人工島見直しの中間報告

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人工島事業の見直し
破綻が明らかの人工島事業を将来の市民のための財産にするために!

はじめに
 昨年の市長選挙の公約である「人工と事業の見直し」が始まっています。吉田市長は「無駄な公共事業はしない。市民のための公共事業を行う。子ども病院と市民病院を統合、人工島への移転については見直しする。市民の財産になるような見直しにする。」としています。この見直しは平成16年に策定した「新新計画」を見直すとしています。3月に副市長を中心に職員と外部アドバイザーで見直し委員会が作られ、6月に中間報告と市民意見募集、9月に最終報告と市民意見募集、市長の最終判断と見直しのスケジュールが示されており、6月の中間報告が迫っています。
 そこで今回の見直しの視点は何かを皆さんに提起したいと思います。基本的な視点は厳しい財政状況が続く中で、今後の福岡市の方向を示す試金石といえます。「三位一体の改革」により地方交付税・補助金の削減が行われ、今年から所得税から住民税(市・県民税)へ税源移譲が行われます。ここで財政問題として大きく二つの問題があります。一つは税源移譲させますが実質削減になるということです。もう一つは一般財源化されることでの問題です。一般財源化されることで自治体の自由度は増しますが、同時に自治体の政策によって住民サービスに格差が更に広がるということです。今後、自治体の住民の生活にとって、厳しい地方自治体の財政状況が続く中で、自治体がどのような政策に重点を置くのかが問われています。人工島事業の見直しは、まさに今後の福岡市政を占うものです。

1、山崎前市長と銀行等の密約は破棄出来るのでしょうか
 山崎前市長が銀行と交わした密約の経緯とその中身を見てみましょう。この密約は現在も生きています。

1)銀行は融資を凍結・撤退。人工事業は既に破綻していた。
 具体的にはどのような問題があるのでしょうか。第1点は山崎前市長が破綻している人工島事業を継続するために銀行と交わした密約をどうするのかです。8年前1999年(平成11年)に山崎前市長が人工島事業を見直した時、このまま事業を進めても40億円の黒字になると人工島事業継続を表明しました。しかし、当時の博多港開発は200億円の赤字になると報告していたことがケヤキ庭石裁判で明らかにされています。更に見直し結果を公表した直後2000年(平成12年)3月時点では当時の日本興業銀行は「このまま事業を進めれば100億円の赤字になる。」として融資を凍結、続いて新生銀行、あおぞら銀行、鹿児島銀行が融資を撤退しました。その後信託銀行5行も凍結という事態となり、融資銀行団が崩壊する状況になっていました。

2)事業継続のために損失保証を約束。
 そこで山崎前市長は平成13年3月に「銀行には決して損はさせない」と銀行団に念書を書き、同年7月に銀行団と博多港開発との新たな融資協定に市長自ら立会い具体的な損失保証を約束しました。しかし、銀行団では福岡市により具体的な損失保証を求め、、平成13年12月28日にようやく福岡市と銀行団との合意が出来、これを受けて福岡市は平成14年の2月議会にに大幅な計画変更を示しました。2002年(平成14年3月28日)に銀行団と博多港開発は福岡市の計画に基づく協定書を結びました。これまで埋立事業には一銭の税金も使わないと市民に説明をして来ましたが、これを機に次々を税金を注ぎ込み、既に1000億円を超えようとしています。
 損失保証の内容は、博多港開発に対して市は30億円の増資し、博多港開発の出資金を4億円から64億円にし、市の負担を一段と重くしました。銀行団は博多港開発への融資を確実に回収するため、これまで土地が売れたときに返済する「随意返済」から、決まった期日に決まった土地を処分し確実に銀行へ返済させる「土地張り付き約定返済」に契約を変更、そのために売れない土地は全て福岡市が買い取ることを約束させました。
 博多港開発の埋立費用を軽減するために、本来開発事業者である博多港開発が整備しなければいけない道路や公園、下水道の整備については福岡市の公共事業で行うことにしました。既に100億円を超える税金が投入されています。その結果当初の埋立原価17万円/㎡は12万1千円/㎡に下げることが出来ました。既に人工島での道路や下水道整備に100億円を超える税金が使われています。
 もし博多港開発が銀行に返済出来ないときには福岡市が博多港開発に貸付、銀行には確実に返済させる、そのために毎年200億円の貸付金を予算化する(地価が下がり続けたため予定通りの価格で売れず、平成15年には87億円を貸し付けました。)というものです。

