こども病院PFI事業者公募に関しての申し入れ

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 本日(6月14日)福岡市及び病院機構に、こども病院PFI事業者公募を中止するよう申し入れを行いました。今回の公募は昨年12月24日から入札公告を行い今年3月23日から26日に参加資格確認申請を受け付けたところ1者しかなかったので入札説明の規定「応募者がいないとき又は一人であるときは、入札手続きを中断するものとする。」により入札が中止されました。病院機構は6月参加資格基準を緩和して再度公募するとしています。同時に今回の入札説明では「応募者がいないとき又は一人であるときは、入札手続きを中断するものとする。」を削除し、応募が1者でも契約するとしています。私たちは、参加資格の緩和は単なる応募者の水増しでしかなく、「応募者がいないとき又は一人であるときは、入札手続きを中断するものとする。」を削除することは出来レースを感じさせる不透明かつ不公正な入札であるとして公募の中止を求めました。
 今回の入札はWTO政府調達の対象であり、競争性および透明性が求められるものです。WTO政府調達の対象となる入札は原則一般競争入札であり、こども病院建設のように一定の技術水準を要求する場合は競争性を確保するために「応募者がいないとき又は一人であるときは、入札手続きを中断するものとする。」との項目がつけられているのです。ところが、要求水準が変わらないのに参加基準を緩和することは単なる応募者水増しのアリバイづくりになるだけです。入札は価格だけでなく総合評価となっているため、低い技術水準の事業者が応募しても、総合評価は1回目の事業者よりも低くなることが予想されます。そうでなければ当初求めた技術水準がおかしかったことになります。また、財務省もこのような入札について応募者が1者しかない理由を検討し、競争性が確保できるようにすべきとし、安易な随意契約をしないよう通達を出しています。いずれにしても極めて不透明、不公正な入札です。
 この背景にはこども病院人工島移転事業が様々な不透明な疑惑及び問題があり、市民の声を無視して2014年4月開院を強引に進めるためのものだと思われます。今回のこども病院整備等事業をPFIにする理由(メリット)はどこにもありません。SPC(特別目的会社)が病院建設を終了した時点で所有権を病院機構に移転し、同時に建設費の9割以上を支払う契約になっています。つまり福岡市が直接建設することと何ら変わりがないにもかかわらず何故このような事業形態にするのか、そこに利権が絡んでいるとしか見えません。またPFI事業の対象である施設の維持管理、利便事業の提供、警備等も直接市が契約及び管理すればすむことであり、その方が経費が安いばかりか利益も得ることが出来るのです。このような経緯も住民訴訟の中で明らかにしていけると考えます。
 吉田市長は一体何を考えているのでしょうか。
 

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2010年6月14日

福岡市長 
吉田 宏様
地方独立行政法人福岡市病院機構理事長
 福重淳一郎様

福岡市立こども病院の人工島移転撤回を求める市民会議・住民訴訟原告団                                
                         代表世話人 佐野寿子

      申し入れ

第1 申し入れの趣旨
不可解で不透明な「こども病院」整備等のPFI事業者決定手続きを中止してください。

第2 申し入れの理由
1 入札参加資格基準を緩和したのは、人工島移転に係る諸問題を闇に残したまま、なにがなんでも2014年に人工島で新病院を開院するためだとしか思えません。
 福岡市はこども病院整備等のPFI事業者を公募したところ、1者しか応募しなかったため入札説明書に記載されている規定によって入札を中止しました。今度は福岡市病院機構が6月中旬に改めて公募する予定とのことです。
 前回1者しか応募者がなかったのは入札参加資格の基準が厳しかったからだとしているようです。そのため病院機構は応募者を増やすために参加資格を「一般病床300床以上の設計を受注した実績があるもの」から「一般病床200床かつ3室の手術室の設計を受注した実績があるもの」に基準を引き下げました。参加資格基準を下げて、こどもの生命は本当に大丈夫なのでしょうか、不安が募ります。
しかも「応募者がいないとき又は一人であるときは、入札手続きを中断するものとする。」との前回あった項目が消され応募者が一人でもPFI事業者を決めるのとしています。しかし、一者では「競争性が確保できない」という理由で入札手続きを中止した同じ病院機構がどうしてこの項目を削除さしたのかその理由は明らかにされていません。
手続中断の時期があったにも拘わらず、病院機構は2014年3月1日の開院時期を「遅らせないようにしたい」としています。今回の参加基準緩和は開院に合わせるためのものでしかありません。

2 入札参加資格基準の緩和は、公正な事業者選定につながるとは思えません。
基準緩和は応募者を増やすために行なわれたようです。しかし、そもそも福岡市と病院機構は新病院でのベッド数を260床と計画していることが考えに入っていません。福岡県の認可は233床ですが、福岡市などは260床に増やすよう働きかけています。手術室も6室を計画しており、だからこそ、基準を300床以上の病院を建てたことがあることを資格基準にしたのではありませんか。今回の基準緩和は単なる応募者の水増しにしかならないのではないでしょうか。こんな基準で患者の生命を守り救う病院が建てられようとしていることに不安を感じます。
さらに言えば、前回応募した1者が提案する技術水準は変わらないわけですから、仮に基準緩和を受けて他者が応募しても入札に勝つ見込みはありません。政令が定める一般競争入札の形をとるための予定落札者アリバイづくりとしか映りません。「応募者がいないとき又は一人であるときは、入札手続きを中断するものとする。」項目を外したのはこのためなのかとの疑念が湧きます。

3 なぜ、新病院建設がPFI事業方式でなければいけないのでしょうか。
  今回のPFI事業は施設整備についてはSPCが一旦資金調達し建設するものの、施設整備後に費用の90%強を一括して支払うとしています。施設建設費用の90%強を市や病院機構が負担するのであれば市などが直接建設すればよいものを何故PFI事業として新病院を建設するのでしょうか。 また利便施設の提供や維持管理についても病院機構が直接事業者に委託すれば経費を削減でき収益を得ることができるにもかかわらず、何故PFI事業とするのか全く理解できません。予定価格の算定根拠は公表しないとしていることを考えあわせると、ここにも、こども病院施設整備等に係るPFI事業の不透明性が横たわっています。福岡市がPFI方式導入の根拠とした「良質な公共サービスの提供と事業費削減による財政健全化」に繋がらないのではないでしょか。

4 こども病院の人工島移転計画そのものが問題なのです。
上述のように不可解で説明のつかない計画でPFI事業が人の生命を預かる病院建設・運営に導入しようしていますが、根本的な問題は厳しい財政状況の中でこども病院を人工島に移転させる計画自体に在ります。
高齢化そして人口減少は避けられず、日本の経済は基本的に縮小せざるを得ません。税収が減り続け、財政に占める義務的経費は増え続けることが明らかな状況で、過大な病院事業を計画すること自体が間違っています。福岡市が進めているこども病院の人工島移転は市民負担が増えるだけでなく、西部地域の小児医療の空洞化を招き、さらにこども病院の存立さえ危ぶませる計画です。近い将来を見据え、市民のために必要な病院は何か、福岡市の医療状況を見据えて現場の医師と共に身の丈にあった病院を考える必要があるのです。  

5 基準緩和は入札の公正さと透明性を欠き、手続きの中止を求めます。 
今回の入札説明および落札者決定基準の変更は、入札の公正さと透明さを欠くものです。吉田市長は3月29日に出された福岡市情報公開審査会の答申をどのように受け止めているのでしょうか。不透明なPFI事業及びこのような入札手続きは直ちにやめるよう求めます。

なお、申入れに対する回答を6月21日までに当原告団にお送りください。