こども病院人工島移転に関する住民監査請求提出

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 2月25日、福岡市立こども病院の人工島移転撤回を求める市民会議のメンバーを中心に208名の請求者でこども病院人工島移転予定地購入に関する住民監査請求をしました。弁護士17名が代理人として監査請求および想定される住民訴訟を進めます。監査請求の概要は以下の不当な点につき、厳しく福岡市を追求するものです。

1 人工島移転の方がコストが低いとの虚偽の報告により、福岡市議会の議決を得たこと
2 他に税金のかからない手段があるにもかかわらず検討していないこと
3 人工島移転は、小児医療サービス低下を招くものであること
4 移転候補地取得の金額が、周辺地価に比べて不当に高額であったこと

 一昨年の「こども病院人工島移転の是非を問う住民投票条例」制定を求める直接請求が法定数を大幅に超える30,545筆の署名で直接請求が成立しました。条例制定の臨時議会で吉田市長は「これまで市民には十分説明してきたので住民投票は必要ない。」と住民投票を否定しました。しかし、福岡市の資料は吉田市長が市民をだまし続けてきたことを裏付けています。
 福岡市がこども病院人工島移転の検証検討するために依頼したコンサルタント会社PwCアドバイザリー社の報告書の冒頭には「今回の調査は現地建て替えができないことを証するために行う」と書かれてあり、当初から現地建て替えはしない、人工島に移転することを前提に検証検討を行ったことが窺えます。このことは、検証検討の結論が出される前から、福岡市は国との用地購入費用の起債について、人工島移転を前提に進めていたことが福岡市の資料から明かになっています。
 PwCアドバイザリー社の現地建て替え費用の見積もりは85.5億円です。この見積額には建て替えに必要なローリング費用、耐震設計費用など必要なものはすべて含まれています。ところが吉田市長箱の額を1.5倍に水増しし、現地建て替えは128.3億円係るので高くて建て替えができないと市民に説明してきました。1.5倍に水増しした根拠はゼネコン3社にヒアリングしたところ1.5倍が適当という返事を得たとしていますが、ゼネコン3社の名前も公表せず、ヒアリングのメモや資料は破棄したと居直っています。市民への説明の根拠となる重要な資料を棄てたですまされるでしょうか。吉田市長は説明責任を果たしていないだけでなく、事実を隠蔽しようとする意図さえ感じます。
 私たちはぎかに地方自治法の100条委員会を設置し、真相解明を求めてきました。しかし、議会は動こうとはせず、議会の責任を放棄してきました。今回の住民監査請求で、本来議会が果たすべき責任を、私たち市民の手でやらなければならいとは嘆かわしいとしかいいようがありません。虚偽の資料を基に審議したことに対する反省が議会にあるとは思えません。
 こども病院はこどもの命を守るために造られた病院です。破綻した人工島埋立事業を進めるためにこどもの命を犠牲にする福岡市、市民の声が市政に反映されない福岡市の現状見るに、福岡市長及び市議会を変えなければなりません。住民監査政教を通じ真相解明し、こども病院の人工島移転を撤回させましょう。

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住民監査請求書

(請求の要旨)
第1 こども病院の移転候補地を人工島にした手続きその他の問題点
1 福岡市議会は,2008年(平成20年)9月24日,定例議会において福岡市の報告を根拠に,福岡市立こども病院(以下、「こども病院」という)の移転候補地を人工島の土地3.5ヘクタール(福岡市東区香椎照葉五丁目26番39号。以下「本件土地」という。)とし,その用地取得費用として金47億2500万円までの支出を認める補正予算案を可決した。
福岡市は,上記議決に基づき,2009年(平成21年)2月27日,同市の第三セクターである博多港開発株式会社(以下「博多港開発」という。)との間で,同社から本件土地を金44億4500万円で購入する契約をし,同年3月30日,同代金を支払った。

