臨時議会で震災がれき受け入れを求める決議が出される

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 これまで福岡市は震災がれきについては、処分場が雨水と空気を焼却灰に接触させる準好気性の構造であるため処分場の排水中にセシュウム等が溶出し博多湾を汚染する恐れがあるとして、受け入れを断ってきました。市政だよりでもこのとを掲載し、市民に説明しています。ところが、18日開催の臨時議会に自民党提案で市長に瓦礫受け入れを求める決議案が提案され、民主党、公明党、みらい福岡、無所属の会の賛成で可決しました。なぜいまこのような決議案を出したのでしょうか。

 今回の決議案の裏には、環境省ががれき処理の費用として1兆円の予算を確保したと言われており、このお金を巡る利権構造があると考えられます。市長選挙の状況から見ると高島市長の後見者は麻生太郎氏のようで、福岡市で瓦礫を焼却し、焼却灰を麻生セメントのセメント原料に使うと言うことが想像されます。なぜいまお金をかけて九州まで運び処理しなければならいのか、現地の声やがれき処理の進捗状況を聞くと疑問が深まります。また、福岡市で焼却すれば、排ガスとして放射能が市内に拡散します。焼却灰の移動中にも拡散します。そして焼却炉に付着したセシュウム等は炉の解体時にまた問題となります。福岡市が負うリスクは長期にわたります。

 そもそも有害物質の拡散を防ぐために、廃棄物は廃棄物が生じた地区で処理することが原則です。そして放射能は拡散させないために閉じ込めることが原則です。がれき処理は国が責任を持って処理する、放射能は拡散させないために集中管理すべきです。18日に広域処理を求める意見書も出されました。安全な基準を決め、安全が確保できるようにして国の費用で広域処理を進めることを求めるというものです。この意見書に反対下の私だけです。決議案も意見書も前提として放射能には安全な基準があるとしていることの間違いがあります。そして廃棄物の広域処理は原則問題であることも理解されていません。自民党に質問しましたが、安全の問題は国のも代として安全性について何も考えていないことが明らかになりました。安全性の考えは基準を作ることではなく予防原則であり、最も影響を受ける胎児を基準に考え、リスクは可能な限り減らすことです。このことが理解されていないことが分かりました。命よりお金の世界が蔓延しているのです。

 市長の説明は理にかなっており、市民の生命と健康を守るためにがれき受け入れ拒否を貫いてほしいと考えます。

18日議会での反対討論

 今議会に提案されている「東日本大震災で発生した災害廃棄物の処理に関する決議(案)及び東日本大震災で発生した災害廃棄物の処理に関する意見書(案)」に反対して討論します。

 私は昨年の東日本大震災の被災者並びに福島第一原発時の被災者の皆さまが一日も早く立ち直ることを切に願っております。そのためにも災害廃棄物を速やかに処理する必要があると考えています。今回多くの国民に被災地復興のために力を貸すべきであるという強い思いがあり、国が広域処理としてがれき受けれ要請していることに多くの国民が戸惑いを持っています。しかし、災害復興に協力することが直ちに広域処理すべきと言うことにはなりません。

 広域処理に反対する第一の理由は、そもそも廃棄物処理の原則は廃棄物が生じたところで処理することが原則です。それは有害物質の拡散を防ぐためです。国際条約のバーゼル条約でも国際間の有害廃棄物の移動を禁じています。廃棄物を出したものが廃棄物を処理する、これが原則です。今回の震災がれきには津波による様々な建造物や機器が同時に破壊され、アスベストやPCBなどの有害物質が混在しているという調査結果があります。また、海水を浴びており、焼却するとダイオキシンの発生が懸念されています。今回のような災害における廃棄物処理においても慎重に処理されなければいけません。

 反対する第2点目は福島原発事故により、広域に放射能汚染がなされていることが問題です。第一義的には原因者である東京電力が責任をとり、放射能の除去と管理をすべきところです。災害がれきを移動させることは放射の拡散につながり、新たな被害を生み出します。今回の決議案及び意見書案では「基準以下のものであれば安全」という理屈が前提にありますが、放射能の毒性に閾値はないというのが国際的合意です。むしろ低レベルでの放射能汚染による被害を指摘する声もあります。

 アメリカのアカデミーはチェルノブイリ事故での死亡者を100万にと推定しています。その根拠は20数年間にわたる疫学調査により、放射線被曝による白血病やガンだけではなく、放射性物質の体内への取り込みによる内部被曝や低レベル被爆により、免疫力の低下や心臓疾患などによる健康被害があるとしています。またカナダのペトカウ博士は低レベル放射線被曝による細胞膜破壊のシステムを発見し、ペトカウ効果は世界的に認知されつつあります。
 問題は最も影響を受けるのは胎児であり乳幼児、成長著しいこどもたちです。予防原則として「慎重なる回避」という考えが国際的に認知されており、最も被害を受けやすいもののリスクを出来だけ減らすことです。こどもたちの未来を守るためには出来るだけリスクを減らさなければいけません。
 
