2016年度予算案および条例案の反対討論

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私は緑と市民ネットワークの会を代表して、今議会に上程された2016年度諸会計予算案および諸議案の内、議案第39号ないし42号、議案第44号ないし49号、51号、53号ないし57号、59号、61号、65号、67号、74号、75号、78号、83号ないし86号、88号、99号、102号、109号ないし111号に反対して討論します。

まず、2016年予算案関係についての反対を述べます。高島市長は「成長の成果を子どもからお年寄りまで」として2016年度予算を組んだとしています。こども育成費に約53億円、保険福祉費に約62億円増額したと言っていますが、その財源を見ると保健福祉費増額の内の42億円は安倍政権の参議院選挙対策としての低収入年金生活者に対する一人3万円のバラマキ交付金であり、保育士人材確保の財源が100%国の財源に見られるように子ども育成費の財源の多くは国の交付金です。子どもの医療費支援が通院で小学校6年生までで延長になっていますが、3歳児以上は一部自己負担が求められ、その負担額は4.4億円ということですが、負担を求めています。保育園児1800名分の保育の予算化が確保されていますが、待機児童解消には至っていません。また、子どもの貧困対策として新たにスクールソーシャルコーディネーターが3名配置されましたが嘱託です。介護保険や国民健康保険の負担は重くなっており、就学援助の基準が引き下げられ、生活保護世帯に対する下水道料金の減免が廃止されるなど、成長の果実が市民生活の向上に使われるどころか、市民負担は一層厳しくなっています。

他方2016年度予算では、立地交付金は約82億円、人工島関連では約86億円使われ、今後ウォーターフロント開発、天神ビッグバンなどの開発に政策の重点を置き、更に人工島への接続道路に292億円、空港への延伸に約500億円が予定されています。福岡市の成長の果実が市民の生活の質の向上に使われているとは考えられません。

そもそも福岡市の都市の成長とは何だったのか、アベノミクスのおこぼれに預かったに過ぎません。安倍政権は「岩盤規制を壊す」として労働者派遣法の改悪など労働法制の改悪を進めていますが、福岡市は「解雇特区」の指定を受けるなど積極的に安倍政権の「新自由主義経済政策」を進めてきました。PFI事業の導入、指定管理者導入、業務委託の推進、嘱託職員や非常勤臨時職員の採用によって低賃金構造をつくり、福岡経済の基盤を壊してきたと言えます。同時に本来地方自治体が担うべきサービスを民営化することで、市民サービスの低下に繋がっています。小泉政権そしてアベノミクスによって非正規雇用が一段と増え、いまや全労働者の40%に至っています。その結果、国税庁民間給与実態調査によれば、民間の平均賃金は1997年の467万円をピークに下がり続け、2012年は408万円にまでなっています。民間平均給与は官製春闘もあり2013年2014年は上がっていますが、2013年は413万円、2014年は415万円で、ピーク時の467万円には遠く及ばない状況です。官製春闘による大手企業の賃上げがなされましたが、それも陰りが出ています。中小零細事業所の賃金は上がらず、実質賃金は4年間マイナスという状況が続いています。福岡市においても同様の状況にあると推察されます。

福岡市の税収が増えたとしていますがその主たるものは金融、不動産関係で、日銀の金融緩和政策の恩恵を受けたもので実体経済は決して力強いものではありません。日銀のマイナス金利政策は金融機関に悪影響を及ぼし、地域経済にも陰りを与えています。昨年10月から12月四半期のGDPはマイナス1.1%とアベノミクスの破綻が見えており、2016年度も税収が伸びるという予算は問題です。世界経済のエンジンである中国経済は構造的な問題を抱えており、中国経済の衰退は世界経済を揺るがし始めています。中央埠頭整備に10億円かけインバウンド消費を当てにする財政および開発政策は見直すべきです。市長は国に法人税減税を求めていますが、減税すれば経済が活性化するという事実は世界的にありません。むしろ財政悪化を招きひいては経済を悪化させます。世界で格差が拡大し、貧困が広がっていることに、OECDをはじめ各国は世界経済の成長に懸念を示しています。法人税の増税や税制の見直しにより財源を確保し、再分配の仕組みを作ることが経済の基盤を強化します。

