2019年決算特別委員会意見開陳

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先の台風15号、19号と東日本は甚大な被害を受けました。被災された皆様にお見舞い申し上げますと共に、亡くなられた方にご冥福を心からお祈り申し上げます。

今回の立て続く巨大台風による災害は、日本近海の海水温度の上昇によるものです。日本近海の海水温度は100年で1.12℃上昇し、台風の巨大化と日本各地に豪雨をもたらしています。また、日本の平均気温は100年間で1.19度上昇しており、2100年には福岡市の夏の気温は41.9度にもなるという環境省の予測も出されています。世界各地では異常気象による災害は激化しており、地球温暖化はもはや危機的状況にあります。地球温暖化の主たる原因は温室効果ガスによるもので、温室効果ガスの4分の3を占める二酸化炭素の大気中濃度は上昇し続けています。この二酸化炭素の大気中濃度を抑制・削減するには化石燃料の使用を削減し、脱炭素社会を実現しなくてはなりません。しかし、日本政府は脱炭素社会に向けて明確な施策を示すことは出来ず、むしろ石炭火力発電所の新設を進めています。ドイツでは2038年に全ての石炭火力発電所をなくすことを決めています。国連事務総長も日本政府に石炭火力発電所の新設をやめるよう求めています。福岡市は、地球温暖化は危機的状況にあるという認識の下、日本政府に石炭火力発電所新設をやめるように要請すべきです。また福岡市は九電にも電源開発松浦発電所などの石炭火力発電からの電力購入をやめ、再生可能エネルギーを優先的に買い取ることを要請すべきです。

福岡市は脱炭素社会に向けて、再生可能エネルギー利用推進や省エネ対策などの取り組みを提起していますが、根本的な問題として高島市政が進める「都市の成長」が脱炭素社会を大きく阻害しています。100年間における日本の平均気温の上昇は1.19℃ですが、福岡市は3.1℃となっています。それはなぜなのか、それは都市の無秩序な再開発による街のコンクリート化と緑地の減少、そして博多湾の埋立による海面の減少や河川空間の減少などによるヒートアイランド現象が激化しいることにあります。都市の気温上昇は空調などのエネルギー消費量を増加させます。加えて福岡市の一極集中による人口流入は、エネルギー消費を増させ、自動車等による二酸化炭素排出量の増加を招きます。2018年度決算においても、都市の成長に重点的に投資をしており、エネルギー消費量の増加と無秩序な都市膨張による様々な弊害が生じています。経済成長優先の政策は、地球環境が危機的状況にあるにもかかわらず有効に対処できない構造をつくっているのです。地球温暖化防止対策として、都市の成長路線は転嫁されるべきです。

また、高島市政の都市の成長政策は、格差と貧困を拡大させている安倍政権の下、「住民の福祉の増進を図る」という地方自治体本来の目的に反するものです。相対的貧困率は下がったといわれていますが、相対的貧困率の基準となる中位所得が下がり続けていることによるものです。2018年度の国民生活基本調査で平均所得以下が62.4%と拡大している事からも格差と貧困が広がっていることは明らかです。福岡市市民経済計算の数字を見ても、雇用者報酬は髙島市長就任以降ほぼ頭打ちとなっており、物価上昇を考えると国と同様に実質的な所得は減少していると言えます。

2018年度決算では一般会計は99億7千万円余の実質黒字となっています。しかし、教育、子ども支援、障がい者の支援の現場では人が足りなく、また、専門職は非正規雇用が多いため制度があっても機能しない状況があります。来年度から会計年度任用職員制度が始まります。非正規職員の身分が保障されることでのメリットがありますが、他方、会計任用職員制度は4回までしか更新が出来ないために専門職としてのキャリアアップが出来ない構造が固定化されます。制度が機能するためには、人工島事業、中央埠頭再開発、天神再開発など「都市の成長」に優先的に投資するのではなく、市民の暮らしを支えるために、専門職の増員と正規職員を増やすなど人への投資を優先しなければなりません。財政健全化の原資は「都市の成長」への投資を抑制することで捻出するべきで、市民を犠牲にするべきではありません。人への投資こそが需要を生み出し、経済の活性化に繋がります。高島市政が妄想するトリクルダウンは起こらないし、起こっていません。

また、2018年度の決算では特別会計は実質黒字が59億4千万円余となっています。国民健康保険、介護保険、後期高齢者保険は、前年度黒字になっているにもかかわらず負担軽減はされない結果再び黒字となっています。2019年10月から消費税は10%に引き揚げられました。市民生活は一段と厳しくなっています。2018年度の黒字は市民の負担軽減に使うべきです。

最後に、今年10月1日から「幼児教育・保育の無償化」が実施されました。地方自治の本旨は住民の福祉の増進を図ることです。住民とは福岡市で生活を営む在住外国人も含めた全ての人です。全ての子どもとは在住外国人を含めた福岡市で暮らす子どもです。安倍政権が「幼児教育・保育の無償化」の対象から外国人の各種学校を外したことは排外主義そのものであり、福岡市が政府の政策を追認することは地方自治に反する行為であり、日本国憲法が保障する基本的人権を否定し、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約など国際条約にも反します。福岡市は地方自治の本旨に則り、福岡市に暮らす全ての子どもに公正な支援措置を執ることを強く求めます。

以上、2018年度決算は市民の暮らしを犠牲にした黒字決算であり、認定することは出来ません。