スーパーシティ法に抗議します

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2020年5月28日

ふくおか緑の党運営委員会

昨日5月27日に「スーパーシティ法(改正国家戦略特区法)」が参議院で可決し、法案が成立しました。「スーパーシティ」は安倍政権が経済成長政策として人工知能(AI)やIoT(Internet of Thing)によるイノベーションを起こすとして策定した「Society5.0」の延長線上に進められており、福岡市でも九州大学箱崎キャンパス跡地で「FUKUOKA Smart EAST」構想としてこれを進めようとしています。国家戦略特区制度のもとで複数の規制緩和を同時に行い「丸ごと未来都市」をつくろうとしていますが、国家戦略特区制度は加計学園で知られるように「お友達優遇」の構造の問題もあります。

SNS上では人権の観点から「#超管理超監視社会を拒否します」などのハッシュタグを付けてこの法案に抗議する動きもありましたが、「住民福祉・利便向上を図る」「高齢化社会や人手不足の解決」などを掲げた同法案の問題点や危険性がマスコミで取り上げられることはほとんどなく、安倍政権は不要不急のこの法案をコロナ危機の中で国民に注目されることなく審議を進め成立させました。

スーパーシティの問題点

人権無視の監視社会・自治(民主主義)の変質・電磁波による健康被害

スーパーシティは人工知能(AI)やビッグデータを用いて、自動運転、キャッシュレス、行政手続きの電子化、ネット診療、オンライン教育など生活全体的にIT化する「丸ごとIT都市」を目指すとされています。これを実現するためには個人情報を全て電子管理するシステム構築し、行政データ・個人データ・企業データなど全てのデ-タをスーパーシティ構築事業者が自由に使える体制が必要となります。同時に、交通、通信、都市計画、個人情報保護など、多岐に亘る規制を緩和させる必要があります。

具体的には街角には監視カメラが設置され、住民の行動や駐車などが記録され、カーナンバーや顔認証とマイナンバーが紐づけられ、データ化されます。購買履歴、遠隔操作による診療の記録、病歴、自動運転やカーシェアリングの利用記録、様々なサービスなどの検索履歴、預貯金の利用記録や資産、行政サービスの利用記録、全てがビッグデータとして収集され、事業運営に利用されます。住民のプライバシーは丸裸になります。しかも、これらの情報技術はGoogleやFacebookなど米国のIT企業の技術がベースとなり、情報の寡占化と国内外のIT企業の収益の最大化が図られます。

スーパーシティはプライバシーの保護と個人情報の保護が出来るのか、誰がどのように管理するのか大きな課題があります。住民のコミュニティを変質させ、情報格差や経済的格差を拡大し、自治体の在り方を根本的に変える可能性があり、システムや技術の導入時に誰がどのようにどのように意思決定するのか問題があり、民主主義に反するシステムです。また、スーパーシティではスーパーコンピューターやメガサーバーが使用され、大電力消費の問題、災害時や緊急時での電力供給やシステム管理・維持の問題、通信として使用される5G等の電磁波による健康被害等の問題もあります。

海外では撤回する動きも!

2019年5月カリフォルニア州サンフランシスコ市議会は公共機関による顔認証システムの導入を禁ずる条例案を可決しました。サンフランシスコ市の機関は全て顔認証技術が使えなくなり、市警察(米国は市の管轄)によるナンバープレートリーダー、DNA解析を含むあらゆる監視技術を導入する計画については市の承認が必要となりました。安倍政権が先進都市として視察していたカナダ・トロント市では、Google系列のサイドウォーク・ラボがウォーターフロント再開発地区4.9ヘクタールで2015年から「スーパーシティ」を進めてきましたが、今年5月20日に計画から撤退することを表明しました。地元では個人データや社会関連データを営利企業がどうやって収集し、どう管理するのかという点に疑問が噴出し、「監視社会のディストピア(暗黒郷)」と揶揄されていたと報道されています。また、カナダの通信会社元CEOのビル・バルシー氏はサイドウォーク・ラボの取り組みを「監視資本主義の植民地化実験」と指摘しています。

スーパーシティは中止に!

スーパーシティは行政データ・個人データ・企業データなど全ての情報が事業主体に提供されることが求められ、監視社会へ大きな危険を伴うものです。利便性が強調されますが、本当に必要なサービスなのか全国民的議論が求められいます。しかし、コロナ危機の最中で国民的な周知もなく議論も尽くされないまま法案が国会を通過し、住民の意思によるものよりも経済成長政策としてのIT産業の育成が優先されています。ふくおか緑の党は、スーパーシティは住民のコミュニティを変質させ、監視社会化を進め、民主主義に反するシステムであり、また電磁波による健康被害が懸念されることからことから、スーパーシティは中止することを強く求めます。

福岡市でも九州大学箱崎キャンパス跡地が壮大な実験場にされつつあり、たたかいの舞台は福岡に移りました。市民の皆さんと一緒に計画中止に向けて取り組んでいきます。