅が約5割を占めており、高齢化と共に単身者世帯や高齢者二人世帯が増えることに対しての施策をどのように整合性を持たせていくかが大きな課題としてある。
また、アセットマネジメントとして公共施設の総量削減を進めているにもかかわらず、政策的必要と称して新たな公共施設建設がなされている。市政のトータルな視点から進めるためには、局・区との縦割り行政の壁をなくすことも大きな課題と言える。

所見
高齢化、人口減少、少子化が進むことで市民のニーズが変化する。また、福岡市においても市財政は今後とも増える見通しはなく、公共施設の長寿命化だけでは限界があると思われる。この様な社会状況、財政状況を踏まえ、新たな公共施設の建設抑制、長寿命化から更に公共施設の総量削減の時代に入ったと考えられる。どのように公共施設の総量削減を進めるか、区毎に公共施設を取り巻く様々な情報を整理して作成された名古屋市の公共施設白書は一つの手がかりである。市役所内の縦割りを廃し、明確な総量削減を進める市全体の公共施設政策を打ち立て、市民ニーズとの整合性を図り、全市的な合意形成の取り組みが必要であると考える。また、その対策として志木市の事例は一つの参考事例である。

志木市における公共施設の統合事例
志木市における公共施設の統合事例