いま監視カメラの設置が増えている。防犯カメラと言われるもの、警察が設置する監視カメラ、Nシステムなど、私的空間や公共空間で設置されている。監視カメラは犯罪を防止できる、安心・安全のために必要と思っている市民は多い。私たちは監視カメラに慣らされ、プライバシー侵害が進んでいる。プライバシーは憲法13条および民法を基に自己の情報をコントロールする権利として定着している。同意を得ない監視カメラによる録画、保存、使用、公開はできない。また、情報の開示、訂正、抹消を請求できる。映像によるプライバシー侵害は容姿・風貌だけでなく私生活に関わるものも含まれる。
公的監視カメラについては2000年の大阪西成監視カメラ裁判における大阪地裁の判決が確定し、設置の基準がある。私的監視カメラの設置に関する法的な規制はなく、一部の自治体では条例で設置場所の公開・届け出、撤去の報告、保存・運用の規制をしているが、福岡市にはない。監視カメラの設置および運用についての法的規制が必要である。様々な研究で監視カメラは防犯効果があるという根拠はないとされ、イギリス国会では監視カメラの設置は経費的に合わないと問題になっている。EUでは監視カメラはプライバシーを侵害するとし公共空間から撤去する方向である。
日本の状況はむしろ監視社会へと向いている。公権力による監視カメラの設置・使用については、2000年の大阪西成監視カメラ裁判における大阪地裁の判決が確定し、①目的が正当であること、②客観的かつ具体的な必要性があること、③設置状況が妥当であること、④設置及び使用に効果があること、⑤使用方法が相当であること、以上5要件が課せられている。しかし、監視カメラの強制制についての法的根拠は明らかでなく、警察は根拠法が曖昧なまま権利侵害し、司法は条件を付けつつも追認している。司法の関係者には、多数の監視カメラ設置されている状況をから撮影は容認されているとし、また集会やデモでの撮影についても撮影されることはあらかじめ容認されているなどの発言に見られるようプライバシー権を軽んじる状況がある。これは集会やデモの参加者を萎縮させ、表現の自由を奪う。顔認証システムの実用化により特定個人の監視が可能になり、より深刻な問題となる。監視カメラは顔認証システムによって個人が特定出来るようになり、公権力に好ましくない人間を監視し、弾圧に利用するなど、プライバシー侵害は単なる個人の権利だけではなく、民主主義の根底を揺るがすものと言える。このことを問題にしなければいけない。
安倍政権に変わり、特定秘密保護法、集団的自衛権、教育への公権力の介入とファッショ体制が進んでいる。平行して、監視カメラの設置増と運用の拡大、顔認証技術の実用化、国民背番号制の実施と監視社会が進んでいる。市民救援会を結成し権力による弾圧を防ぐ体制を作ったが、市民救援会は今後ますます民主主義を守る運動の一翼としての役割は大きくなると考えられる。