3)売れない土地は福岡市が購入
①中央公園はなぜ出来たのか
 当初計画では15㌶もの公園の毛核はありませんでした。しかし、銀行団との約束に基づき、2002年(平成14年)度分として15㌶の土地を買いましたが、使い道がないために公園にすることとし計画になかった中央公園が造られました。土地代126億円、公園整備50億円、ぐりんぐりん館の建設費15億円、維持管理費年間9,300万円(2007年度入札による)の税金が注ぎ込まれることになりました。この人工島中央公園建設を進めるために、市内の公園整備が遅れることになりました。

②住宅は異常な安さで販売
 また、住宅地はすぐには売れないために一旦福岡市住宅供給公社に買わせる、そのために福岡市は福岡市住宅供給公社が借り入れするにあたって銀行に150億円の損失保証をした。このことは直前まで福岡市住宅供給公社には知らされておらず、議会でも問題となりました。福岡市は住宅地を売るために、宮崎駿監督を使って「照り葉の街づくり」構想を打ち出しましたが、宮崎駿監督が拒否したことでこの計画は頓挫し、いよいよ住宅地の販売の見通しが立たなくなりました。しかし、銀行との約束で土地の購入は各自に進めなくてはならず、市の住宅供給公社が購入を進めました。住宅地を一旦購入した福岡市住宅供給公社は当初の計画の価格では住宅地の処分の見通しが立たないためために、積水ハウス・福岡地所グループに住宅地を一括して処分、7万円/㎡という破格の価格で土地を売りました。福岡市住宅供給公社は平均単価7万円/㎡で処分するために、博多港開発から戸建て住宅部分について3万円/㎡という前代未聞の価格で販売させ、そのために博多港開発は55億円の赤字を出すことになりました。

③補助金付の安価な住宅
 人工島の土地処分を進めるために、福岡市はセキハウス・福岡地所グループに格安で土地処分を進めただけではありません。住宅地の販売に関しては、販売事業が自由に公園や市道の位置を決められるように面積だけを指定して販売をしています。更に、住宅地を買った積水ハウス・福岡地所グループの住宅販売が進むように、住宅販売が始まる平成17年9月に合わせて人工島中央公園で緑化フェア(総事業費45億円のうち市費30億円を支出)を開催しました。また、住宅価格が下げられるよう市街地住宅総合整備支援事業に指定し、1戸当たり約300万円程度の補助金を出しています。人工島はまさに税金を飲み込むモンスターのような島としかいいようがありません。

④家も建っていないところでも学校用地を購入
 期日にまでに土地処分をしなければいけないことから小学校用地を取得するために、住宅地を処分し、住宅販売をしてもらうために平成17年3月に平均単価7万円/㎡という造成単価12万1千円/㎡の半値近い価格で住宅地を積水ハウス・福岡地所グループに売却する協定書を交わしました。ようやく7月に条件交渉が調い売却され、住宅計画が示されてました。これをまって福岡市は平成17年9月議会に家も建っていない、子どももいない状況で学校用地4㌶を買収する議案を出し、翌平成18年2月に購入しました。通常学校建設は一定児童数が基準を超えた時点で分校することになっていますが、人工島では土地処分ありきで進められ、その理屈としてもモデル校として小中一貫校を造る、児童は市内全域を対象とする計画でしたが、工区を基準にしたコミュニティづくりに反するなどと議会での反発もあり、対象児童は人工島内となりました。
 学校用地の購入価格は115,000円/㎡です。住宅地は平均7万円/㎡、そのうち隣接する戸建て住宅用地は3万円/㎡、道路用地は82,500円/㎡に比べても福岡市が高買いをしていることが分かります。

⑤子ども病院はなぜ人工島に移転するのか
 包括外部監査報告で病院事業の赤字体質について改善を求める勧告が出されていました。勧告は公共の病院としての役割を整理する、市民病院と子ども病院の統合なども検討すべきというものでした。福岡市はこの勧告を逆手に取り、人工島に病院移転を画策しました。売れない土地を福岡市が買い取るために、子ども病院と市民病院を統合して人工島に移転させようというものでした。そのために、周産期医療などの分野を強化する、病院の地理的配置や一定規模の用地確保の必要性など様々な口実をもって人工島移転を進めようとしたのです。子どものためでも市民のためでもありませんでした。病院用地の取得費用は5㌶、71億円(142,000円/㎡)と予定されていました。矢張り他の土地よりも高く購入する計画でした。

