2019年度決算「元気な福岡市の正体」は「大企業の利益」 

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2019年度決算は一般会計の実質収支93億円の黒字、特別会計実質収支38億円の黒字となっており、プライマリーバランスも黒字を続けており、財政健全化指数も改善しています。しかし、市債発行残高は未だ2兆円もあり、毎年2千億円程度の借り換えが行われる中で超低金利政策によって金利負担が抑えられているのが現状です。公債費は高止まりであり、扶助費等義務的経費は今後とも増えると考えられ、公共施設の維持管理費など厳しい財政が続くと考えられます。アベノミクスが破綻し、コロナ禍の影響で今後はさらに厳しくなると考えられます。都市高速道路からの人工島接続道路(2.5km401億円)や空港への延伸事業(1.8km470億円)など無駄な公共事業は許されません。

歳入を見ると市税収が増加していますが、主たる市税増の要因である個人市民税増は人口増だけではなく、県費負担教職員制度の権限委譲に伴う税率の変更および高齢者や子育て世代の就労の増によるものです。これは生産年齢人口減少の中で高齢者の就労者が増えていくことが予測され、高齢者施策のあり方をと問うています。

また、市税収増の主たる要因である固定資産税および都市計画税の増は、日銀の異次元的規制緩和による市場の投機資金が特区による規制緩和と補助金による呼び込みによって不動産投資されたことによるものです。不動産への投機は地価の上昇と乱開発を起こしており、コンクリートの街はヒートアイランド現象を激化させ、過大規模校問題やマンション問題を引き起こしています。

他方、2019年度の法人市民税は減少しており、その要因はアベノミクスが2018年10月には終わり、すでに景気後退が始まっている中、追い打ちをかける2019年の消費税増税の影響にあります。人工島には100億円もの支出がなされ、クルーズ船誘致やMICE誘致、ウオーターフロント整備等に約58億円、天神ビッグバン関連で14億円など多額な税金が使われています。多額な税金の投資と特区指定による規制緩和で過剰な投機資金が誘導され、他方非正規雇用が増え実質賃金はマイナスという「いびつな構造」で福岡市の成長が支えられていたといえます。髙島市長は竹中平蔵氏が関係する人材派遣会社パソナ、麻生太郎氏の麻生グループ、西鉄などの大手企業に多額の事業委託や便宜を図っています。

「元気な福岡市」と言われる実態は砂上の楼閣と言え、安倍政権下で非正規雇用が増え続け、実質賃金はマイナス、格差が広がっています。市民経済計算によると、一人当たりの市民所得は2011年3,273千円から2017年3,373千円と増える傾向ですが、一人当たり市民雇用者報酬の賃金・俸給は2011年4,284千円が2017年4,284千円と頭打ちの状況です。非正規雇用も40%と高い水準にあり、年収300万円以下の世帯が40%とされ、全国平均の34%よりも高く、格差が広がっています。PFIや指定管理者制度は公共施設を私的収益事業に変え、市民サービスの切り下げと低賃賃金構造を促進しており、直ちにやめるべきです。

歳出を見ると、子ども育成費が大幅に増えているのは消費税増税に伴い「幼児教育の無償化」によるものです。「幼児教育無償化」は3歳未満の保育児は対象外であることや副食費が利用者負担になるなど問題が残っています。また、子どもの貧困対策が求められる中、就学援助を生活保護費切り下げに併せて対象者を削減し、困窮者をいっそう苦しめる市政は容認できません。夜間中学新設の強い要望が出されており、文部科学省は全国都道府県および政令市には最低1校は設置するように求めていますが、2019年度は全く進展していません。さらに、朝鮮学校の補助金を廃止し、朝鮮学校幼稚部を「幼児教育無償化」から除外するなど排外主義を推し進める、「アジアに開かれた国際都市」とはとてもいえない髙島市政に強く抗議します。

また、これまでも少人数学級が求められてきましたが教員増がなされません。スクールソーシャルワーカーや学校司書は増員されましたが非正規委雇用であり人数も足りていません。また、保育士の助成は拡充されましたが、正規雇用に限られるなど課題が残されています。都市再開発に投資をするよりも人への投資をすべきです。

年度末には消費税増税による消費の落ち込みに加え、コロナ禍による甚大な社旗的経済的被害をうけました。昨年12月から武漢に端を発した新型コロナウイルス感染症は日本にも広がり、2月27日に必要もない合理性もないにもかかわらず突然一斉休校が決定され、子どもは学ぶ場を奪われ、保護者は休職を余儀なくされ、消費の落ち込みにより経済は大きく落ち込みました。飲食業や集客施設、とりわけ中小零細事業者、個人事業は大きな収入減となりました。市民生活を支えるために、上下水道の減免などがなされるべきでした。2019年度末において困窮する市民生活に対する補正予算を組むことができ、また2020年度に予算も組み替えすることができたにもかかわらずなされませんでした。

2019年度決算は特区による規制緩和と金融緩和による投機資金呼び込みの都市膨張政策を進めたもので、格差と貧困を広げ、乱開発による住環境の破壊を進めるもので認定できません。コロナ禍の影響は今後とも続くと考えられ、新自由種政策は被害を深刻化させています。「住民の福祉の増進を図る」という地方自治の原点に立ち戻り市政を転換することを求め