長崎県住宅供給公社特定調停調査

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長崎県住宅供給公社特定調停の調査
日時:2005年8月30日(火)

1、長崎県住宅供給公社
 昭和25年、財団法人長崎県住宅協会として発足。出資金1000万円、内訳は長崎県650万円、長崎市250万円、佐世保市100万円。昭和40年長崎県住宅供給公社に組織変更。
 業務内容は
①賃貸管理事業:公社所有の賃貸住宅(900戸)・施設の賃貸および県営住宅(12,500戸)の受託管理
②分譲事業:諫早西部団地分譲住宅(約2000戸、6000人の計画)宅地の提供
③シティビル事業:市街地有効活用事業として、市街地土地所有者から委託を受け賃貸マンションや商業ビルのプランづくり、設計・施工、資金融資の手配を行い、土地所有者が得た賃料から手数料および融資の返済を受ける事業。全国的には例が少ない。融資元は保険会社4社(日本生命、第一生命、富国生命、三井住友海上火災)

2,特定調停の経緯
 県住宅供給公社は平成13年度までは黒字であったが、住宅販売事業が不振続きで平成15年度決算は3億円の赤字となった。そこで、銀行はこれまで無担保で融資してきたが、公社が資金の借り換えについて県の損失補償を求めた。しかし、県としてはこれ以上傷が深くなることを避けるために、県は損失補償を拒否した。そのため資金繰りがつかなくなり、特定調停を申請する準備に入った。県の判断としては、北海道のように一旦損失保証をすると、その後の調停において大きな負債を追うことになると判断し、傷口が小さなうちに処理する判断をした。結果として負債が整理され、土地処分をどうするか課題は残っているが、土地保有による固定資産税の負担は軽く、シティ美無事業は確実な収入となっているため事業そのものは黒字に転化している。

 公社は平成15年7月に大学教授や公認会計士など専門家による改革推進委員会を設置し、11月に「諫早西部団地事業の見直しを進めるとともに中期的な経営計画を早急に策定すべき」という中間報告を受けた。12月には希望退職による人件費の削減を行った。11月決算特別委員会で公社の経営状況についての質問がなされたが、県は問題ないと答えていたが、12月に公社職員の希望退職に伴う退職金加算が出来なくなったことをめぐり特定調停の動きが報道され、議会でも騒然となった。その後、16年4月に訴訟となり、和解した。

 平成15年3月時点での資産と負債は
 資産合計 約427億9400万円
 負債合計 約3841300万円
であったが、平成14年から会計基準が減損会計に変わっており、時価評価し直した平成16年1月特定調停を申し立てた時点の資産と負債は(平成15年10月末現在額)
 資産合計 約241億6300万円
 負債合計 約372億3100万円
約129億6800万円の債務超過となった。この主たる理由は諫早西部団地の第2工区、第3工区の簿価確約116億円を時価で評価した結果11億円にしかならなかったことが大きい。これを基に債権者との特定調停の協議に入った。
 この時点での債権者は
 住宅金融公庫              約 53億2900万円
 銀行(地元十八銀行、信用金庫など8行) 約107億4900万円
 保険会社(4社)            約 97億5800万円
 地方公共団体(5団体)         約 57億 200万円
───────────────────────────────── 
    計 約315億4000万円
  ※地方公共団体の債権の内長崎県の債権は49億9千万円

 改革委員会では平成16年1月7日に「新しい住宅や宅地開発などの分譲事業から撤退し、採算が見込まれる賃貸住宅や県住宅の管理などの賃貸事業に移行する」ことなどを柱にした「中期計画」を策定した。平成16年1月19日の裁判所へ特定調停を申し立てた。
 議会は平成16年2月に「住宅供給公社等出資団体調査特別委員会」を設置し、10回に亘り審議した。そのうち9回は住宅供給公社についてであった。

 その後銀行団との交渉の経緯の中で再度見直しが行われ、
 資産合計 約281億4100万円
 負債合計 約368億1100万円
約86億7000万円の債務超過に見直された。平成16年度中に諫早西部団地分譲住宅第1工区において15%値引きして打ったことで62戸、1区画が売れたこと、第2工区、第3工区の評価をデベロッパーに売却して開発するとして評価し直したことにより評価額が27億円になったことなどによる。

 平成16年12月20日に民事調停法第17条に基づく決定(17条決定)が地裁から出された。県は直ちに22日に臨時議会を開き、「17条決定に異議を申し立てない」議案を提出、賛成多数で可決した。反対の理由は、手続きの問題、県民負担の問題であった。県は、いち早く県の姿勢を示すことで17条決定の受け入れを債権者にアピールした。異議申立期限の平成17年2月28日までに異議の申し出はなく、特定調停が確定した。平成17年3月9日、階会長の2月定例議会に公社の一括弁済資金貸付金57億円の予算案を追加提案し、賛成多数で可決・成立した。

2、17条決定の概要
・民間金融機関11者(債権額160億円):63億円を免除し、97億円を一括弁済
                    (弁済率60.3%)
※一括弁済資金は、自己資金39億円(銀行への返済が止まっていたため蓄積されていた)、県の融資57億円(無利子、平成17年~30年で返済)

・生保1者(債権額45億円):全額上と(代物弁済)1%超の金利を25年まで債権管
               理料として受領
※シティビル事業では、公社は生保3者に1活返済したたため、地主に対して直接の債権者となった。残り1者については生保が地主に対する直接の債権者となり、公社は債権回収の4%の内1%超を差し引いた額が公社の手数料となる。代物弁済をした生保は、地主の賃貸収入のリスクを負うことになる。

・住宅金融公庫(債権額53億円):元金は約定通り全額弁済、金利は平成25年度まで
                 1%に減額
※住宅金融公庫は法で債権放棄が出来ないため約定通りの返済となった。

・長崎県(債権額50億円):26億円を免除し、24億円を平成36年度以降に弁済(弁
             済率48.5%)。一括弁済資金の一部57億円を無利子で
             貸付。
※県が最列伍債権者であるため、他の弁済が終わる平成36年度からの返済となっている。

3、特定調停に至った原因
①開発に時間がかかりすぎている
 昭和47年から49年にかけて水田減反用地を県が買い上げ、公社に買わせた。漠然と将来の住宅地として放置してきた。地価は上がり続けるという土地神話が払拭出来なかったため放置してきたと思われる。

※県の都合主義によって県住宅供給公社が利用された。人工島でも同じように福岡市が市住宅供給公社を本来の事業とは関係なく都合主義的に利用している。

②開発時期は既に社会経済状況が大きく変化しているにもかかわらず、見直されなかった。 平成9年のたちばな団地の分譲が行き詰まり、11年に始めた定期借地権付き分譲も平成14年にはやめている。アクアヴェール泉町団地団地平成14年には平均単価3,150万円を2,316万円に値下げし、九州三井不動産販売(株)に販売を委託してやっと平成15年に残り50戸を完売したが9億円の赤字となっている。住宅販売が厳しくなっている平成14年から西部団地が分譲され始めた。諫早西部団地事業が諫早市との関係があったとしても、どうして同じ県住宅供給公社の事業であるにもかかわらず、たちばな団地やアクアヴェール泉町団地団地の事業状況を考えずに分譲を始めたのか全く意味不明である。まさに不作為としか言いようがない。

 県は第三者による責任の所在について調査を行った。最終的には現知事が減給50% 
および幹部職員が減給と言うことで責任を取ることにした。