自衛隊名簿提供住民訴訟控訴審不当判決。最高裁判所に上告

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国が戦争する時には地方自治が破壊され、人権と自由が奪われる

〇住民として住民訴訟を提訴

権利が侵害される18歳・22歳の市民による裁判を準備できなかったことから、住民監査請求を行い、住民訴訟を起こすことで自衛隊への名簿提供の違法性を質しています。住民訴訟では、支出の原因となる名簿提供は法定受託事務ではない上、同意を得ない名簿提供は違法であるので、名簿提供に要した人件費やコピー用紙代などの支出は違法であり、提供を命じた市長に支出した金額を市に返却するよう求める訴訟です。第1審では市の言い分を追認し、名簿提供は法定受託事務であり、また市長の裁量権の逸脱はないとして名簿提供は違法でないので、名簿提供に要した支出は違法でないという判決でした。

直ちに控訴し、10月4日控訴審の判決が出されました。控訴審判決は、東京都教育員会が行った昇級処分に伴う給与等の支出に関する最高裁判例を適用して、住民訴訟は支出の原因となる行為の違法性には関係なく、財政会計法上の義務に違反する違法性を問えるだけとして、名簿提供の違法性について審議せずに控訴棄却としました。私たちは、控訴審判決の最高裁判例は「地方公共団体の長は、右処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り、右処分を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり、これを拒むことは許されないものと解するのが相当である。」としており、東京都と東京都教育委員会とは権限が分掌されており、教育委員会の処分に伴う給与等の支出について都が支出することを認めたもので、福岡市の場合は市長の権限の下で行った財政支出であり、最高裁判例の適用が間違っているとして最高裁に上告しました。

〇裁判で見えてきたことは名簿提供の法的根拠は明確でない

第一審の福岡地裁の判決文には「福岡市長が、本件名簿提供に係る保有個人情報につき、防衛大臣の求めに応じて、自衛隊施行令120条に基づき、自衛官又は自衛官候補生の募集に関する資料として、その紙媒体又は電子媒体を提供することは、その態様等によっては、上記➀(住民基本台帳法第11条及びその委任を受けた住民基本台帳の一部の写しの閲覧並びに住民票の写し等及び除票の写し等の交付に関する省令3条)又は➁(福岡市個人情報保護条例10条1項)のような関係法令との関係で違法となり得る余地があると言うべきである。」と判示しています。また、控訴審は名簿提供の違法性について何ら審議せず、形式的に棄却しました。他方、2023年4月1日に改正個人情報保護法が施行され、福岡市は個人情報保護委員会に名簿提供について照会しました。回答は「実際に提供を行うべきか否か、その具体的方法については、地方公共団体において、それぞれの法令の趣旨に添って適切にご判断ください。」としています。このように、名簿提供の法的根拠は未だ不明確な状況と言えます。

〇名簿提供問題は地方自治の問題

憲法第8章で地方自治が定められており、地方自治体は戦前と異なり国の下部機関ではありません。地方自治体は、住民自治の下、住民の福祉の増進を図り、地域の課題を自立的主体的に取り組みます。国が間違ったことを行えば、自治体として是正を求め、住民の権利の擁護を行う責務があります。名簿提供の問題は、➀同意がない個人情報の提供は人権侵害であること、➁住民の権利利益を擁護することが責務である地方自治体が同意を得ない個人情報を自衛隊に提供することは地方自治の否定であること、➂名簿提供は戦争政策に協力することで地方自治を否定することになる、にあります。

今政府は特定秘密保護法、集団的自衛権容認の閣議決定、戦争法、共謀罪法、マイナンバー、デジタル関連法、個人情報保護法改正、土地利用規制法、など憲法違反の戦争政策を進め人権侵害が危惧される戦争政策が進んでいます。加えて昨年安保関連三文章を改定し、専守防衛から先制攻撃ができる様にしました。沖縄をはじめ日本全国で自衛隊の基地強化と軍事費の増額及び敵基地攻撃兵器の購入をすすめ、戦争への道を進めています。博多湾は軍事港湾として整備されることになり、福岡空港や背振レーダー基地 が注視地区に指定され、 1km周辺住民は監視下に置かれることになりました。国が戦争する時は地方自治を崩壊させ、監視社会となり、国民の人権及び自由を奪います。名簿提供問題は戦争政策を進める上で、戦前のように自治体を国の下部機関とするために地方自治を破壊する政策なのです。憲法の平和主義の下、地方自治地を守り、住都人権を守るために、名簿提供にNOの声を上げ、福岡市政を変えましょう。