2018年度予算案に対する反対討論

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安倍政権が大企業優遇の減税や「労働力の流動化」「働き方改革」と称して労働者を生産要素として使い捨ての仕組みを作る一方、憲法改悪に向けて、子育て支援、子どもの貧困対策、障がい者支援等にも一定の補助制度を作り、国民の目を欺いています。その本質は防衛費が5兆2千億円も膨張する一方、介護費用や医療費を抑制し、年金を削減するなど世代間の分断を図り、国民負担を増やしていることに見えます。福岡市2018年度予算案においても「都市の成長」の果実を市民に行き渡らせるとしていますが、その実態は安倍政権への追随であり、「都市の成長」に投資を優先し、市長が言う果実の中身は国の補助制度を活用するにとどまり、市独自の人への投資がなされていないことに見えています。

今議会でも改めて大規模校の問題が指摘されました。その本質は「都市の成長が生活の質の向上を招く」というトリクルダウンの神話が実は虚構であることを現すものと言えます。「天神ビッグバン」、「ウォーターフロント開発」、そして破綻した人工島事業への投資に見られるように、大企業優遇の政策は様々なひずみを生み出しています。その一つが無秩序な住宅建設が行政能力に無関係に局地的な人口増を生じさせ、教室不足や運動場の狭隘化、さらに留守家庭子供会の定員オーバーなど、教育環境に大きな影響を生み出していることです。良好な住環境や子どもの育つ環境を維持するには、将来の人口動態と行政需要を予測し、適正な人口誘導と既存施設の活用、将来の多様な利用形態に対応できるスケルトンの建造物と総量規制、これらを全庁的に管理していく必要があります。しかし、福岡市にけるアセットマネジメントは長寿命化と歳出の平準化しかとらえておらず、また、区局、各区の管理となっており、アセットマネジメントの本来的意味である資産の有効活用の視点が抜けています。

二つ目ですが、市長が「一人一花」運動を提唱していますが、福岡市の緑の保全はどうなっているでしょうか。野放しの開発による斜面緑地の減少は市内至る所で生じています。民有地だからという理由で規制が出来ないということで済まされるのでしょうか。景観は公共財産であり、地球温暖化対策として緑地保全が求められていますが、全く有効な手立ては打たれていません。都市の成長のためには規制は必要ないというのでしょうか。「一人一花」運動の内実が単なる都市の化粧であれば、精神の貧困といわざるを得ません。

三つ目には、先日日経新聞にも記載されていましたが、タワーマンションをはじめとするマンション問題が都市のひずみを生み出していることです。福岡市は住宅の約4分の3は集合住宅であり、国際化と高齢化は人工島のタワーマンションをはじめマンションの維持管理の問題を惹起し、将来都市をスポンジ化するという問題です。とりわけ、人工島のタワーマンショへの補助金依存度は全国の比較を見ても際立っており、将来スラム化し固定資産税の徴収も出来なくなるなど、市の投資の回収さえも疑わしくなるものです。元気な福岡市の背後にあるものは、かつての桑原市政が博物館やマリンメッセなどの多数の大規模公共建築物の建設や人工島事業、地下鉄建設などの公共事業をてがけ、1兆円を超える借金をつくり、後年度負担や施設の巨額な維持管理費よる市財政に大きな負担を生じさせている状況に似ており、むしろ公共インフラを残した桑原市政よりも高島市政は始末が悪いと言えます。現在民間事業であるものが、将来公的な負担になりかねないのです。

四つ目の問題は、人口増をあたかも都市の成長の証ごとく手放しで評価していることに問題があります。すでに生産年齢が減少し始めている現状を見ても、急激な超高齢社会へ突入することを意味しており、人への投資が求められています。今議会の総会質疑でも私が質しましたが、福岡市は人への投資を軽視していることが明らかとなっています。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学校司書の配置数は足りておらず、嘱託職員です。嘱託職員の勤務時間は週4日、27.5時間、任用期間は1年です。これで本当に子どものための仕事が出来るでしょうか。学校教員も正規教員数はまだまだ少なく、少人数学級の取り組みも進めようとしていません。介護現場では介護職員の処遇が悪いために人手不足が生じており、近い将来介護制度は破綻しかねません。保育の現場においても、待機児童対策は追いついておらず、その大きな要因は保育士の処遇改善が進んでいないことにあります。現在世界経済は回復基調にあり、日本経済もその恩恵を受けていますが、中長期的には世界経済は減速し成長の限界を迎えると予測されています。国内外からの企業誘致に依存する地域経済のあり方は限界があり、人への投資が地域の雇用と需要を生み出します。大規模な開発や破綻した人工島事業に投資する資金は人への投資に使うべきであり、市民の生活の質の向上が持続可能な都市を実現します。「都市の成長」が「生活の質の向上」を生み出すというのは神話でしかありません。

以上の理由から予算案及び諸議案に反対するものです。