市民参画予算ー京丹後市の事例

Pocket

20140506174234infiniteSize1392x931調査目的
京丹後市では予算編成過程の公開と地区(自治会)から事業要望を受け予算化する仕組みがある。福岡市において区への分権化が進められており、また6月国会に地方自治法改正案が提出され、「総合区」設置が出来る予定である。今後の市民に身近な市政として区政のあり方を研究するために調査した。
調査日時 2014年4月22日(火) 13:30~15:00
説明員 財務部仲西俊彦財政課長

1,市民参画予算編成の経緯
京丹後市は平成16年に6町の合併によって出来た人口5万9千人の市である。そのため、旧町の予算編成を積算する形で予算編成することとなり、旧各町独自の経過があるため紙ベースでの予算案提出となった経緯がある。また、旧町民の予算要望を公正に受ける必要があり、要望受け入れ窓口として旧町単位に市民局を配置した。この様な背景の下、合併後に新市長となった現市長の発案により、平成17年度予算から市民参加を進めるために地域の予算要望をくみ上げることと、予算編成過程の公開を始めた。

2、予算編成過程の公開
予算編成過程の公開の趣旨は①市民との協働による市政構築のための環境整備、②予算編成過程の透明性を高める、③市民監視下での予算編成、とされ、自治体の予算は本来「市民のもの」という考えで提起された。原課要求→財政課・財務部長査定→市長査定(最終予算案)の経過がホームページ公開されている。しかし、一般会計の予算編成過程のみ公開であり、また歳入については「節」、歳出については「事業のみの数値」で事業説明がないため内容が分かりにくい。一般市民の反応はあまりない。この欠陥を補完するものとして決算について詳しい説明を記載している白書を作り配布している。

3、地区住民要望事業の予算化
平成17年度予算から自治会(地区)からの要望事業を旧町単位で設置している市民局で集約し、本庁部局に提出している。本庁部局の査定後財政課・財務部で査定、最終的に市長査定があり、要望した自治会に結果と理由の説明が伝えられる。結果を受けた自治会は復活要求ができ、同じ査定経過を経て最終的に市長査定がなされ、自治会には結果の報告と理由の説明がなされる。市内全225地区から要望を受け、全て回答がなされている。しかし、回答は自治会単位で行われており、全体の公表はなされていない。なお各自治会とも上位3項目は図面および写真を添付することとしている。

4、地域協働型小規模事業
合併特例の減少により予算規模が縮小し、要望事業の採択が減少することとなった。未消化の要望が積み重ねられ、地区要望は増加の傾向となり、市民の不満も増大した。1つでも多くの地区要望を実現するための新たな対策が求められ、平成25年度から地域協働型小規模公共事業が始まった。
地区要望事業を1つでも多く実現するために、身近な市民局の機能を発揮できよう予算措置をした。具体的には、地区から出された要望について本庁と市民局の連携を強化して調査の上、本庁がすべきものと市民局で出来る事業とに仕分けを行う。地区要望事業は小規模なものが多く、できだけ要望実現のために30万円以下の事業については市民局で実施できるようにした。市民局で出来る事業については予算枠を考え、各自治会から代表を地域協働型小規模公共事業選定委員会委員として出席してもらい、出された地区要望事業の優先順位を決定し、同時に事業決定の透明化を図ることとした。また、構造的に問題なければ材料や機材は市が負担し作業は地区住民の手で出来るようにした。現時点では、地域協働型小規模公共事業については出された要望事業は全て実施されている。しかし、将来の財政事情によっては優先順位によることも考えられる。

5、議会との関係
情報公開と市民参加を原則とし、分権時代にふさわしい市民に身近な議会および議委員活動の活性化と充実することを目的に平成19年12月に議会基本条例が制定され、翌平成20年4月1日施行となった。条例で市長による政策等の形成過程の説明が求められ、予算および決算における説明資料作成についても施策別または事業別のわかりやすい説明資料が求められた。政策および事業毎に前年度対比、財源、目的・趣旨、事業概要等が記載された資料が作られ、議会の質疑はその資料を中心になされるようになった。このことで議会が活性化し、予算修正も起こっている。市民に対しては、決算後白書を作り、事業毎に丁寧な説明と所管部局の評価を記載し、分かりやすいものにしている。

所見
京丹後市における予算編成過程の公開については目的・趣旨からすると目的を達しているとは言いがたい。しかし、理念そのものは重要であり、福岡市においても市民が参画できる工夫をした予算編成過程の公開は必要である。
地区要望事業の予算化の取り組みは市民が身近な市政へ参画するあり方として参考になる。福岡市でも区の権限が強化され、区で決済・執行できる予算枠が拡大され、また、200万円の枠で自治協議会による予算執行が出来ることになっている。京丹後市における地区要望事業の予算化の仕組み、地区協働型小規模公共事業の考え方は、現在の区予算編成を市民参画予算編成へ一歩進める上で参考に出来る。