 自然界でも放射能は存在し、自然界と同じレベルなら安全と考える方もいるかもしれませんが、自然界の放射能でも2%程度の発がんのリスクがあると言われており、決して安全ではありません。低レベルでも新たに放射線被爆が加わればリスクが増えることになり、食べ物や呼吸から放射性物質を取り入れれば更にリスクが高まります。内部被曝は細胞内で極めて近い距離からの被爆となり外部被曝に比べてずっとリスクは高まります。放射能には安全値はなく、私たちはどのレベルまでなら我慢できるかの我慢値しか存在しません。だからこそ胎児や乳幼児、こどもたちにはより慎重でなければいけません。

 本来放射能は拡散しないように集中管理することがIAEAを始め国際的な考えです。これまで日本では原子力施設からの放射能汚染廃棄物しか想定しておらず、なおかつ厳重に管理されてきました。ところが、国は福島原発事故により放射能汚染が拡散したことから、これまで100ベクレル/kgがクリアランスレベルでしたが、8000ベクレル/kgの放射能汚染物質を一般廃棄物同様に処理させようとしています。しかも、一般廃棄物処分場はそもそも放射能廃棄物を処理することを想定していないため、処分場からセシュウムが流出することが相次いでいます。安全基準以下でも焼却すれば数10倍~数100倍に濃縮されます。それが一般廃棄物として処分されば環境中に放射能が拡散されます。静岡県島田市の試験焼却を見ても明らかです。

 今回国が安全基準を決めたとしても広域処理すれば、焼却時の排ガスとして環境中への拡散、焼却灰に濃縮され焼却灰を埋めた処分場から河川や地下水への流出と環境中放射能がに拡散されます。ひいては飲料水や農作物を通じて、呼吸から体内へと放射能が取り込まれる起こる可能性が出てきます。それ故、思わぬところで被曝量が増える可能性が高まります。

 私は被災地復興のために出来ることはたくさんあると考えています。まず現地の声を国がきちんと聞いて処理すべきです。被災地では雇用の問題が深刻で、時間がかかっても安全な廃棄物処理は現地で処理したいという自治体もあります。また、災害廃棄物には被災者の遺品などがありゴミとして焼いてほしくないという声もあります。大槌町では災害廃棄物を埋め立て、そこに植林して防潮堤にすると共にモニュメントにしています。

 災害廃棄物処理の進捗状況について漏れ聞くところでは処理は進んでいるやに聞いています。石巻市が震災がれきが最も多く宮城県の6割を占めるがれきが出ているときいていますが、広域処理の対象となる可燃物の量は125万トンと聞いています。宮城県では5基の焼却炉を作り、年間約45万トンの処理が出来る体制だと聞いています。現状では処理に3年かかり、国が予定する期限2年より1年余計に処理期間がかかるということです。処理を急ぐ必要があるのであればあと2基焼却炉を建設すれば計画通りの処理は可能です。国が人とお金をもっと現地に投入して責任持って処理を進めればがれき処理は進みます。なぜ、お金をかけてまで九州にがれきを持ってきて処理しなければいけないのでしょうか。現地処理に比べると広域処理には5倍の費用がかかると言われており、税金の使い方としても問題があります。

 災害廃棄物処理以外にも私たちが出来ることはあります。まだ放射能汚染が少ない九州は今後日本の安全な食糧供給基地になります。だからこそ震災がれきの広域処理を受け入れるのではなく、放射能汚染を防ぎ安心して食べれる食料を現地に送ることです。福島現地の健康調査で、成人で体内のセシュウムが減らない人が約1割おり、中には増えている人もいると報告されています。その原因として検査されていない食品を食べていることが聞き取り調査から推測されています。安全な食糧の供給が必要なのです。

 また、被災地からの避難者の受け入れと生活支援、こどもたちの保養の受け入れなども大切のことです。特に福島県を中心に被爆を余儀なくされているこどもたちを短期間でも保養に受け入れるだけでも健康被害を軽減できると言われています。

 最後に何よりも問題なことは、震災復興に支援したいと多くの国民が思っているにもかかわらず、国が責任持って処理をせず、現地の声を聞くことなく広域処理を強引に進め、国民を引き裂いていることです。そして国民を引き裂く原因を作った東電の責任が何一つ問われていないことです。広域処理を進める環境省は「放射能について知見は持っていない」と公言しており、汚染調査もしておらず無責任極まるものです。広域処理を受け入れることは原発事故の責任問題をうやむやにすることにもつながります。こども未来を守るためには放射能は拡散させないこと、そして責任の所在を明確にすることです。

 有害物質の拡散を防ぐために廃物の処理は廃棄物が生じた地域で処理することが原則であり、放射能は拡散させず閉じ込めることが原則です。このことから、国が安全値を決めたとしても広域処理を受け入れすべきではありません。また税金の使い方としても問題があります。今回の決議案及び意見書案は採択されるべきではありません。これで反対討論を終わります。