2月補正予算議会

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2月補正議会の主たる議案は、福岡空港民営化に向けて福岡市が出資していた福岡空港ビルディング株式会社を売却し、売却益約64億円の処分についてでした。福岡市は一般会計補正予算案として、30億円を子ども未来基金に積立、20億円をスポーツ振興基金に積立、空港周辺対策として「空港未来基金」に7億8千万円積立、残りの約6億円を約3億円を災害に向けての公的備蓄に支出、3億円を小中学校の空調整備等に支出するというものでした。

この処分案について、空港未来基金条例案(7億8千万円)が自民党、市民クラブ、共産党、維新、緑と市民ネットワークの会、無所属議員の反対で否決されました。自民党や市民クラブの反対理由は株の売却益を新たな空港運営会社に出資すべきと言うことです。しかし、高島市長は、規制改革委員会の方針である「民が出来ることは民で」に忠実に従い新空港運営会社への出資をしないとしています。公明党、みらい福岡は株処分益64億円の内30億円を子ども未来基金へ、20億円をスポーツ基金へ、その他学校改修等に使うという市長案に乗せられ、賛成。今回の論点は空港民営化の是非であり、株売却益の処分ではありません。

政府は平成11年にPFI法を制定し、PFIを経済成長の柱と位置づけ、規制緩和の推進と公共部門の民営化を推進してきました。更に、公共施設の維持管理の委託だけでなく料金制定や事業運営も受託者が決定できるコンセッション方式が進められてきました。既に愛知県営有料道路、仙台空港、関西空港・大阪空港で運営権譲渡が行われ、高松空港が検討されています。

コンセッションは特別目的会社を設立し、投資を集めて事業を行います。施設を公共から借り受けて、維持管理だけでなく利用料も自由に決めて経営します。特別目的会社は利益率を設定し確実に利益を出すことを前提に事業計画が作られます。そのため剰余が出るように、不採算部門は公共に押し付けられます。福岡空港の場合を見れば、空港の借地料は国が負担することになりました。空港周辺整備については民営化されれば運営会社が責任を持つとなっていますが、収益に問題が生じた場合には国ないし福岡市に負担が求められかねません。

もう一つの論点は、福岡空港の運営権譲渡では、運営権売却益を滑走路増設の費用とすることが福岡空港の滑走路増設の条件とされています。しかし、本当の増設が必要なのか疑問があります。この間の福岡空港の利用状況を見ると増加は頭打ちの状況であり、また機体の小型が進み発着回数は増えていますが離発着時間が短縮できるため容量を増やすことができています。そもそも福岡空港は東京便がメインであり、人口減少社会を迎え将来的に需要が増えるのか、またアジアなどの海外便が今後増えたとしても総量としての航空需要が増えるのか疑問です。仮に増設が必要であれば北九州空港や佐賀空港との連携を図ればよく、無駄な投資をすべきではありません。

空港周辺対策は空港未来基金を設置しなくても国および福岡市の責任で実施されます。また、空港未来金の支出目ても定かでなく、上記の2点の理由を併せて空港未来基金に反対しました。

官制は国が実施、離発着料金等使用料や便数、空港付帯施設の利用料金等は民営会社が決めることができる
管制は国が実施、離発着料金等使用料や便数、空港付帯施設の利用料金等は民営会社が決めることができる

福岡空港の離発着回数と乗降客の推移1680710 001

次に議案第17号福岡市中央卸売市場業務条例の一部を改定する条例案について述べます。

中央卸売市場は生鮮食品を地域に安定的に供給できるよう地域毎に公的に設置され、業務も規制されています。本条例の一部改正する理由として「生鮮食品の輸出に係る第三者販売の要件を定める等の必要がある」としており、卸売業者および仲卸業者が例外規定を活用して輸出することが出来るようになります。現在でも仲卸を通じて輸出が出来るにもかかわらず、何故卸業者が直接輸出が出来るようにする費用があるのか理解できません。

その背景には安倍政権のTPP対策として農林水産物の輸出促進政策に端を発しています。TPPは日本の農業を破壊し、地域社会を崩壊させるもので、多くの生産者が反対を表明していました。幸いトランプ政権によってTPPは潰されましたが、新たな農林水産業の日米交渉が待っています。安倍政権は農協改革と称して農協解体を進める一方、農業の大規模化を進め、農産物の輸出を進めています。しかしこれは日本の食の自給率向上と安全を確保することには逆行する政策です。農林水産省は2019年に農林水産物の輸出額1兆円を目標として輸出戦略実行事業を実施しています。市は中央卸売市場に新に第三者販売および直取引による生鮮食品の輸出を行うことが出来るようにしても、輸出契約において市場に混乱が生じた時には輸出停止などの措置が出来るとしていますが、政府は第一次産品の輸出を推進しており、卸売市場の本来の目的を変質させ、金儲け優先の取引が行われ市民生活を脅かす火種になります。

現に、農林水産省は農林水産物等輸出促進全国協議会の下に輸出戦略実行委員会を設置し、その中にテーマ別部会がおかれ卸売市場部会があります。農林水産物輸出インフラ整備プログラムでは、卸売市場は物流拠点として位置づけられ、特に空港港湾等に隣接する卸売市場を拠点に一定規模以上の輸出が行われるよう施設整備を促進するとしています。特に空港や港湾、鉄道などの物流拠点に隣接する福岡市の中央卸売市場は輸出インフラ整備の重点的な整備対象と考えられます。今回の条例の一部改正は、この政府の方針によって卸売市場が農林水産物輸出機能を持つように改変させられ、市民生活に大きな影響を及ぼしかねないと考えられ、反対しました。

中央卸売市場条例改正図 001

次の今議会で上程されている一般会計補正予算案における備蓄については、災害対策が前進すると受けとめています。ですが、熊本大震災の教訓を活かすならば、震災対策だけでなく原子力災害についても見直すべきです。玄海原発の再稼働が具体的なものとなっている今日、その他伊策が急がれます。しかし、先日の答弁では原発事故に対する緊張感は感じられません。ヨウ素剤は1錠6円弱でしかなく、備蓄を補充するには多額の費用を要することはなく、今回の公的備蓄のための補正予算に含めることは可能であったはずです。原発事故は起こらないと思っているのかと疑わざるを得ません。

自然災害は避けることは出来ませんが人災は避けることは出来ます。原発事故は人災であり、再稼働させなければ過酷事故は避けることが出来ます。函館市は大間原発建設中止を求める訴訟をしており、伊万里市長は玄海原発再稼働反対を表明しています。地方自治体の本旨に則り、高島市長は玄海原発再稼働中止を求めるべきとの意見を述べました。