誰も責任を取らない地下鉄陥没事故

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昨年12月議会での一般質問および今年1月24日の交通対策特別委員会での報告をまとめてみました。

昨年(2017年)3月に独立行政法人土木研究所を中心にした「事故検討委員会」が報告を出しています。福岡市はこの報告を受けて工事再開を検討し、事故区域の地層を人工岩盤で強化してナトム工法で再開するという結論を出しています。しかし、これで大丈夫でしょうか。

<事故検討委員会が事故原因の可能性が高いものとして指摘している事項>

➀調査頻度が少なかったため、地山強度等の物性値や地層の厚さを適正に判断できなかった

➁難透水性風化岩は、物性値にバラツキがあったにもかかわらず、一つの均質な層として、物性値を代表値によって評価したことが適切でなかった

➂難透水性風化岩の上面の不陸および内部の小断面層や剥離面、多くの節理や亀裂が存在し、これが水みちとなり、局所的に水圧作用面がトンネル掘削面に近かった

④現場に即した解析手法の検討や、解析の限界を認識した上で安全側の設計となるような工学的判断が不足していたことが要因となった

⑤「未固結滞水砂層に対して止水のための薬液注入を実施せずAGFに期待したことが、要因になった

事故前の技術専門委員会でも「福岡層群は波打っており」「追加調査で不透水層としている風化岩が薄いと考えられるため、土砂層と岩盤層つながっている可能性があるので対策を検討する」、「必ずしも博多駅に近づくと地盤の状況が安定するという断定はしない方がよい」など繰り返し地層の複雑さが指摘されていました。「事故検討委員会」の指摘が「考えられる」と断定していないことをもって、交通局は法的過失について記載されていないので法的責任はないとし反省が見られません。

また、工事を請け負った大成建設は福岡市と事故の損害賠償に関する協定書では同じように第3者委員会の報告書に法的責任が記載されていないことをもって法的責任はないとした上で、地歩の損害賠償を大成建設がするとしています。大成建設が法的責任がないの損害賠償をすることはおかしいと思いませんか。この裏には何かがあると考えざるを得ません。いずれにしても誰も責任がないといっています。事故発生時刻が30分おくれていたなら、死者が出ていたのではないかと思われる重大事故でありながら、誰も責任を取らないのは全くおかしなことです。

ナトム工法で工事再開は大丈夫か、開削工法が妥当では

交通局は地盤改良は,「高圧噴射攪拌工法」と「薬液注入工法」により人工岩盤で地盤を作るとしています。流動化処理土の下層にある砂質層および難透水性風化岩の強化ができるのか、また、止水および地下水圧の削減はできるのか、高圧噴射攪拌工法はムラが生じやすくチェックボーリングも都合がよい部分だけを使う傾向があるという指摘もあり、疑問が残ります。また、地下埋蔵物や事故での埋没物を避けて地盤強化剤を送るパイプを適切に挿入できるのか疑問が残ります。本復旧が完了していない埋設物の本復旧については,トンネルの再掘削工事工程にあわせて,各埋設物管理者と協議して本復旧するとしています。信号等の埋没物は問題が確認されない限り埋めたままです。以上のことを勘案し安全性を考えると、開削工法がよいのではないかと考えます。

事故検討委員会および技術専門委員会の議事録を見ると、ナトム工法を選択したことが問題であり、設計ミスとしか考えられません。経費を安く上げるためにナトム工法に当初から執着し、結果的には113億円の工事が260億円の工事になりました。しかし誰も責任を取りません。この事故の背景には、1.4km、徒歩で15分から20分程度の距離に450億円もかける必然性どこにあったのか、巨大公共工事に絡む利権であり、税金の無駄遣いです。七隈線をはじめから天神駅に接続させておけば必要がない工事でした。事業費292億円の人工島への接続道路、事業費500億円の空港への接続道路と、このような無駄な公共事業を繰り返す福岡市政をこの陥没事故が警告したと言えます。