4)なぜ博多港開発第2工区を福岡市が購入したのか
 山崎前市長は2004年(平成16年)11月に再度人工島事業を計画変更しました。なぜ計画変更をしなければいけなかったのでしょうか。それは銀行団が埋立事業に対して土地処分の見通しがないために融資を拒み、福岡市に買い取らせたのです。購入価格は399億円で、これまでの埋立にかかった費用及び利息としています。この年2004年1月に博多港開発は予定通りに工事が完了出来ないために、竣工期間伸長許可申請書を埋立認可者である福岡市に申請しました。申請書では3年3ヶ月延長すれば2007年(平成19年)4月に竣工出来るとしています。延長許可の条件は「出願者が埋立を遂行するに足る資力及び信用を有すること」とされていますが、博多港開発は既に福岡市から85億円を借り受けるなど事業継続する資力がないことは明らかでした。しかし、市は事業継続するために竣工期間伸長を許可しました。しかし、この時点で既に銀行は埋立事業を見限っており、福岡市に博多港開発第2工区を買わせたのです。通常の企業であれば倒産状態です。銀行は貸し手責任を取ることなく、全て市民の負担とさせました。人工島事業の破綻を示すものです。

5)「銀行には決して損はさせない」この密約は生きている
 福岡市が博多港開発つ第2工区を買い取ったことで銀行団の負債は大きく減りました。計画変更と共に新たな協定が造られました。道路や下水道、公園の整備はこれまで通り公共事業として行われます。返済については土地張り付き約定返済から随意返済に変更されましたが、①土地処分が当該年度計画の80%を上回ること、②土地販売価格が当該年度計画の80%以上、2年間連続で90%を上回ることとされており、目標が達成出来ない時は計画を見直し、銀行との協議をするとなっています。また、博多港開発が銀行へ返済できないときには福岡市が貸付を行い確実に返済させることは変わっておらず、融資面積が1/2になったことから福岡市の貸付枠を200億円から100億円に減額しています。基本的には損失保証の構造は変わっておらず、博多港開発の土地処分を進めるために税金が使われています。博多港開発第1工区に「ビジネス創造センター」がつくられましたが、舶洋海洋が建てたビルの1階・2階を市が賃貸して開設しています。年間1億3千万円(賃貸料年間7千万円)が使われることになっています。これも博多港開発の土地を売却するための救済措置です。
 

2、今回の見直しで市民の財産として見直しが出来るのか疑問
 今回の人工島事業の見直しは2004年(平成6年)に計画変更した「新新計画」について見直しの対象するとしています。今回の見直しは人工島事業は「アジアのゲートウェイ」としての港湾、「先進的な街づくり」「新しい産業の集積」を進めるものとして福岡市にとって重要な事業と位置づけ、ています。長期にわたる大規模な事業であるため、事業の将来について不安感を抱いている多くの市民がいると考えられるとして、人工島を将来にわたり市民の財産としていくために、事業の進捗状況、事業収支計画などについて検証し、その結果を広く示すことによって人工島に対する市民の理解を深めとともに、街づくりや土地処分が効率的勝つ効果的に促進される方策について検討を行うとしています。一言で言えば、桑原元市長、山崎前市長どうように、吉田市長も人工島事業は福岡市にとって必要な事業と位置づけ、埋立事業を続けるというものです。埋立事業を続けるにあたっての課題を整理し、課題を解決出来る方策を示すことで市民に理解を求めるというものです。

 では中間報告で示された課題としては
①拠点形成や産業集積を牽引する企業ちっちの見込みが不透明
②市第5工区(福岡市が博多港開発から買い取ったエリア)におけるエリアの将来像や産業集積拠点の土地利用の方向性が不明確
③土地処分の進捗に依存する事業収支の安定性への懸念

 今後の検討の方策として、
①みなとづくりエリアにおける国際物流拠点機能の強化・企業立地の促進
②街づくりエリアにおける産業集積・企業立地の促進
③市第5工区におけるエリアの将来像や土地利用の方向性の明示
④街づくり、みなとづくりの展開を踏まえた交通基盤の対応
⑤事業の着実な推進の前提となる事業収支の安定性向上

