検証・検討の経過が不明朗!

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 人工島事業の見直しの検討・検証チームの会議が25回開催され、結果が9がつにまとめられました。ところがこの検証・検討会議の会議録は8回までしかつくられていません。そもそも、人工島事業見直しは吉田市長の公約であり、検証・検討の経過を市民に説明する責任があります。なぜ会議録がつくられていないのか、人工島事業箕面市の経緯に一層の不透明性を感じさせるものです。市民への情報提供が重要と言っていることとまさに矛盾する事態です。わたしたち博多湾会議では、11月5日(月)に会議録作成を求め、市長へ抗議の申し入れをする予定です。

市長は市民に何を公約したのか 

 10月5日に福岡市が開催した「人工島事業検証・検討結果説明会」の場で、吉田市長は参加した市民の批判に対して、「これまで進んだ事業は今更止められない。海に戻せと言うのか。」という趣旨の発言をしました。「今更止められない」というならどうして「見直し」を公約したのか、また「海に戻せと言うのか」という極論は、わたしたちが未だ6割しか埋立が終わっていない現状から見直しをすべきであるという主張を全く理解していません。吉田市長が公約した「市民の財産にする見直し」とは、埋立を継続して完了させ、埋立地を売却することで費用を回収するというものです。埋めて地の土地処分をどうするのかと言うことが検証・検討結果の中身であり、山崎前市長と同じく「人工島事業の必要性を語り、バラ色の将来を語って売れない土地を造り市民を騙しているとしか言えません。市民はこのことを見直すよう求めてきたのですが、なんと吉田市長が言う「市民の財産になる見直し」とは黄金のメッキの下の鉛だったといえます。
 見直すとは、現状について破綻している事実を正しく評価し、現状を出発点に市民にこれ以上の損失を与えない方策を検討することです。しかし、結論は従来通り事業を進めることであり、その対策も何ら目新しいものはありません。吉田市長は、博打と同じように負けた金を取り返すために更に追い銭を注ぎ込み借金が膨らむこの泥沼から抜け出せない現状を理解しているのでしょうか。

見直しの前提が間違っている

 今回の検証・検討がどのような経緯で結論に達したのか、6月の中間報告では人工島の土地処分が難しいこと、企業誘致が難しいことを指摘しながら、なぜ事業をやめる別の選択が取られなかったのか、その経緯を明らかにしていきます。
 検証・検討の目的は「事業の目的や意義が市民に十分理解されていない、採算性への不安や疑問」を解消することにあるとしています。これまで人工島に重点的に投資を行いことに対する市民の批判、土地処分の見通しが立たない事実、山崎前市長が銀行団へ「決して損はさせない」という念書を書き、油脂を渋る銀行に損失保証を行い、売れない土地を福岡市が買い取りる約束をし、必要もない土地を買い公園を造り、病院を移転させようとし、人も住んでいないところに学校用地を買い取り学校を建設する、住宅販売のために多額の補助金を注ぎ込み、ビルを建てさせるために不要な市の施設を入居させる、開発者負担の道路や下水道、公園の整備を公共事業で行う、挙げ句の果ては博多港開発第2工区95㌶を399億円で買い取る、一体誰のために税金を使っているのか、埋立事業そのものが破綻していることを市民が批判していることに耳を貸さない市政、傲慢さが現れています。
 子ども病院の移転もこの延長線上にあります。患者や家族の方、医師や看護師など当事者が参加しない検証・検討園もが問題です。破綻した事業の穴埋めに、子ども病院の移転を使うことは市民への背信行為です。昨年の市長選挙で市民が求めた「子ども病院の見直し」とは、「子ども病院を人工島に移転することは止めて欲しい」と言うことでした。吉田市長は「見直し」という言葉のあやを使い、日本語の意味をわざと打ち消し市民を騙そうとしています。これで市民は納得するのでしょうか。

 9月に公表された検証・検討結果では課題を

・拠点形成や産業集積を牽引する企業立地の見込みが不透明、
・市第5工区におけるエリアの将来像や産業集積拠点の土地利用の方向性が不明確
・土地処分の進捗に依存する事業収支の安定性への懸念 

としています。しかし、この課題自体が的はずれなのです。的はずれと言うよりもわざと的を別の場所に設定し、本質的な検証・検討をしなためなのです。市民は埋立事業は破綻していると認識しており、土地売却の可能性そのものを議論することは求めていないのです。市長は本当に埋立地の土地処分が可能だと思っているとしたら、政治家としての能力が疑われます。全国の埋立地の状況を見れば一目瞭然です。
 今朝のニュースでは、今年の外国資本による日本の不動産投資額は1兆7千億円、アジアへの不動産投資額の53%に足していると報道しています。この間の地価上昇の一因にこの外資系資本の動きがあります。サブプライムローン問題による株価への影響を避けてアジアの不動産投資に資金が流れていると言うことですが、人工島の土地が売れる話しには関係ない地価の上昇です。生産性がない土地は売れない、会計基準が簿価から時価に変わったため不要な資産は持たない、人口減少・少子化高齢化による住宅需要の減退、所得格差の拡大、地方と中央との格差、そもそも埋立地の土地需要はない状況をどうして認めなのでしょうか。先日の報道でも、