福岡市は大企業優先の法人税減税を求め、国外からの企業誘致に税金を費やすよりも、公契約条例制定による低賃金構造に歯止めをかける、小規模修繕工事登録制度や住宅リフォーム助成制度を創設し地場中小企業を支援することが重要です。格差と貧困をなくす公正な社会こそが経済の安定をもたらし、安心・安全な社会をつくります。地方自治体の本旨である住民の福祉の増進を図るために、安倍政権に追随した「解雇特区」などは取りやめ、超高齢社会、人口減社会、成長なき社会を見据えた成長管理政策を進めるべきです。また、第一次産業の崩壊させるTPP、食品添加物や農薬の基準を緩和させ市民の健康を侵害させ、自由診療の拡大により国民皆保険を崩壊させるTPP、更に地方自治をも侵害するISD条項があるTPPは、住民の福祉の増進を図る地方自治体として国に批准をやめるよう求めるべきです。

市長は「圧倒的な福岡の時代が始まる」と繰り返し言っていますが、格差が広がり貧困が広がる福岡市、移動の自由を確保できない福岡市、良好な都市景観と良好な都市空間とは相容れない無秩序な開発を容認する福岡市は「張り子のトラ」にしか見えません。

次に、条例案中でも特に第85号、第109号、第110号について反対の意見を述べます。    まず議案第85号福岡市企業立地促進条例の一部を改正する条例案について反対の理由を述べます。今回立地交付金について交付要件を2011年度に変更されたものを従前に戻すとともに、新たに雇用についての要件を加えるというものです。今回の変更では、人工島、香椎パークポート、九大移転先周辺地区を特別地域として1件当たり上限30億円、土地代の30%、建物の10%の補助金を交付するものを、1件当たり上限を10億円、土地代の10%、建物建設等投資に10%に変更し、新たに本社機能を持つ事業所雇用については福岡市民を雇用すれば一人100万円、上限1億円が3年間交付されます。この様な多額な補助金を交付することで企業を誘致しても、大企業が利することがあっても地元の中小企業の支援に繋がるとは考えられません。この様な補助金よりも、地元企業支援策にもっと投資する、保育や介護、教育に人材確保のために処遇改善に投資する、専門職職員を非正規職員から正規職員する、公契約条例を制定することで低賃金構造をなくすことが、福岡市の経済を強くすると考えます。立地交付金の在り方を根本から見直すことを求めることからこの議案には反対します。

議案第109号福岡市科学館特定事業にかかる契約について反対の意見を述べます。この事業は六本松九大教養部跡地にJR九州が建てる商業ビルに科学館として市が30年間賃貸した施設の整備、維持管理および運営等をPFI方式で委託する契約です。科学館の委託契約に関する市の資料を見ると、人工島に建設予定の総合体育館同様、施設整備や運営費および維持管理費は本当に安いのか疑問があります。また15年間の運営委託となっていますが、科学は急速に進歩しており、展示や事業内容が陳腐化することが懸念されます。この様な施設は単なる展示施設ではなく質が求められており、市が研究員を配置して最先端の知見と学習の場を提供すべきであり、この議案に反対するものです。

議案第110号福岡北九州高速道路公社の基本財産の額の増加に伴う定款の変更に関する同意について反対する理由を述べます。この議案は都市高速道路から人工島へ接続する道路建設のための高速道路事業としての2016年度の負担額の増資の承認を求めるものです。この事業は僅か数分短縮するために最終的には292億円もの費用を投ずるもので、厳しい財政状況では不必要な事業です。道路建設すれば建設費ではすまず、将来に亘り維持管理が生じ、その財政負担は将来の世代の負担となります。超高齢化社会、人口減少社会を迎え、日本経済が縮小する中で道路需要が増えるとは考えられないこと、また公共交通機関への転換が求められている今日、都市高速道路の環状道路網整備が完了した今日新たな都市高速道路建設は不要です。

最後に市長が2月11日に日本会議福岡が主催する「日本の建国をお祝いする集い」に出席して祝辞を述べたことについて強く抗議します。昨年福岡市は「市民主催の戦争展」の名義後援について、①展示予定の漫画が反原発に偏っている、②期間中に記念講演をする吉岡斉九大教授は反原発の立場、として、「特定の主義主張を訴える催しであれば後援しない」と説明しています。ところが今回市長が出席した集会の主催者である日本会議福岡は、「創憲」として現憲法を否定し憲法改悪を主張しています。市長がこの様な集会で祝辞を述べることは自らの主張を覆し市民に対する背信行為です。同時に市長は公職者として憲法を遵守する責務があり、この様な集会で祝辞を述べることは憲法を踏みにじる行為であり、強く抗議し、公正な市政を行うことを求めて討論を終わります。