2 前項の福岡市による福岡市議会への説明は、現在のこども病院については老朽化による建替えが必要であるところ、現地建替えによる方法では、建替え費用が高額となるため、同病院を人工島に移転して新築するほうが安価となるというものであり、市議会への説明に先立って、福岡市役所内に設けられた、鸚酩睆堋垢鬟繊璽爛蝓璽澄爾箸垢・u人工島事業検討・検証チーム」が同趣旨の報告書を提出していた。
その際、福岡市は、自身がこども病院の建替えについての費用や諸条件の分析等を委託していたPwcアドバイザリー(株)が、現地建替え費用を金 85億5000万円と算出していたにも関わらず、現地建替え費用は、金 128億3000万円を要するとして報告し、その理由について工事費は、更地に立てた場合の1.5倍が見込まれるからと説明した。
福岡市議会では、この福岡市の報告をもとに、子ども病院用地取得に関する議案を可決した。
しかしながら、この議決の後も、金128億3000万円の建替え費用の根拠については、福岡市は、「検討・検証チーム」の事務局の課長及び保健福祉局の建築職係員2名がゼネコンから意見をもらったと説明するのみで、Pwcアドバイザリー(株)の算出した数字に42億8000万円も増額して市議会に報告した具体的かつ合理的な根拠や資料を明らかとしておらず、現在に至るまで、根拠のない虚偽の説明ではないかとの疑惑が払拭されていない。
つまり、前項の福岡市議会は、福岡市の虚偽の説明に基づいた審議しか 行っておらず、到底、本件土地の取得に関する補正予算案ついて十分審議されたものとはいえないから、議会の議決があるとは言えない。
ところで、福岡市においては、予定価格金6000万円以上、かつ面積が1万㎡以上の土地を買い入れる場合には、議会の議決が必要とされており(地方自治法第96条第1項第8号、議会の議決に付すべき契約及び財産の取得または処分に関する条例第3条)、従って、市議会の予算措置を経ない本件土地売買契約は無効である。

3 さらに、前述のとおり、予算措置を書いている以上、平成21年3月30日付けの土地売買代金44億4500万円の支出行為も著しく違法であり、かつ無効である。

4 仮に、市議会の予算措置の関する議決が存在したとしても、本件売買契約には、以下の事情が存在する。すなわち、

(1) 前記Pwcアドバイザリー(株)の算出した現地立替費用によれば、こども病院は、人工島に移転するよりも現在地にて建替えるほうが市の支出を抑制できることになる。

(2) 移転新築工事する場合においても、福岡市が所有する他の土地を活用すること等によって、より廉価で移転建て替えをすることができ、その方が、市の支出を抑制できることになる。

(3) こども病院の移転先である人工島には、公共交通機関が確立されておらず、福岡市内各所からのアクセスが悪化することになる。また、このことは、特に福岡市の西部地区については、小児2次医療の空洞化も生じさせることになる。さらに、他の立地条件をみても、航空機航路の直下であることから騒音が発生し、国際コンテナ埠頭に隣接することから、毒蜘蛛やハンターウイルスを持つねずみ等、外来生物の脅威に晒される危険がある。そのため、現在のこども病院が持つ機能の著しい低下を招くものとして、多くの医療関係者、患者及びその家族、市民などから強く反対されているところであり、市民に対する医療サービスの向上はおろか現在の医療サービスの維持さえも危ぶまれている。

 上記事情を総合考慮すれば、福岡市の本件土地売買契約及びこれに基づく上記金44億4500万円の支出行為(以下「本件支出行為」という。)は、形式的には福岡市議会の予算措置に関する議決があるとはいえ、地方公共団体の財政につき、最小の経費をもって最大の効果を得るよう配慮すべきものとする地方自治法2条14項に反し、市長の裁量権を逸脱する違法なものであり、しかもその逸脱の程度は甚だしい。従って、本件売買契約及び支出行為は、無効である。

第2 本件土地売買代金の問題点
本件売買契約における土地単価は適正価格に比して著しく高額であるから,適正価格を超えた部分については契約自体が違法・無効である。
 すなわち,本件売買契約における土地単価は,1㎡あたり金12万   7000円であるが、これは適正価格に比して著しく高額である。
周辺土地の地価動向を見ると、本件土地に隣接するアイランドシティ中央公園用地は,博多港開発から福岡市に対し1㎡あたり金8万2500円で売却された。
 また,福岡市が今後第三者に対して分譲予定の本件土地近隣に位置する土地の単価は,1㎡あたり金10万800円であるとされている。この分譲予定地の価格については、福岡市は購入時よりも高く設定してるはずであるが、その分譲価格すら本件土地の取得価格は上回っている。
適正価格をアイランドシティ中央公園用地の取得価格である1㎡あたり金8万2500円とすれば,本件土地は、適正価格より金15億5750円もの高額な価格で取得したことになり、この額が無駄な支出ということになる。
 したがって,本件売買契約における適正価格を超えた部分については,上記と同様地方自治法2条14項等に規定された公金支出についての最小の経費による最大の効果の原則に反し,市長の裁量権を逸脱するものとして、契約自体が違法・無効である。

第3 よって,監査委員から,福岡市長及び博多港開発に対し,第1次的には,支出額全額を返還させるなど必要な措置を講じるように勧告することを,予備的に,支出した公金のうち違法部分の損害を填補するために必要な措置を講ずべきことを勧告することを求める。

(請求者)
住 所

職 業
氏 名

住 所

職 業
氏 名

住 所

職 業
氏 名

(外「請求人名簿」記載のとおり208名)

(請求者ら代理人)
              住 所  福岡市中央区大名2-4-19
                   福岡赤坂ビル701 
羽田野法律事務所(送達・連絡場所)
              職 業  弁護士
              氏 名  羽田野節夫 

              弁護士 外16名