2020年度決算意見開陳:コロナ対策は不十分、もっと福岡市独自の施策ができた!

Pocket

私は緑の党と市民ネットワークの会を代表して2020年度決算に関する諸議案の内議案第168号ないし171号、議案第173号、第175号、議案第180号、議案第182号ないし議案第189号、議案第191号に反対して意見開陳を行います。

国連の直近2019年度の報告によると、世界の人口はアフリカを除いて既に減少へ転じ始めており、とりわけ中国や東南アジア諸国は少子化・高齢化社会,人口減少社会への移行が始まっています。気候危機が深刻化する中で今後ますます自然災害が激甚化し多発すると考えられ、難民の発生、食料生産の減少、社会基盤の被害が激甚化、更に人口減少社会を迎え世界経済は中長期的には成長は頭打ちから減少に転じると考えられます。福岡市においても例外ではなく、従来の経済成長を求める政策は時代遅れの政策であり、経済成長を優先する政策から豊かさが実感できる市政に転換が必要です。

昨年度は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、福岡市も市民生活や経済に大きな打撃を受けました。これまでの政府のコロナ対策を見ると、新自由主義政策により保健所や医療機関を削減してきたことが、緊急時において検査体制や治療体制の逼迫の原因となっていることが明らかになりました。政府は事業者に休業を求めましたが十分な休業補償となっておらず、また休業や廃業による勤労者の収入の減少や失業に対する対策もなされましたが、十分とはいえません。特別定額給付金の支給も国民の声に押されて実施、終息が見通せない中で経済政策を優先するGOTOキャンペーンを強行したことが感染拡大を招くなど、政府の対応は後手後手でした。さらに、持続化給付金事業における電通の中抜きなど、新型コロナ感染症対策に群がる利権構造が明らかになりました。福岡市においても特別定額給付金事業におけるパソナとの異様な関係が指摘されています。災害時など緊急時に乗じて権力による恣意的な政策や利権の拡大を表現する「ショックドクトリン」といわれる状況が、今回の感染症対策においてもありました。感染症拡大の混乱の中で国民や国会で十分な議論しないままデジタル関連法、重要土地規制法が立て続けに強行採決されました。感染症が拡大しており挙国一致して対策を講じなければならないにもかかわらず国会を閉会し、党利党略でオリンピック・パラリンピック開催に大きな賭をしました。その結果、感染症は拡大し医療は逼迫、緊急事態宣言延長による国民生活が疲弊し、経済が疲弊する事態となりました。岸田政権に引き継がれることになりましたが、人事を見ると安倍政権継承の色合いが強く、日本が変わるとは考えられません。新自由主義政策を進め、戦争への道を突き進んできた安倍・菅政権から脱却が必要です。

感染症拡大によるにおける行動制限や収入の激減により、生活に対する不安、閉塞感や鬱状況、これらによるDVや虐待の増加など様々な問題が山積しています。「住民の福祉の増進を図る」を本旨とする地方自治体の責任が問われる年でした。では福岡市はどうだったのか。決算を見ると一般会計86億円の黒字、2020年度末財政調整基金残高は27億円増、2020年度決算の不用額は425億円で前年度より205億円増となっており、土地開発基金の2020年度末残高151億円に見られるように、過剰な積立金しているなど適切な予算執行されているとはいえません。事業者への支援の拡大、生活困窮者にプレミア付商品を給付、困窮する学生への給付の拡大、上下水道料金などの減免など感染症対策にもっと使えたはずです。

感染症拡大により市税の減少が見込まれるとして不要不急の事業を見直した、あるいは後年度へ先送りしたとしていますが、人工島に2020年度も150億円を超える税金を使い、天神ビッグバン、博多コネクテッド、ウォーターフロント開発を進めています。中国の経済成長は下降に向かっており、2020年以前からクルーズ船の寄港数は年々減少し、感染症終息後もクルーズ船の寄港は見込めず、また、国際会議も増加する要因はなく、中央埠頭再開発は必要ありません。天神再開発、博多駅周辺再開発は都心部への物流・人流が集中することで、渋滞や大気汚染、緑地の減少、エネルギー消費の増大など地球温暖化への影響、感染症のリスクが増大するなど、問題が深刻化します。このような事業こそ不要不急な事業です。

アベノミクスによって貧困と格差が拡大してきましたが、感染症拡大により貧困と格差は一段と拡大しています。感染症が終息してもK字回復と言われるように業種間の格差と国民生活における格差と貧困は広がるとみられています。感染症終息後も経済はV字回復するとは考えられません。福岡市は金融緩和政策による余剰資金の不動産投機の場となっており、バブルの様相を呈しています。リスクが大きい外部からの呼び込みの経済ではなく、地域で循環する経済を構築するべきです。その為には、医療・介護・福祉、教育、文化・芸術などの支援を強化する必要があります。同時に、市の施設から自家消費の再生可能エネルギーの拡大、エネルギーの効率的利用促進と断熱構造の新築・改築を進めることで、グリーンな経済を進める必要があります。循環する地域経済を構築するとともに、生活困窮者に対する就労支援や住宅対策などの生活支援の強化、そして未来を担う子どもや障害児への支援が最優先される必要があります。「都市の成長への投資」から「人への投資」「子どもへの投資」に政策転換が必要です。

以上の理由から2020年度決算諸議案に反対し、福岡市の政策転換を求めて意見開陳を終わります。