 課題の①、②、③はいずれも相互に関連しており、要は埋立地おいて構造的に土地需要がないという現状を追認するものでしかありません。全国の埋立地の土地処分が進んでいない状況を見れば、課題は土地処分の方法ではなく、破綻を素直に認めた上での事業のあり方を検討なければなりません。
 東京都の臨海副都心、横浜市のみなとみらい21、大阪市の舞洲・咲洲・夢洲、中部国際空港対岸の前島埋立地、神戸市のポートアイランド第2期埋立地と神戸空港の埋立地、香椎パークポートは平成8年に完成していますがまだ1/3近くが売れ残っており、全国の埋立地の状況を見ても人工島の土地処分は厳しいものがあります。だからこそ、銀行団は融資に見切りをつけて、福岡市に博多港開発第2工区を埋立原価の399億円で買い取らせたのです。この事実をどうして市民に伝えようとしないのか、ここに見直しの本質的な問題があります。その結果、今後の検討課題についても目新しいものはなく、これまでの市民の疑問に答え得るのか疑問です。

3、市民の財産になるような見直しをするために市第5工区を湿地として復元すべきです。

 吉田市長は今回の人工島事業見直しは市民の財産になる見直しにしたいとしています。では具体的にどのような見直しになるのでしょうか。私たちは、財政問題、街づくり、環境政策という視点から福岡市が買い取った北川約95㌶の旧博多港開発第二工区(現在福岡市第5工区)については干潟に復元して、和白干潟といったにした干潟として保全すべと考えています。

 旧博多港開発第2工区また埋立が終わっておらす、水辺には多くの野鳥が餌場として飛来しています。しかし、このまま埋立をするには埋立費用約270億円、道路や下水道、公園などの整備に115億円、それに伴う金利などを含めると500億円を超える費用が新たに必要です。更に、埋立が完成しても土地処分が出来るのか、全国の埋立地の土地処分状況を見ると可能性はありません。銀行団がこれ以上の融資をやめ、博多港開発第2工区を福岡市に買い取らせた理由です。少子高齢化が進み、産業構造も大きく変わる中で、構造的に土地需要がないのです。現在住宅販売が進められている博多港開発第1工区でも、地価を造成単価12万1千円/㎡にもかかわらず、総勢単価を大幅に下回る7万/㎡の激安で処分しなければ売れなかったこと、様々な補助金の対象にするなど優遇措置を執らなければ売れないことを見ても、土地処分のために更に税金を注ぎ込むことになりかねません。それよりも干潟に復元し、福岡市の街づくりとして、また環境政策として和白干潟と一体に保全することが市民の財産になります。
 世界的に見ても、埋立地を湿地に復元して保全することで、エコツーリズムなどの地域の活性化に活用している事例は多くあります。イタリアのポー川河口では埋立地を干潟に復元することで、野鳥観察や自然を生かした安価な民宿などエコツーリズムによる地域の活性化に成功しています。また干潟に復元することで、干潟が魚の産卵や育成の場となり、漁業復活にも役立っています。オランダやデンマークなどでも埋立地を湿地に戻し、エコツーリズムや地球温暖化防止などの環境政策として進めています。干潟は生物多様性があり、生産性が高い場所です。また、波浪や生態循環による働きで二酸化炭素を吸収する力も大きなものがあります。
 博多湾は東アジアの渡りのルートで重要な中継地です。これまでも約300種の鳥が観察されています。モニタリグのデータによれば、人工島埋立が始まる前の1993年の調査では70,015羽の渡り鳥など野鳥が飛来していましたが、埋立により大きな影響を受け、2005年には34,382羽と半減しています。埋立により浅い海が埋め立てられ、また閉鎖水域となった和白干潟は波浪が立たなくなる、海水の交換が悪くなるなど環境が大きく変わりました。そのために、生態系も大きく変わり餌が少なくなり、渡り鳥の飛来数も半減しています。しかし、人工島の市第5工区(旧博多港開発第2工区)にはまだ水辺が残っており世界の希少種であるクロツラヘラサギなど多くの野鳥が飛来しています。人工島事業によって和白干潟は重大なダメージを受けていますが干潟の機能は残っています。人口100万人を超える大都市にこのような干潟を抱える都市は世界的にも貴重な存在です。街づくりや環境保全政策、財政問題から考えても、破綻した人工島事業を市民の財産にするためには旧博多港開発第2工区を干潟にすることが最も良い選択といえます。
(野鳥の飛来数の変化の表・グラフ)

