自衛官募集に18歳、22歳市民の名簿を提供することに反対する請願に賛成する討論

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■2年請願第3号自衛官募集のための住民基本情報の提供に関する意思表示を行う権利を保障するための予算措置についてに賛成して討論します。

本請願は髙島市長が18歳、22歳市民の名簿を自衛官募集のために提供することについて、個人情報保護審議会の答申を誠実に実行することを求めるものです。

情報化社会が進み、個人情報保護が益々重要となってきます。顔認証技術は急速に進捗し、街路や建築物に設置されている監視カメラの映像を繋ぐことで個人の行動は容易に把握できるようになりました。カードでの購入やポイントカードを使用すれは購入履歴が把握され、パソコンで検索すれば検索履歴が把握され、事業者は個人の嗜好や性格などの情報を容易に把握することが出来るようになっています。アメリカではこういったデータを使い選挙運動に使っていることが問題となっています。AI技術の進捗は瞬時にして情報処理が可能となってきており、プライバシー侵害は容易に起こりうる状況となっています。

私たちはマイナンバーがつけられ住民基本台帳で管理されています。様々な情報に紐づけられれば私たちのプライバシーは私たち自身が知らないところで侵害され得る状況になっています。現時点では税と福祉関係の一部でしか突合はなされていませんが、国はマイナンバーカードを保険証に使えるように進めており、また、預金通帳にも紐づけようとしています。また、消費税値上げ対策としてマイナンバーカードのマイキーIDを希望する1社のカードに登録するとプレミアム還元率が25%になる事業を始めています。行政情報のセキュリティ強化と管理・運営の在り方が問われており、マイナンバーによって様々な情報が紐づけられれば、ジョージオーウェルが「1984年」で描いた監視社会となります。中国ではウィグル族の弾圧に顔認証技術やAI技術を駆使していることに国際的な批判が起こっており、「1984年」の世界は決して空想の世界ではありません。

この様な情報化社会を迎え、個人情報の保護に関する法律、行政が保有する個人情報の保護に関する法律および福岡市個人情報保護条例は目的外使用を原則認めていません。福岡市個人情報保護審議会の目的外使用に関する答申は、「自衛隊の目的外使用禁止措置を厳正にすることと、提供を望まない市民を除外すること」を求めています。安保関連法および日米新ガイドラインの基、自衛隊員は国防とは関係なく海外での戦闘に巻き込まれることは現実のものとなっており、2016年南スーダン・ジュバに派遣された陸上自衛隊員は家族に遺書を書いて出発しています。このような状況で、本人の同意なしに自衛隊員募集のために名簿を提供することは個人の権利利益を侵害することとなります。福岡市個人情報保護条例第10条2項では、「本人又は第3者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは」提供できないとなっています。法の趣旨を鑑みれば、自衛官募集のために名簿提供するには本人の同意を得るべきあり、同意を得た名簿のみ提供すべきです。個人情報保護審議会の答申はこのことを示唆するものです。

そもそもこの問題は安倍首相が戦争法をはじめとして戦争への道を押しすする中、自衛隊員募集に6割の自治体が協力していないと地方自治を否定する発言に、髙島市長が追従することから始まったものです。地方自治の本旨は「住民の福祉の増進を図ること」であり、市民を戦場に送るようなことは許されません。まして、個人情報保護は地方自治体の責務であり、個人情報保護審議会の答申も個人情報保護を厳正に行うことを求めています。本請願は個人情報を厳格に管理することを求め、2020年度予算では本人の同意を得るためのダイレクトメールの費用や自衛隊に名簿提供後の個人情報漏洩を防ぐ措置に関する予算措置を求めるものです。個人情報保護がより厳格に行われることが必要になっていることを全ての議員各位に理解していただき、請願に賛同することを求めて討論を終わります。

 

■2年請願第4号自衛官募集のための住民基本情報提供の1年間の実施延期について賛成して討論します。

本請願は18歳、22歳市民の住民基本情報を目的外使用するに当たり、市民の理解を得るために十分な時間をかけパブリックコメントなど活用して市民の声を聞き、周知を徹底することを求めるものです。

今回の名簿提供についてこれまでの経緯を見ると異例な早さの個人情報保護条例上の手続きであり、議会および市民の理解を得るためのプロセスを踏んだとはとても考えられません。請願者をはじめ多くの市民がこの事実を知ったのは1月6日の市長記者会見の報道です。その後1月31日午後に個人情報保護審議会に目的外使用に関して諮問がなされ、市民が市のホームページで審議会開催日程を知ったのは2月3日、審議会開催は2月7日午後5時30分からというものでした。通常の審議会等の開催の告知は2週間前であるものがわずか5日前という異例の開催でした。更に審議会は1回で終わり、答申は14日に出されました。この様なスケジュールとなった理由を当局に問うと、議会に報告するため早く答申をもらうことが必要との回答であり、2月18日の常任委員会で報告がなされました。市は議会および市民において十分な議論をすることは想定せずに、議会対策として形式上の手続きを踏んだものと理解されます。これは議会軽視であり市民自治を否定するもので、二元代表制を全く理解しない市長の思いつきの行為です。

情報化社会が進捗する今日、法や条例は個人情報保護をより厳正する必要性から原則目的外使用を禁じています。個人情報保護審議会の答申でも「提供する情報の取り扱いについては、目的外利用の禁止等の情報管理の徹底および事務終了後の確実な廃棄並びにこれらの実施状況に関する報告を書面で求めるなど、個人情報保護の観点から厳格な措置を講じること」としています。答申では公益性を認めたものの、「毎年度、情報提供に先立って、公益上の必要性に関する説明を含めた、市民への周知を行い、自己の情報を提供してほしくない旨の意思表示を行った市民については、提供する情報から除外する措置を講ずること」としています。ところが、市は周知には市政だより1回の掲載、ホームページの掲載、ポスターの掲示で周知するとしていますが、とても周知とは言えません。SNS等は検討するとしたものの、ダイレクトメールによる周知はしないとしています。これは個人情報保護審議会の答申に反するものです。

市は衛官募集の為に18歳、22歳市民の名簿提供は法定受託事務と主張しますが、自衛隊法97条は「都道府県知事および市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官および自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う」、自衛隊法施行令120条は「防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めたときは、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」となっており、名簿提出は自治体の義務ではありません。また、福岡市個人情報保護条例第10条2項では法で定められていても「本人又は第3者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは」提供できないとなっています。安保関連法および日米新ガイドラインの基、自衛隊員は国防とは関係なく海外での戦闘に巻き込まれることは現実のものとなっており、このような状況において本人の同意がないまま名簿を提供することは条例違反です。また、公益性がある業務は消防員や警察官など多岐に亘ってあり、自衛官募集の為のチラシ配りのために名簿を提供することは公益性に該当するとは考えられません。市長はシステム改修が終わり事務の効率化が出来るといっていますが、個人情報保護よりも事務の効率化の公益性が重いとでも考えているのでしょうか。そうであれば市長は全く人権感覚がないと言えます。

他都市の状況を見ると法的根拠がないとして名簿提供をしていない自治体や、住民基本台帳の閲覧も認めていない自治体もあります。個人情報保護の問題は今日的重要な課題であり、今回の措置が必要なものなのか時間をかけ、議会および市民での議論が必要です。請願者はその為に一旦名簿提供の実施は1年間延期することを求めるものです。二元代表制を構成する議会を機能させ、個人情報保護の議論を深めるために議員各位の賛同を求めます。