人工島の土地は売れない

 アジアビジネスゾーンは平成21年から分譲となっていますが、未だ1件の申込もない状況です。市工区の埋立地も全国の不動産業者に上限5千万円の成功報酬の条件で土地の斡旋を依頼していますが1件も申込はありません。土地処分の見込みがないため、むりやり青果市場を統合し人工島へ移転させようとしているのです。
 今年4月~9月の半期において博多港開発第1工区の土地は売れていないことが報道させています。福岡市が買わなければ売れない実態が現れています。銀行団との約束では、計画の90%以上土地が売れなければ融資について協議するとなっています。子ども病院移転がなければ博多港開発は窮地に陥ります。また、市は博多港開発に融資返済のために貸付を行うことになり、市が必要もない土地を買うことになりそうです。

土地の証券化に失敗した福岡市

 今回の検証・検討結果では土地処分の手法として土地の証券化を挙げています。土地の証券化をするためには、その土地を使って収益が上がらなければ証券化はできません。具体的にはビルを建て、テナントが入居するなど収益の見通しがなければ証券化しても購入者はいません。山崎前市長はコンサルト会社に証券化の可能性について調査を依頼していますが、結論は人工島の土地を証券化することは難しいというものでした。昨年、福岡市では博多港開発第1工区(照葉地区)で土地の証券化をしようとしましたができませんでした。そこで福岡市は、計画になかった福岡ビジネス創造センター造り、テナントとして入居することで土地の購入をしてもらことにしたのです。このような事実があるにもかかわらず、土地の証券化を打ち出すとは、まさに市民を騙すもの以外なにものでもありません。

空港問題は人工島に繋がっているー鉄軌道はどうなか

 今回の検証・検討結果では交通アクセスの重要性を認めつつも、鉄軌道導入について具体的対策は示されていません。現状では鉄軌道の採算が取れる見通しが無く、人工島に地下鉄乗り入れはできません。銀行団が人工島の土地処分が進まない大きな理由の一つに鉄軌道の導入を挙げています。そこで、奈多沖に新空港ができれば、人工島経由で鉄軌道を引くことが可能になり、福岡市はこの間奈多沖新空港建設を準備してきました。しかし、一体1兆円を超す建設費を誰が負担するのか、埋立の土はどこから持ってくるのか、財政問題、環境問題と問題は山積しています。そもそも利用者は頭打ち、路線数も減少、更に石油の高騰と資源ピークを迎えよとしている状況で、新空港は必要なく、現状の拡張も必要ありません。

市民の財産になる見直しとは埋立を止め、博多湾の自然を生かした街づくりをすることです。

 埋立はまだ6割しか終わっていません。特に今回のの争点のひとつである市第5工区は埋立が終わっていません。わたしたちはこの現状から見直しをし、このまま湿地に戻し、博多湾の自然を生かした街づくりをすべきと考えています。
 この市第5工区は銀行団が人工島事業に見切りをつけ、博多港開発への融資をやめるために福岡市に買い取らせたものです。しかも399億円という価格は貸し手責任を一切取らない、銀行にとってもっとも都合がいい価格で市に買い取らせたのです。民間の事業が破綻していれば二束三文の処分になるものが、一切貸し手に損が生じないように満額で市が買い取ったのです。全国の三セクの処理でこんな事例は一つもありません。全て山崎前市長が「銀行に破損をさせない」という密約によるもので、その損害は全て市民が負うことになったのです。
 銀行でさえ見放した埋立事業を福岡市がすればどうしてうまくいくのでしょうか。更に埋立をするためには約300億円、造成した土地に道路や下水道、公園などの整備に100数十億円かかります。そして土地を売るため、「照葉のまち」の用に造成単価を大きく割って損切りの処分を行い、更に様々な補助金を出すなど、大きな借金を残すことになることは火を見るより明らかです。これ以上埋立にお金を使うこと早めべきです。これまでの費用は、市長行き市職員、そして議員が世金を取るべきです。それぞれの給与・報酬を1割カットすれば30年程度返済できます。これが市長が言う「市民に迷惑をかけない」ことなのです。

港湾整備も抜本的見直しが必要です。

 博多港のコンテナ量は70万TEUと増えています。しかし、入港船は3万トン以上特に5万トンを越える北米航路や欧州航路の船は減っています。コンテナ取り扱い先の約3分の2は東アジア、韓国釜山や中国上海などでしめられています。1万とクラスの船が増えており、博多港は確実にフィダー港化しています。福岡市は世界のコンテナ船は大型化しているので大型埠頭が必要と言ってきました。しかし、コンテナ船が大型化すればするほどハブ港湾(拠点港湾)にしかよらなくなり、博多港のようなフィダー港にはよらなくなります。博多港の実績がこの事実を示しています。今の港湾整備計画は課題であり、将来にわたり過剰設備となり、市民負担が増えることは目に見えています。今こそ抜本的な見直しが必要です。