4、子ども病院と市民病院の人工島への統合移転について
 病院の統合移転については、厳しさを増す本市の財政状況や、より合理化・効率化を求める国の医療制度改革と自治体病院改革の動向、九大での救命救急センター及び小児医療センターの開設、災害拠点病院に新に1ヶ所民間病院が指定されるなど新病院基本構想策定後の本市の医療環境の変化を踏まえると、以下の課題が挙げられるとして、
①市立病院が担うべき医療機能
②財政負担を抑制する整備手法

今後の検討の方向性として
①医療機能の優先順位付け
②医療機能の想定と財政負担
 医療機能、病床数、医療スタッフ編成等を複数想定した上で、それぞれの財政負担を検討する
③担うべき医療機能を実現するための整備手法
経営主体についても公営企業法の全面適用、地方独立行政法人、指定管理者制度の活用、民営化などの検討
④適切な場所
 担うべき医療機能や病院規模などを前提に、医療機関の配置状況、患者やその家族のために必要な療養環境、付帯施設、財政負担等を考慮しながら、適切な場所を検討する。

 この検討状況を見ると、財政負担を軸に、また国県の合理化・効率化の動きに合わせた方向で検討されると考えられます。子ども病院の高度医療を維持しつつ現地での建て替えが検討されることも否定出来ませんが、同時に市民病院の民営化も見え隠れします。同時に、人工島の病院移転予定地の扱いをどうするのか、このことも見ていかなければなりません。福岡西方沖地震を機に地盤の液状化が問題となり、看護施設の移転計画が中止になりました。また高齢者施設も計画が頓挫しました。このような状況で病院移転がなければ医療福祉関係の研究機関や施設の集積が進まず、土地処分の困難さが一段と増します。山崎前市長の亡霊が再び現れかねません。人工島の土地処分のあり方と大きく関係しており、公約が実現するのか、また病院が移転しなくても代替えの公共施設が計画されるのか、民間機関に建てさせた施設に市の施設を入れ込むのか、いずれにしても無駄な公共事業が行われる危険は残っています。この悪夢を断ち切るためには、博多港開発を会社精算する以外に解決策はありません。吉田市長にその英断はあるのでしょうか。

5、港湾整備を見直さなくても良いのでしょうか

 今回の見直しでは、「九州・西日本の経済活動や市民生活を支える港湾機能の充実・強化は重要であるため、必要な整備は進めてゆく。」としています。しかし、本当にこのまま進めて良いのか、今だからこそ抜本的並み直しが必要です。

①北九州市響灘港は破綻
 北九州響灘港では、PFI方式で港湾整備が進められましたが、わずか2年で破綻をし、北九州市が港湾施設を45億円で買い取ることで破綻救済することになりました。ではなぜこのようの事態になったのでしょうか。響灘港は水深15㍍、300㍍のバースを3バース整備しています。しかし大型船舶が寄港しないばかりでなく、貨物そのものもほとんど来ていません。当初の計画では瀬戸内海ルートや韓国、黄海のフィダー貨物を集荷するとしていました。しかし、既に釜山港のフィダー船が瀬戸内海や北部九州の集荷ルートを造っており、釜山港に対抗してサービス向上や荷役価格を下げてフィーダー貨物を奪い取ることは不可能な状況です。博多港も決して響灘港と異なるということはありません。

②博多港はフィダー港(出先の港)化している
 博多港でも大型コンテナ船の寄港は年々減っており、他方中国・韓国からの小型船舶が増えていることから博多港はフィダー港化しています。5万トン以上の大型コンテナ船の入港数が減っている理由について、港湾局長はその時々の状況によって航路の再編によると答弁していますが、まさに物流の効率化が進められコンテナ船が大型化することで航路の再編がなされ、ハブアンドスポーク化が進み、大型コンテナ船は博多港に寄港しなくなっているのです。世界のコンテナ船が大型化しているから博多港に15mの大水深の埠頭が必要であると港湾局長が繰り返し主張してきましたが、これは市民を欺くものです。

