介護保険給付削減の動き

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 介護保険が実施されてまもなく10年を経て、当初の費用3.6兆円が10年度で7.9兆円となり、65歳以上の保険料は平均2911円が4160円となっていることが報じられました。社会保障審議会介護保険部会は12年度改正に向けての素案を示しました。このままでは12年度改正時には、高齢者の介護保険料負担限度額と言われる5000円を超えて5200円になるとしています。これを4000円台に抑えるために給付の削減と利用者の負担増を行うとしています。素案では「重度者支援」に重点を置き、「軽度者」の給付を削減、低所得者の給付の削減、ケアプラン作成費の有料化するなど利用を減らすという方向を示しています。
 
 今回示された素案は、財源不足についての根本的解決を探らず、本来の理念である誰もが安心して暮らせる社会とは裏腹な小手先の帳尻合わせに終始しています。利用者の負担増は利用抑制を生じさせより重度化が進み更に財政圧迫することになります。同時に介護現場の負担増に繋がり、劣悪な介護現場の改善どころか事態を悪化させるだけです。介護保険の現状は年金問題同様に、急激に高齢化が進み人口減少が始まり支える若者が減っているという構造的な問題です。税制改革を含め抜本的な改革を進めなければ破綻は免れません。在宅で安心して暮らせるようよう介護保険制度を機能させるには、政府が責任もって財源を確保しなければならいのは当然です。同時に介護労現場が良好な労働環境になるよう投資を行い、新たな雇用創出の場にしていかなければ日本の経済はよくならないと思っています。

 所謂「GDP」に現れる経済成長と私たちの生活の実感に乖離が生じていることは、「失われた20年」を経る中で明らかとなっています。グローバル化は国内の製造業の空洞化を進め、アメリカの現状を見ても後戻りはないと考えられます。新たな経済を構築しなければ国民の貧困化が更に進み、社会的経費は増大してゆきます。福岡市に於いて新たな経済を生み出すものは自然であり、街づくり・景観であり、教育・文化であり、芸術です。経済成長がない中で、私たちは新たな指標である「幸福度」を考える時代にきていると思います。