木造公共建築物視察報告

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緑と市民ネットワークの会  荒木龍昇 森あや子

日時:2017年11月28日(火)12:30~17:50

調査地:うきは市立総合体育館「うきはアリーナ」、福岡県公立大学法人福岡女子大学図書館

1、うきはアリーナ

1)うきは市の状況

平成17年に吉井町とうきは町が合併して誕生。人口29,540人、森林50.4%である。森林面積を見ると福岡市はうきは市の1.4倍あるが、人工林はほぼ同じ規模である。

2)うきはアリーナでの木材の使用状況

うきはアリーナは平成21年5月竣工、プール、トレーニング室、メインアリーナ、多目的アリーナ(武道場)、ギャラリー(渡り廊下他)、研修室、スタッフルームの構成となっている。床面積は全体で7,148平方メートル、総事業費は26億7600万円。総事業費の内訳は合併特例債17億7600万円、交付金5億7600万円、補助金1億5千万円、一般会計繰入金1200万円、教育委員会予算1億6千万円である。鉄骨鉄筋コンクリート2階建て、内装の床およびデッキ、壁、メインアリーナおよび多目的アリーナの屋根架構にうきは市産木材が使われている。メインアリーナおよび多目的アリーナの屋根架構には50年~60年の杉材の丸太が2300本使用されている。メインアリーナのベンチ、施設内の机やいす、受付等の備品も浮羽市産の木材製品が使われている。

木材使用により建設費は高くなっている。耐久年数やメンテナンスに関しては、日々メンテナンスすれば特に問題はない、耐久年数も現時点では特段問題となっていないとの返事であった。

3)その他

うきはアリーナはコナミが指定管理者となっている。運営は、年4,212万円の市からの委託料と自主事業の収入で運営されている。清掃、設備の維持管理もコナミが一括して指定館業務として受けており、外注して管理している。運営の評価については、年次計画を立てモニタリングを一ヶ月毎に行い毎月点検しているが、現時点では特段問題はない。指定管理の期間は3年であるが、次回契約更新時からは5年にするとのことであった。

 

2、福岡県公立大学法人女子大学図書館

1)福岡女子大学における木質化の経緯

福岡女子大学は1923年(大正12年)にお茶の水女子大、奈良女子大とともに日本で初めて女子専門学校として設立され、1950年(昭和25年)に4年生大学となった。福岡女子大学では平成20年度に「福岡女子大学改革基本計画」、平成21年度に「福岡女子大学施設整備基本計画」を策定し、老朽化・狭隘化した施設の整備を始めた。図書館建設において、「公共建築物等における木材利用の促進に関する法律」に基づく県の「基本方針」および「福岡県産木材需要拡大推進計画」の下、図書館内装の木質化を進めた。平成26年3月に竣工。図書館の他、喫茶店および美術館が併設されている。美術品は全て寄贈による。

2)福岡女子大図書館における木材の使用状況

図書館で使用した県産木材は69㎥、うち天井ルーバーに杉材35㎥使用。使用木材については、県工事監督者が木材加工場で現地確認のうえ使用。建設費は一般ボード使用に比べると高くなるが、県産木材使用促進のため実施。建設費は全て県費で補助はない。屋根の構造上空調は床になっている。

設計は九州国立博物館を設計した久米設計である。森の木漏れ日をイメージした天井ルーバーや木質を基調にした設計が評価され、2015年にJIA(日本建築家協会)優秀建築賞、グッドデザイン賞2015、第3回福岡県産木造・木質化建築賞・木質化の部大賞を受賞。平成29年度木材利用優良施設コンクール・木材利用推進中央協議会会長賞受賞。図書館の照明は全てLEDを使用、環境に配慮した施設となっている。

その他、弓道場も純木材づくりで移設された。

 

3、調査の所見

今回視察した施設はいずれも市内産木材、県内産木材の使用を促進するために、建設費が多少高くても内装に使用している。木材使用により木質が持つ柔らかさや暖かさを感じ、精神的に落ち着いた雰囲気で利用ができることが実感できた。木材使用は地域の林業・林産業育成と環境保全促進とともに、施設の質の向上に寄与する。林業・林産業育成、環境保全ともに市民生活の質の向上のために木材使用促進の意義を感じた。