 市長も大水深の埠頭を造り大型船舶が入港しないのならポートセールスすればよいと言ってますが、収益の極大化を求める企業が効率化に逆らってまで航路を変える理由がどこにあると考えているのでしょうか。北九州響灘港の事例を見れば、大水深の港湾を整備したからと言って貨物が集まらないところに大型船舶が入港しないこと明らかです。世界の上位5港のハブ港湾であるシンガポール港、香港港、上海港、深せん港、釜山港の取扱量から見ると、取り扱いコンテナが増えているという博多港はシンガポール港の30分の1、釜山港の15分の1ととてもハブ港湾には成りえません。ハブ港湾の要素がない博多港に大型コンテナ船の入港が今後増えるという根拠はどこにあるのでしょうか。大型コンテナ船の寄港を増やすポートセールの売りは一体なんでしょうか。

③港湾関連施設は過剰投資、港湾用地は構造的な需要減
 情報化が進み多品目少量生産、生産地仕分けなど物流が大きく変わっており、RORO船が増えていることからも、ガントリークレーンや上屋、ヤードの需要は今後も減ると考えられます。このことは港湾施設の整備や、背後地の土地処分のあり方を見直さなければならないことを意味しています。既に平成12年に行われた包括外部監査報告でも、港湾整備特別会計は将来にわたり赤字になることは指摘されていました。既に過剰投資のため機能整備事業は毎年20億円程度の赤字、また土地処分が進まないために臨海都市整備事業も毎年赤字となっています。この際、従来のハブ港湾を夢見てきた港湾整備計画を抜本的に見直さなければなりません。市長は人工島見直しについて、港湾部分は従来通り整備を進めるとしていますが、ハブ港湾を夢見る過大な港湾整備計画を見直さなければ市民の期待を裏切ることになります。

博多港港勢を見ても博多港はフィーダー港(出先の港)化している
■規模別外貿コンテナ船入港船隻数 
    01    02    03    04    05
全体     1,623 1,655 1,879 1,900 1,926
3万トン以上 282   211   151   119   136
6万トン以上   70    81    48    45    26
3万トン以下 1,341 1,444 1、728 1,781 1、790
※人工島 推進14mバース 3万トン以上のコンテナ船の利用はない
※大型船が減少し、小型船が増えている。とくに3万トン以下のコンテナ船が増えている

■航路別に見ると
欧米航路
  99年  12航路  44便
  04年   4航路  14便
近距離(中・韓)
  99年  10航路  56便
  04年  38航路 200便 
※航路は近距離が増加し、欧米航路は減っている

■取扱地域別に見ると
02年     49万TEU
      アジア 30万TEU(東アジア:22万TEU)
      欧米 14万TEU
06年      62万TEU
      アジア  48万TEU(東アジア:38万TEU)
      欧米 11万TEU
※地域的に見るとアジア、特に東アジアが伸びており、欧米向けは減少

世界のコンテナ取り扱い(2005年度)
1位 シンガポール 2,319万TEU
2位 香港 2,243万TEU
3位 上海 1,808万TEU
4位 深せん 1,620万TEU
5位 釜山 1,184万TEU

日本のが外貿コンテナ取り扱い(2005年度)
1位 東京港       約360万TEU
2位 横浜港       約273万TEU
3位 名古屋港      約231万TEU
4位 神戸港       約188万TEU
5位 大阪港       約180万TEU

博多港(2006年速報)   67万TEU   

最後に
 青果市場3市場の統合、そして人工島への移転が本格化する動きが出てきました。これも人工島市工区の土地処分が進まない中で、土地処分策として当初から作られたシナリオです。市工区の土地処分計画の前提として、市街地の工場を移転させるという勝手な計画があります。しかし、バブルがはじけ地方経済街厳しい状況が続く中で、交通が不便で価格が耐土地へ積極的に移転する企業があるとは思えません。アジアビジネス街についても、いまだに1件の計画も持ち上がっていないことが中間報告でも指摘されています。青果市場のように、市の意向が働く、ないしは市が条件を提示出来るような企業・事業所しか移転することは考えられず、青果市場の移転は市の港湾整備特別会救済にはどうしても必要なこととなっています。しかし、それは生産者や野菜取り扱い事業者の意思とは関係に次元の問題なのです。人工島事業の根深い問題がここにも現れています。