12月議会議案質疑

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1、「国家戦略特区」における企業減税に反対

12月議会の議案として、成長性の高い企業を国内外から本市への集積を図り、福岡市の経済を活性化させ雇用の創出と税源の涵養を図るとして、特区に指定された企業に企業設立後5年間、法人市民税を減税するという議案が出されました。対象となる事業は「医療」「国際」「農業」「一定のIoT」「先進的なIT」のいずれかの分野の事業革新性を持った事業とされています。

しかし、既に国は法人所得の20%を控除するとしており、新たな措置が必要とは考えられません。また企業は赤字であれば繰り越し欠損処理を9年間でき、特に魅力がある制度とは考えらず、現時点で国の制度を受けている企業はありません。雇用についても福岡市の独自要件として,福岡市民1名以上の常用雇用を設定しており,創業の増加や企業の成長とともに,正規雇用者を含めた雇用者数は増加すると言っていますが、正規雇用が増えるとは思えません。このように、雇用の確保と税の涵養が図れるとしていますが、十分成果が期待できないことから地方税法上の公益上および特段の事由とはなり得ず、地方税法に反するうえ条例を作る理由がない、立法事実がありません。

問題は、法人税減税を広げることで経済を活性化させるという政策のあり方にあります。法人税減税をしてもその半分は株主配当にいき、残りの大部分は内部留保に回っていることが知られています。また、法人税減税によって経済が活性化することはなく、むしろ税収が減ってきたことはバブル崩壊後の20年間の実態を見れば明らかです。法人税減税ではなく、イノベーションを起こせるような環境を整備する、さらに経済活性化し税の涵養を図るには需要を喚起することが重要であり、公契約条例制定による所得補償をする、また正規雇用を増やし市民所得を上げる政策を採るべきと考えます。法人税減税による起業誘導は止めるべきであり、条例を作る根拠はないということで条例に反対しました。

この条例は髙島市政の企業誘致の姿勢を見せる打ち上げ花火なのです。

2、議案第204号福岡市地方活力向上地域における本社機能の整備促進に関する条例案について

平成27年8月,改正地域再生法を施行し,東京23区の企業が本社機能を地方へ移転する場合,または地方の企業が本社機能を拡充する場合等には,法人税の税額控除等の優遇措置を行うとともに,地方税についても,自治体の優遇(不均一課税)に対する国からの減収補填制度を行なう制度ができました。この条例は国の制度を元に福岡市として本社機能の整備を促進することで雇用機会の創出、事業機会の増大および税源の涵養はかるとしています。福岡市においては固定資産税(税率 100分の1.4)について3年間軽減されます。(初年度0、2年度1/2,3年度1/4の負担)制度を受ける企業は県より整備計画の認定を受けていることが必要です。現在同様な条例を作っている政令市では札幌市、仙台市、岡山市、広島市、北九州市で、認定されている企業は仙台2社、岡山市2社、広島市一社でしかなく、福岡市ではそれほど雇用や是の涵養に期待できるとは思えません。

今回の制度は短期的にはひょっとすれば多少効果があるかもしれない、ある意味ないよりましな事業と思われますが、中長期的には展望が持てる政策とは思えません。介護や福祉、文化や教育に投資する、公契約条例を制定し、地場賃金の底上げを図る、住宅リフォーム助成制度や小規模修繕事業者登録制度などを実施した方が中長期的に雇用を生み出し市民所得を引き上げ、福岡市の経済の活性化が図れると考えます。条例には反対はしませんが、最後に企業誘致するために多大な税と労力を費やよりも、地場産業の育成に力を注ぐべきであると考えます。

3、議案第238号および239号人工島における土地処分について

人工島の土地ションの議案です。処分価格は、商業・集客施設用地の1平米あたりの処分単価は,108,000円/㎡、住宅用地の1平米あたりの処分単価は,戸建住宅用地で41,400円/㎡から44,900円/㎡,集合住宅用地で99,000円/㎡から113,000円/㎡となっています。他方、市5工区の収支が均衡する単価は,1平米あたり,約10万円です。商業地区や集合住宅地区は収支均衡単価10万円/㎡に近い額ですが、商業用地の取得地には30億円の立地交付が交付されることが見込まれており、事実上の土地取得額は42億7千万円余、単価は63,000円余/㎡と極めて安くなります。集合住宅用地も住宅市街地総合支援事業(これまで人工島での補助金は88億円)がありこれまた大幅な安い単価となります。戸建ての地区は41,400円~44,900円と極めて安価な処分と言えます。

人工島の土地処分価格は極めて安く、異常な額の補助金が使われています。他方、市営住宅の戸数は増やされず、応募状況は相変わらず高倍率で生活困窮者の住宅は不足しています。いま急がれているのは安価で良質な住宅を市民に提供することであり、人工島の土地処分のために多額な税金を使うことではありません。市長は「生活の質の向上」を謳っていますが、安価で良質の住宅を市民に提供することこそが福祉の原点であり、「生活の質の向上」と考えます。かつて、サンフランシスコ湾の開発において開発条件に一定量の低所得者向け住宅建設を求めています。この事例のように土地処分のあり方・住宅開発のあり方を見直す必要があります。多額な税金を投じた埋め立て地である人工島の土地処分においても、開発事業者に一定量の低所得者向け住宅建設を義務づけることを検討すべきとし、多額の補助金を使う土地処分のあり方に反対しました。

4,その他

今回の一般会計補正予算案に中央埠頭にクルーズ船が同時に二隻接岸できる岸壁をつくために埋め立てする経費と、国の特別職の期末手当引き上げに合わせて議員の期末手当を0.1ヶ月増額する議案が出されていますが、いずれも反対。